福岡市博多区妻殺害事件
福岡市博多区妻殺害事件(ふくおかしはかたくつまさつがいじけん)とは、2003年に福岡県福岡市博多区で起きた殺人・死体遺棄事件である。被害者の夫が妻を殺害したとして起訴されたものの、無罪判決が確定して現在未解決事件となっている。
概要
編集2003年(平成15年)2月19日、福岡市博多区東月隈の自宅に於いて女性Aが殺害されるという事件が起こった[1]。被害者Aの夫でホテル経営者のBから110番通報を受け、駆けつけた博多警察署の捜査員が室内の鑑識作業などを進めていたところ、台所の床下収納にAの遺体があるのを発見した[1]。近隣住民の話では、ここ数年、空き巣や車内荒らしなどの被害に遭っていた[1]。
2003年(平成15年)5月28日、福岡県警はBを殺人、死体遺棄容疑で逮捕した[2]。逮捕にあたって、発覚しにくい床下収納庫に遺体を隠匿していることから内部事情に詳しい人物の犯行として捜査。そういった中で、Bの証言が二転三転していることから逮捕に踏み切った[2]。
裁判経過
編集刑事裁判
編集2003年(平成15年)8月7日、福岡地裁で初公判が開かれ、Bは起訴事実を全面否認、無罪を主張した[4]。
2005年(平成17年)2月15日、論告求刑公判で検察側は「妻に浮気を追及されたことがきっかけ。周到にアリバイ工作や証拠隠滅工作を行っており、卑劣で悪質な犯行」としてBに懲役18年を求刑した[5]。一方、弁護側はBのアリバイと捜査の不十分さを指摘し、改めて無罪を主張した。これにより一連の裁判は結審した[5]。
2005年(平成17年)4月19日、福岡地裁(川口宰護裁判長)はBに無罪判決を下した[6][7]。
判決では近所に住んでいる男女二人が犯行時刻より後にAと挨拶を交わしているという証言について当日の天気や具体的な行動があげられていて信用性が高いとした[6]。そして自白調書についても逮捕から起訴までの間に自白と否認を繰り返しており、秘密の暴露もなく信用性は低いとした[6]。これらのことから被告に犯行は不可能と結論づけた[6]。
福岡地検はこの判決に対して控訴を断念、控訴期限を迎えた5月7日午前0時をもってBの無罪判決が確定した[8]。
国家賠償請求訴訟
編集2006年(平成18年)8月22日、Bは無罪判決確定を受けて、逮捕から約2年間、身柄を拘束されたことによる精神的苦痛とホテル会社社長を失職したことによる減収分の支払いを求めて約8200万円の国家賠償を求めて福岡地裁に提訴した[9]。
2007年(平成19年)11月30日、福岡地裁(永松健幹裁判長)は「検察官の起訴時の判断を不合理ということはできない」としてBの請求を棄却した[10]。
脚注
編集- ^ a b c “床下収納に妻の遺体 博多区社長宅 居間に血、鑑識中発見 殺人で捜査”. 西日本新聞. (2003年2月21日) 2003年3月14日閲覧。
- ^ a b 『読売新聞』2003年5月29日 西部朝刊 社会31頁「博多のホテル経営者夫人殺害夫を殺人容疑で逮捕 遺体、台所床下に隠す/福岡」(読売新聞西部本社)
- ^ 『読売新聞』2003年6月19日 西部朝刊 福岡30頁「博多の妻殺害事件 夫を起訴 福岡地検=福岡」(読売新聞西部本社)
- ^ 『読売新聞』2003年8月7日 西部夕刊 夕社会7頁「博多の妻殺害事件初公判 被告の夫は無罪主張/福岡地裁」(読売新聞西部本社)
- ^ a b 『読売新聞』2005年2月16日 西部朝刊 二福岡37頁「妻殺害、遺体自宅に 2003年の事件、懲役18年求刑=福岡」(読売新聞西部本社)
- ^ a b c d “妻殺害事件に無罪判決 福岡地裁、「自白に信用性ない」”. 朝日新聞社 (2005年4月19日). 2005年4月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年1月5日閲覧。
- ^ “妻殺害事件:夫に無罪判決 アリバイなど疑問と福岡地裁”. 毎日新聞. (2005年4月20日) 2005年4月20日閲覧。
- ^ “妻殺害・死体遺棄事件、夫の無罪確定…検察が控訴断念”. 読売新聞. (2005年5月6日) 2005年5月8日閲覧。
- ^ 『毎日新聞』2006年8月23日 西部朝刊 社会面24頁「損賠訴訟:無罪男性が国提訴、2年拘束され失職--殺害女性の夫、福岡地裁に」(毎日新聞西部本社)
- ^ 『朝日新聞』2007年12月1日 朝刊 3社会33頁「男性の国賠請求、福岡地裁が棄却 妻殺害無罪【西部】」(朝日新聞西部本社)