神経因性疼痛
(神経障害性疼痛から転送)
神経因性疼痛(しんけいいんせいとうつう、神経障害性疼痛、英:Neuropathic Pain,Neuralgia)は、Silas Weir Mitchell (January 15, 1829–January 4, 1914)により提唱された概念であり、癌や物理的傷害による末梢神経および中枢神経の障害や、機能的障害による慢性疼痛疾患の一種である。これらの痛みは、本来の疼痛意義である組織障害の警告という意味は既に失われており、苦痛としての痛み自体が障害となり患者の生活の質(QOL)の著しい低下が引き起こされる。また、神経因性疼痛に対して心因性疼痛(psychological pain)がある。
Neuropathic pain | |
---|---|
概要 | |
診療科 | 神経学 |
分類および外部参照情報 | |
ICD-10 | M79.2 |
ICD-9-CM | 729.2 |
神経因性疼痛の分類
編集- 複合性局所疼痛症候群(CRPS)
- 求心路遮断性疼痛症候群(deafferentation pain sysdrome)
神経因性疼痛の特徴
編集- 持続的な自発痛(spontaneous pain)に加え、触刺激を激烈な痛みと感じてしまうアロディニア(allodynia)を主症状とする。
- アスピリン、フェルビナクやロキソプロフェンなどの消炎鎮痛剤(解熱性鎮痛剤、非ステロイド性鎮痛剤、NSAIDs)に強い抵抗性を示す疼痛。
- 麻薬性鎮痛薬であるモルヒネやフェンタニルでさえ顕著な治療効果を発揮することができない、難治性の疼痛。
詳細は「小膠細胞#抑制させる薬剤」を参照
神経因性疼痛の病態生理学的所見
編集神経因性疼痛の明確な病態生理は未だ完全には理解されていない。しかし、近年の基礎研究成果より以下の事が明らかにされつつある。
治療
編集治療目標は、最大限に痛みを緩和する事、残存した痛みをいかに対処するか、患者の機能的能力の増進、活動性の向上である。以下に具体的な方法を列挙する。
- NSAIDs(ジクロフェナク、ロキソプロフェン、セレコキシブなど)
- 三環系抗うつ薬やSNRI、プレガバリンといった神経伝達物質阻害剤
- トラムセットなどのオピオイド含有鎮痛薬
- カンナビノイド受容体アゴニスト(ドロナビノール[注 1]、ナビロン[注 1]、ナビキシモルス[注 1]など)
3つのランダム化比較試験が、喫煙した大麻による神経因性疼痛への有効性を示している[1]。
研究
編集2012年から東京大学医学部附属病院でミノサイクリンの鎮痛効果を検証する第Ⅲ相の臨床試験が行われている[2]。 ミノサイクリンは、ミクログリアの活性化を抑制することで知られている。また、神経保護作用や抗炎症作用も示されている。
基礎研究
編集パロキセチン(ヒトP2X4受容体IC50=1.87µM)、フルオキセチン、クロミプラミン、マプロチリン、その他抗うつ薬。抗うつ薬の中ではパロキセチンが最も強力であった。抗アロディニア作用を示し、神経因性疼痛の患者へ使用することが可能とみられる[注 2][3]。
関連項目
編集脚注
編集注釈
編集出典
編集- ^ 世界保健機関 (June 2018). Pre-review: Cannabis plant and resin: Section 4: Therapeutic Use (pdf) (Report). World Health Organization. 2018年6月10日閲覧。, Fortieth meeting of the Expert Committee on Drug Dependence.[リンク切れ]
- ^ “侵害受容性・炎症性疼痛および神経障害性疼痛患者に対するミノサイクリンの鎮痛効果に関するOpen label探索試験”. upload.umin.ac.jp. 東京大学 (2014年2月1日). 2016年5月19日閲覧。
- ^ Nagata K, Imai T, Yamashita T, Tsuda M, Tozaki-Saitoh H, Inoue K (2009-4-23). “Antidepressants inhibit P2X4 receptor function: a possible involvement in neuropathic pain relief”. Molecular Pain 5: 20. doi:10.1186/1744-8069-5-20. PMC 2680826. PMID 19389225 .