至上の愛〜チャーチ・コンサート〜

アレサ・フランクリンのライブ・アルバム

至上の愛〜チャーチ・コンサート〜』(原題:Amazing Grace)は、アメリカ合衆国歌手アレサ・フランクリン1972年に録音・発表したライブ・アルバム。幼い頃から教会でゴスペルを歌ってきたフランクリンが、自身のルーツに回帰した作品で、ゴスペルのライブ・アルバムとしては史上最大のヒットを記録した[1]

『至上の愛〜チャーチ・コンサート〜』
アレサ・フランクリンライブ・アルバム
リリース
録音 1972年1月13日(#2, #7, #8, #13)、1月14日(#1, #3, #4, #5, #6, #9, #10, #11, #12, #14) ロサンゼルス ニュー・テンプル・ミッショナリー・バプティスト教会[2]
ジャンル ゴスペル
時間
レーベル アトランティック・レコード
プロデュース ジェリー・ウェクスラー、アリフ・マーディン、アレサ・フランクリン
専門評論家によるレビュー
チャート最高順位
  • 7位(アメリカ[5]
  • ゴールドディスク
  • ダブル・プラチナ(RIAA[6]
  • アレサ・フランクリン アルバム 年表
    ヤング・ギフティッド・アンド・ブラック
    (1972年)
    至上の愛〜チャーチ・コンサート〜
    (1972年)
    Hey Now Hey (The Other Side of the Sky)
    (1973年)
    テンプレートを表示

    背景

    編集

    1972年1月にロサンゼルスのニュー・テンプル・ミッショナリー・バプティスト教会で行われた2日間の公演がライブ録音され、2日目にはフランクリンの父C・L・フランクリンがスピーチを行った[1]。観客の中には、フランクリンに多大な影響を与えたゴスペル歌手クララ・ウォードや、ローリング・ストーンズミック・ジャガーチャーリー・ワッツもおり[1]、ジャガーは2018年のインタビューで「その時のことはよく覚えている。本当に素晴らしいイヴェントだった。最初から最後まで魅惑的だったよ」「チャーリーやビリー・プレストンも誘ったけど、実際にビリーも来ていたかどうかは覚えていない」と語っている[7]。「生命は永遠に」は、フランクリンが1956年に録音し、デビュー・シングルに採用された曲の再演である[8]

    オリジナルLPの曲順は、実際のコンサートとは異なっており、1月13日の公演から4曲が採用され、残りは1月14日の録音が使用された[8]

    反響

    編集

    母国アメリカでは総合アルバム・チャートのBillboard 200で7位に達し、『ビルボード』のR&Bアルバム・チャートでは2位を記録した[5]。1992年8月にはRIAAによってダブル・プラチナの認定を受けた[6]

    評価

    編集

    第15回グラミー賞では、本作および収録曲「尊きおもいで」が最優秀ソウル・ゴスペル・パフォーマンス賞にノミネートされ、最終的には本作が同賞を受賞した[9]。『ローリング・ストーン』誌が選出した「歴代最高のアルバム500」(2020年改訂版)では154位にランク・イン[10]

    ロン・ウィンはオールミュージックにおいて5点満点中4.5点を付け「彼女の"How I Got Over"や"You've Got a Friend"は伝説的である」と評している[3]。また、ロバート・クリストガウは本作にBプラスを付け「教会で録音された、この2枚組LPには、ここしばらくのアレサにはなかった純粋さと情熱があるとはいえ、抑制されたリズム・セクションや、ありがちなコール・アンド・レスポンスは、目的意識に欠け感動的ではない」と評している[4]

    リイシュー

    編集

    1999年に2枚組CDとして発売された『完全版』は、ディスク1に1月13日の公演、ディスク2に14日の公演の全貌が収録された。なお、『完全版』に収録されたジョージ・ハリスンの曲「マイ・スウィート・ロード」は、ショウの本編終了後に演奏されたインストゥルメンタルである[11]

    2019年3月22日には、『完全版』が4枚組LPとしても発売された[12]

    ドキュメンタリー映画

    編集

    本作に収録された公演は、シドニー・ポラックによる撮影も行われ、『スーパーフライ』と同時上映という形で劇場公開する計画もあったが、映像と音声が一致しないという技術的問題により未公開となった[13]。その後、アトランティック・レコードのスタッフ出身のプロデューサー、アラン・エリオットが修復の作業を行い、2010年頃には修復が完了したが、フランクリン自身は公開を許可せず、フランクリンの死後の2018年、遺族の許可を得てドキュメンタリー映画『アメイジング・グレイス/アレサ・フランクリン英語版』として劇場公開に至った[13]

    収録曲

    編集

    オリジナルLP

    編集
    サイド1
    1. マリーよ泣くなかれ - "Mary Don't You Weep" (Inez Andrews) - 7:29
    2. 尊き主よ我が手を/きみの友だち - "Medley: Precious Lord, Take My Hand / You've Got a Friend" (Thomas A. Dorsey/Carole King) - 5:34
    3. オールド・ランドマーク - "Old Landmark" (A.M. Bruner) - 3:40
    4. イエスに我がすべてを - "Give Yourself to Jesus" (Robert Fryson) - 5:16
    サイド2
    1. ハウ・アイ・ゴット・オーヴァー - "How I Got Over" (Clara Ward) - 4:22
    2. いつくしみ深き友なるイエス - "What a Friend We Have in Jesus" (Traditional) - 6:03
    3. 至上の愛 - "Amazing Grace" (Traditional) - 10:45
    サイド3
    1. 尊きおもいで - "Precious Memories" (Traditional) - 7:20
    2. 高き山に登らん - "Climbing Higher Mountains" (Traditional) - 2:32
    3. C.L.フランクリン師の言葉 - "Remarks by Reverend C.L. Franklin" - 1:56
    4. 神は汝を導きたもう - "God Will Take Care of You" (Traditional) - 8:48
    サイド4
    1. ホーリー・ホーリー - "Wholy Holy" (Marvin Gaye, Al Cleveland, Renaldo Benson) - 5:30
    2. 淋しくはないはず - "You'll Never Walk Alone" (Richard Rodgers, Oscar Hammerstein II) - 6:31
    3. 生命は永遠に - "Never Grow Old" (Traditional) - 9:57

    完全版

    編集

    ディスク1

    編集
    1. オルガン・イントロダクション(オン・アワ・ウェイ) - "Organ Introduction (On Our Way)" (Traditional) - 1:34
    2. オープニング・リマークス - "Opening Remarks" - 1:36
    3. オン・アワ・ウェイ - "On Our Way" (Traditional) - 1:58
    4. アレサズ・イントロダクション - "Aretha's Introduction" - 2:14
    5. ホーリー・ホリー - "Wholy Holy" (M. Gaye, A. Cleveland, R. Benson) - 6:55
    6. 淋しくはないはず - "You'll Never Walk Alone" (R. Rodgers, O. Hammerstein II) - 8:26
    7. いつくしみ深き友なるイエス - "What a Friend We Have in Jesus" (Traditional) - 5:56
    8. 尊きおもいで - "Precious Memories" (Traditional) - 9:02
    9. ハウ・アイ・ガット・オーヴァー - "How I Got Over" (C. Ward) - 5:30
    10. 尊き主よ我が手を/きみの友だち - "Precious Lord, Take My Hand/You've Got a Friend" (T. A. Dorsey/C. King) - 8:37
    11. 高き山に登らん - "Climbing Higher Mountains" (Traditional) - 3:01
    12. 至上の愛(アメイジング・グレイス) - "Amazing Grace" (Traditional) - 16:10
    13. マイ・スウィート・ロード - "My Sweet Lord" (George Harrison) - 2:02
    14. イエスに我がすべてを - "Give Yourself to Jesus" (R. Fryson) - 5:19

    ディスク2

    編集
    1. オルガン・イントロダクション(オン・アワ・ウェイ)/オープニング・リマークス - "Organ Introduction (On Our Way)/Opening Remarks" (Traditional) - 2:32
    2. オン・アワ・ウェイ - "On Our Way" (Traditional) - 3:01
    3. アレサズ・イントロダクション - "Aretha's Introduction" - 2:59
    4. いつくしみ深き友なるイエス - "What a Friend We Have in Jesus" (Traditional) - 6:18
    5. ホーリー・ホリー - "Wholy Holy" (M. Gaye, A. Cleveland, R. Benson) - 5:46
    6. 高き山に登らん - "Climbing Higher Mountains" (Traditional) - 5:25
    7. 神は汝を導きたもう - "God Will Take Care of You" (Traditional) - 9:00
    8. オールド・ランドマーク - "Old Landmark" (A.M. Bruner) - 2:56
    9. マリアよ泣くなかれ - "Mary, Don't You Weep" (I. Andrews) - 8:21
    10. 生命は永遠に - "Never Grow Old" (Traditional) - 15:27
    11. C.L.フランクリン師の言葉 - "Remarks by Reverend C.L. Franklin" - 7:52
    12. 尊きおもいで - "Precious Memories" (Traditional) - 7:49
    13. マイ・スウィート・ロード - "My Sweet Lord" (G. Harrison) - 0:39

    参加ミュージシャン

    編集

    脚注

    編集
    1. ^ a b c d Rapp, Allison (2022年6月1日). “How Aretha Franklin Made Gospel History in Two Days”. Ultimate Classic Rock. Townsquare Media. 2024年6月22日閲覧。
    2. ^ Atlantic Records Discography: 1972”. Jazz Discography Project. 2024年6月22日閲覧。
    3. ^ a b Wynn, Ron. “Amazing Grace - Aretha Franklin - Album”. AllMusic. 2024年6月22日閲覧。
    4. ^ a b Christgau, Robert. “CG: Aretha Franklin”. 2024年6月22日閲覧。
    5. ^ a b Aretha Franklin - Awards”. AllMusic. 2016年3月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年6月22日閲覧。
    6. ^ a b Gold & Platinum”. RIAA. 2024年6月22日閲覧。
    7. ^ Mick Jagger Talks New Rolling Stones Tour, Aretha Franklin and Grammys”. Billboard (2018年11月27日). 2024年6月22日閲覧。
    8. ^ a b 『Amazing Grace: The Complete Recordings』(Rhino / R2 75627)英文ライナーノーツ(David Nathan)
    9. ^ Aretha Franklin - Artist”. GRAMMY.com. Recording Academy. 2024年6月22日閲覧。
    10. ^ ローリングストーン誌が選ぶ「歴代最高のアルバム」500選 - 2020年改訂版”. Rolling Stone Japan (2020年9月23日). 2024年6月22日閲覧。
    11. ^ Setaro, Shawn (2018年12月21日). “Aretha Franklin's 'Amazing Grace' Film Is Finally Here After 46 Years, and It's Transcendent”. Complex. 2024年6月22日閲覧。
    12. ^ Aretha Franklin Amazing Grace The Complete Recordings On Vinyl For The First Time March 22”. Rhino Entertainment (2019年2月26日). 2024年6月22日閲覧。
    13. ^ a b Tsioulcas, Anastasia (2018年11月14日). “Aretha Franklin Touches The Infinite In The Long-Delayed Film 'Amazing Grace'”. NPR. 2024年6月22日閲覧。

    外部リンク

    編集