神世界事件
概要
編集2000年に設立された有限会社「神世界」および同社と提携する企業群が、体調不良や悩みを取り除く霊的治療をうたってヒーリングサロンを全国で展開し、相談に訪れた人から「相談料」「礼金」もしくはサロンで販売されているお守り(神世界では「ライセンス」と呼称)等各種物品の購入などの名目で多額の現金を集めていた[1]。勧誘した顧客に対して友人の勧誘を行う事やスタッフとして働くことを勧めて被害者間に共犯意識を持たせることで被害を拡大させた。警察や国立大学の現職員や退職者も積極的に組織の活動に関わり事件に加担した。
年譜
編集- 2007年12月20日、神奈川県警察警備課長を務めていたY警視が、勤務中に神世界に関する副業を行った上、部下を勧誘するなどして約400万円の報酬を得るなど[3]、複数の地方公務員法違反を行っていたことを背景に、詐欺容疑で関連施設に対し強制捜査が行われた[4]。
- 2008年2月7日、警視Yが懲戒免職処分を受け、前述の霊感商法もあいまって問題視されるようになる[3]。前述のとおり警視Yは複数の地方公務員法違反を行っていたが[3]、このようなケースは非常にまれである。また、同年においては北海道大学のK准教授が同組織に関わったとして諭旨解雇処分を受ける[5]。
- 2009年5月、被害者らが、神世界に対する損害賠償請求を求めて、東京地方裁判所に提訴。被害対策弁護団は紀藤正樹を団長として[6]リンク総合法律事務所が担当。同事務所所属の弁護士である荻上守生が連絡役を務める。
神世界
編集神世界(しんせかい)は山梨県甲斐市に本部を置く有限会社[2]。提携先と称して同様に設立された、複数の有限会社を通して、ヒーリングサロンを運営していた。これら会社群を神世界グループと称する。各地のサロンと神世界とでは1か月に1回会議が行われて、それにより営業方針が決まっていた[12]。
神世界の「提携先」とされる、千手観音教会そのものは1986年頃に起きた世界救世教の分裂による混乱を受けて同教の信者であった神世界代表Sの父親(元山梨県警OB)が1987年に同教団から独立する形で成立した集団である[13]。その活動内容は同教団およびその分派とされる、いわゆる「救世教系・真光系」と呼ばれる手かざし系新宗教団体と根源を同じくしている。
疑惑発生および告発当初、神世界は「自組織はあくまでも会社組織であり宗教団体ではなく」ゆえに「霊感商法ではない」と主張していた[14]。しかし告発の後、代表など中心人物が逮捕されると、それまでの主張を翻して宗教団体であることを認めた上で「宗教活動として同意の上での契約」であるために「霊感商法ではない」とアナウンスするようになる。
手口
編集高級住宅街や高級マンションなどに、いわゆる「自宅ショップ」を思わせる外観でサロンをオープンし、手作り感のあるチラシを撒き「素人の手作り」的な携帯電話向けウェブサイトを発信(現在は削除)することで「高級ではあるが身近な感覚」を演出して客を呼んだ。「(ヒーリングを受けている間に)子どもを預かります」などのチラシや「お茶会」などの気楽に訪問できるイメージを用いて地域主婦層の取り込みを狙い、勧誘に際しては一般宗教にあるような信者(スタッフ)による勧誘ではなく、地域の口コミを効果的に利用した。
後は通常の霊感商法と同じく、客とスタッフによる雑談の中からホット・リーディングとコールド・リーディングを駆使する事によって顧客に対してマインド・コントロールを行い客の信用を得て施術を継続的に受けさせ、完全に信用させた頃合を見計らい宗教的な儀式やアイテムを売りつけた[15]。この時に客が宗教に対する懐疑を抱いた場合には上述したY警視およびK准教授など社会的信用を持つ職業に就いているメンバーの存在を利用し、また宗教法人の認可をあえて受けていないことを逆用して「警察官や大学准教授も認め推奨している企業」のため「宗教団体ではないことを強調」し「安心である」と説いた。また顧客による知人の勧誘に際しても同様の言葉を顧客に言わせて勧誘させていた[13]。
脚注
編集- ^ 「警視、霊感商法関与の疑い 神奈川県警不祥事に発展」『47NEWS』(共同通信)2007年12月19日。オリジナルの2007年12月23日時点におけるアーカイブ。2023年6月17日閲覧。
- ^ a b 「霊感商法疑惑の課長を解任 神世界グループ一斉捜索へ」『47NEWS』(共同通信)2007年12月20日。オリジナルの2007年12月23日時点におけるアーカイブ。2023年6月17日閲覧。
- ^ a b c 「Y警視を懲戒免職 神奈川県警の霊感商法事件」『asahi.com』2008年2月7日。オリジナルの2008年2月10日時点におけるアーカイブ。2023年6月17日閲覧。
- ^ 「神世界、霊感商法事件で 神奈川県警が再捜索」『MSN産経ニュース』2009年3月25日。オリジナルの2009年5月28日時点におけるアーカイブ。2023年6月17日閲覧。
- ^ 「北大准教授を諭旨解雇、神世界に自宅提供」『MSN産経ニュース』2008年12月30日。オリジナルの2009年2月13日時点におけるアーカイブ。2008年12月30日閲覧。
- ^ 「霊感商法:「神世界」に被害訴える17人が賠償求め提訴」『毎日jp』2009年5月25日。オリジナルの2009年5月27日時点におけるアーカイブ。2023年6月17日閲覧。
- ^ 「「教祖」の妻を逮捕 組織詐欺容疑で」『MSN産経ニュース』2011年8月29日。オリジナルの2011年8月30日時点におけるアーカイブ。2023年6月17日閲覧。
- ^ 「「神世界」事件 教祖の男逮捕 組織的詐欺容疑」『MSN産経ニュース』2011年9月12日。オリジナルの2011年9月13日時点におけるアーカイブ。2023年6月17日閲覧。
- ^ 「教祖の逃走手助け、容疑の元警視逮捕」『MSN産経ニュース』2011年9月24日。オリジナルの2011年9月24日時点におけるアーカイブ。2011年9月24日閲覧。
- ^ 「神世界事件のY元警視に有罪判決 横浜地裁」『MSN産経ニュース』2011年12月9日。オリジナルの2011年12月9日時点におけるアーカイブ。2023年6月17日閲覧。
- ^ 「神世界「教祖」の実刑確定へ 霊感商法巡り最高裁決定」『日本経済新聞』2013年6月5日。2023年6月17日閲覧。
- ^ 「神世界「教組」ら4人に逮捕状 ヒーリングサロン利用、本社家宅捜索」『MSN産経ニュース』2011年8月17日。オリジナルの2011年8月18日時点におけるアーカイブ。2023年6月17日閲覧。
- ^ a b 「「癒し」掲げ 全国にサロン展開 神世界」『MSN産経ニュース』2007年12月20日。オリジナルの2007年12月23日時点におけるアーカイブ。2023年6月17日閲覧。
- ^ 「「霊感商法や詐欺でない」」『MSN産経ニュース』2007年12月24日。オリジナルの2007年12月25日時点におけるアーカイブ。2023年6月17日閲覧。
- ^ 「霊感商法疑惑 被害者数千人、被害は100億円か (1/2ページ)」『MSN産経ニュース』2007年12月21日。オリジナルの2008年1月24日時点におけるアーカイブ。2023年6月17日閲覧。
関連項目
編集外部リンク
編集- ヒーリングサロンによる被害 - 告発サイト。元は神慈秀明会・旧体制を告発するサイトの一部であったが、被害者からの相談によって拡大・独立した被害者支援サイト。親サイトへのリンクは神慈秀明会#外部リンクを参照
- インターネットアーカイブ - VIVID東京サイト。本サイトは現在閉鎖