葛飾北明
江戸時代の浮世絵師
来歴
編集葛飾北斎の門人。江戸の人で葛飾の画姓を称し、九々蜃、画狂人と号す。作画期は文化から文政の頃にかけてで、読本の挿絵や肉筆美人画を残している。
北斎筆の「鯉図」(埼玉県立博物館所蔵)には北斎の自筆で「年来持伝候亀毛蛇足之印御譲り申上候 御出精可致候以上 文化十癸酉年四月廿五日」とあり、これは北斎が使っていた「亀毛蛇足」の印章を文化10年(1813年)4月、人に譲ったことを記しているが、文政7年(1824年)刊行の『月桂新話』の奥付に「東都葛飾北明」の名と「亀毛蛇足」の印があり、「葛飾北明筆」の落款がある「立美人図」にも「亀毛蛇足」の印が捺されていることから、この印章を北斎から譲り受けたのは北明であったことがわかる。
なお文政13年(1830年)刊行の『北明子画品』には「井上北明政女筆」とあり、これが同一人物ならば北明は井上姓の「政女」という女流絵師だったことになるが定かではない。また「春旭斎北明」の落款がある絵があり、その画風は戴斗の画号を使っていた頃の北斎のものに似るが、これは別人とされている。
作品
編集- 『復讐奇談 幸物語』六巻 読本 ※栗杖亭鬼卵作、文政2年(1819年)刊行
- 『月桂新話』前編 読本 ※鬼卵作、文政7年刊行
- 「行燈美人」 絹本着色 光記念館所蔵 ※「葛飾北明筆」の落款、「北明」の白文方印あり。那須ロイヤル美術館(小針コレクション)旧蔵
- 「河岸美人納涼図」 絹本着色 日本浮世絵博物館所蔵 ※「戊辰夏日 九々蜃北明画」の落款、朱文円印あり。「戊辰」は文化5年(1808年)。
- 「立美人図」 紙本着色 ※「葛飾北明筆」の落款と「亀毛蛇足」の朱文方印、「たをやめの ゑまひををみつの いとすちに こゝろをひかぬ 人はあらしな みつを」の画讃あり
- 「手紙をよむ女図」 紙本着色 ※中右瑛コレクション
参考文献
編集- 日本浮世絵協会編 『原色浮世絵大百科事典』(第2巻) 大修館書店、1982年
- 『小針コレクション 肉筆浮世絵』(第五巻) 那須ロイヤル美術館、1989年
- 『北斎一門肉筆画傑作選 ―北斎DNAのゆくえ―』 板橋区立美術館 2008年 ※110頁、121 - 122頁