田中信二 (ライター)
田中信二(たなか しんじ)とは、テーブルトークRPGをメインとする日本のライター、編集者、DTPデザイナー。ファーイースト・アミューズメント・リサーチ(F.E.A.R.)所属。一般にはかわたなという通称でのテーブルトークRPGリプレイへの参加で知られる。
略歴
編集大学在学中から『RPGマガジン』でライター活動を始め、鈴吹太郎の知遇を得る。卒業後F.E.A.R.に加わる。2005年10月から2012年8月までF.E.A.R.が発行する『ゲーマーズ・フィールド』の編集長を務めた。
メディアへの初露出は、田中としひさのエッセイ漫画『おこんないでね』の登場人物としてである。『LOGOUT』1993年12月号に掲載の第7回で田中としひさの無茶な要望に悩むゲームマスターとして出演したが、このとき既に「かわいそうな」田中君、と紹介されている。
公式リプレイへの出演は『三國志演技』のリプレイが初めてである[1]。
プレイヤーとして多数のリプレイに出演していたものの、田中自身がゲームマスター(兼リプレイライター)を務めるリプレイは長らく出版されていなかった。初めてメディアに公開された田中GMによるリプレイは2005年の『ナイトウィザード』リプレイ「幼年期の終わり」と『スターレジェンド』リプレイ「そして、蒼き星へ」 である。なお、リプレイライターとしてのデビューは早く、『RPGマガジン』1994年5月号に読者参加リプレイ企画「無限のきらめき」の一環として掲載された『トーキョーN◎VA』リプレイ「支配者の逃亡」が処女作となる[2](「田中信二と怪兵隊」名義)。
2008年には、『ゲーマーズ・フィールド』に連載された『アルシャード・フォルティッシモ』リプレイ「時計仕掛けの破壊神」が田中にとって初の書籍としてエンターブレインから出版された。
2009年には富士見書房より『アリアンロッド・サガ・リプレイ・デスマーチ』を発表している。これは『アリアンロッド・サガ・リプレイ』第3巻においてストーリー展開が変更された影響をフォローするために、田中の上司に当たるたのあきらが急遽立案したもので、田中はたのの指名[3]によりGM兼リプレイライターを担当した。『デスマーチ』は当初続刊の予定はなかったが、好評を得て[4]シリーズ化されている。
人物像
編集「かわたな」という通称は「かわいそうな田中」の略で、たのあきらによる命名である[5]。鈴吹太郎によれば、田中はF.E.A.R.入社以前から他人のしわ寄せ(本来の予定にはなかった仕事が、締切りが迫った時期に田中に持ち込まれる、など)を受けやすかったという[2]。菊池たけしは「『こいつなら何とかしてくれる』という期待があっての『かわいそう』」と述べている。
『セブン=フォートレス』では田中をモデルとし[6]、「かわいそう」という特殊能力を持つアナタワックという名称のエネミーが登場する(「かわたな」をローマ字表記し(Kawatana)、逆から読むとアナタワック(Anatawak)となる)。『ナイトウィザード The ANIMATION』第9話では、魔王ベール=ゼファーの攻撃によって撃沈される護衛艦の名前として「かわたな」が使用された。
現在[いつ?]の田中は、F.E.A.R.社員としてルールブックやサプリメントの編集、DTPデザイン、原稿執筆、スケジュール管理など多岐な仕事を行っている。その激務は自身や他者のリプレイでよくネタになるが、本人曰く「大変というよりは楽しいことのほうが多い」という[7]。「時計仕掛けの破壊神」のあとがきでは、自身の性格について「どちらかというと好奇心旺盛なほう」と評し[7]、F.E.A.R.で様々な仕事を手がけているのもそのおかげだと記している[8]。
リプレイへの参加は主にプレイヤーとしてであり「F.E.A.R.社の“ザ・主人公”」(菊池たけし[9]) 「PC1の達人」(田中天[10]) と評されるように主人公的な立ち回りのキャラクターを多数演じてきた。また、言動のおかしな変人的キャラクターを演じてコメディ役を担当することも多い。
ゲームマスターとしては、敵方の意図やラスボスの弱点などでプレイヤーに推理力を要求し、クライマックスでの戦闘は厳しい傾向が見られる(特に「時計仕掛けの破壊神」「アリアンロッド・サガ・リプレイ・デスマーチ」で顕著である)。またセッションメンバーはほぼ固定されており、「幼年期の終わり」のメンバーである鈴吹、菊池、たの、藤井忍を基本に1名入れ替える程度である(「翼の折れた愛と青春」などの例外はあるが)。
作品一覧
編集下記以外に、F.E.A.R.によるTRPGのルールブックやサプリメントの多数にDTPデザインとして記載されている。
リプレイ執筆(ゲームマスター兼任)
編集- スターレジェンド リプレイ「そして、蒼き星へ」
- 『スターレジェンド』サプリメント『ファントムプラネット』 ISBN 978-4-907792-86-2
- アルシャード・フォルティッシモ・リプレイ「時計仕掛けの破壊神」 ISBN 978-4-7577-4553-7
- アリアンロッド・サガ・リプレイ・デスマーチ シリーズ
- アリアンロッド・サガ・リプレイ・デスマーチ 死んで花実が咲くものか! ISBN 978-4-8291-4571-5
- アリアンロッド・サガ・リプレイ・デスマーチ(2) 愛はお金で買えません! ISBN 978-4-8291-4584-5
- アリアンロッド・サガ・リプレイ・デスマーチ(3) 孤立無援の大ピンチ ISBN 978-4-8291-4605-7
- アリアンロッド・サガ・リプレイ・デスマーチ(4) さらにキビシイ綱渡り!!ISBN 978-4-8291-4620-0
- アリアンロッド・サガ・リプレイ・デスマーチ(5) 破滅を招く読みちがい ISBN 978-4-8291-4648-4
- アリアンロッド・サガ・リプレイ・デスマーチ(6) 明日をつかむ大作戦! ISBN 978-4-8291-4663-7
- アリアンロッド・サガ・リプレイ・デスマーチ(7) 一か八かの大勝負! ISBN 978-4-8291-4690-3 ※藤井忍との共著
- アリアンロッド・サガ・リプレイ・デスマーチ(8) 逆襲★ハピネス ISBN 978-4-8291-4691-0 ※藤井忍との共著
- アリアンロッド・サガ・リプレイ・デスマーチ(9) 魔女が奏でる鎮魂曲 ISBN 978-4-8291-4728-3
- アリアンロッド・サガ・リプレイ・デスマーチ(10) 伸るか反るかの大バクチ! ISBN 978-4-04-712945-0
- ナイトウィザード The 2nd Edition リプレイ エターナル・ブレイヴ ISBN 978-4-04-726730-5
- アルシャードガイアRPG・リプレイ「翼の折れた愛と青春」[12]
- 『アルシャードガイア リプレイ 本当のRPG』 ISBN 978-4-04-727793-9
- ナイトウィザード The 2nd Edition リプレイ マリオネットの方程式
- FB Online連載(2012年3月16日付 - 6月)
- アルシャードセイヴァー リプレイ 月明かりのキヲク
- FB Online]連載(2012年9月6日付 - )
リプレイ執筆
編集- トーキョーN◎VA リプレイ「支配者の逃亡」
- 『トーキョーN◎VAリプレイ ふりむけば死』 ISBN 978-4-89366-261-3
- 『さらば、青き光』 ISBN 978-4-86224-237-2
- アルシャード リプレイ「古城の秘密」
- 『オン・ユア・マインド』 ISBN 978-4-907792-48-0
プレイヤー
編集田中がプレイヤーとして参加したリプレイ作品の使用したシステム別の一覧。括弧内は田中が演じたプレイヤーキャラクターの名前。
- アリアンロッドRPG / アリアンロッドRPG 2E
- アリアンロッド・リプレイ(エイジ)
- アリアンロッド・リプレイ・ルージュ(クリス=ファーディナント)
- 「魔を貫くもの」(『アリアンロッド・リプレイ・ルージュ+1』収録)(サーマン・ザ・ボリノーク)
- 「アリアンロッド剣豪伝 明星連也降魔剣」(『アリアンロッド・リプレイ・アンサンブル』収録)(リオナ)
- アリアンロッド・リプレイ・レジェンド、アリアンロッド・リプレイ・ブレイド(ユーノス・ローリングスター)
- アリアンロッド・サガ・リプレイ・エチュード(ユーキリス)
- アリアンロッド・リプレイ・セカンドウィンド(“マーチ”バニィ)
- アリアンロッド・サガ・リプレイ・イエーガー(ファング)
- アリアンロッド×アルシャード コラボ・リプレイ アルディオン・ナイトメア(カーロス・マウリシオ・ダ・シルバ:『トーキョーN◎VA』リプレイのカーロスと同一人物)
- アルシャード(ルール第一版)
- アルシャードガイアRPG
- 「神薙ぐ御剣」(巧刀リョウ)
- 「美少女★女神と黄金の林檎」「美少女★女神と伝説の愛天使」「創世! 真ラグナロク!!」(新条シオン)
- セブン=フォートレス
- 「天空の剣」(勇者シンジ)
- 「フォーラの森砦」「シェローティアの空砦」(ヒュウガ=アライアス)
- 「宝玉の七勇者」「シェローティアの空砦」[13](サシャ=アライアス)
- 「フレイスの炎砦」「シェローティアの空砦」(リューナ=セイグラム)
- 「出撃!試作精霊船アウストリア」(メビウス・ソースブック『クロスワールド』収録)(サクラ=ヴァンスタイン)
- ダブルクロス
- 「ドゥームズデイの魔獣」、「Rabid Dog crying」(『ダブルクロス・リプレイ・クロニクル』収録)、「Chrome Dome」(『ダブルクロス・リプレイ・ゆにばーさる』収録)(黒須左京)
- 「ダブルクロス・リプレイ」、「厄災の聖杯」(『ダブルクロス・リプレイ・ゆにばーさる』収録)(檜山ケイト)
- 「ダブルクロス・リプレイ・オリジン」(蓮見イサム)
- 「ダブルクロス・リプレイ・アライブ」(千城寺薫)
- 「Contrast Side」(『ダブルクロス・リプレイ・クロニクル』収録)(水原ハルカ)
- 「煉獄と呼ばれた街」(2nd Editionサプリメント『アルターライン』収録)(明神リョーマ)
- ナイトウィザード
- 「紅き月の巫女」「聖なる夜に小さな願いを」(マユリ=ヴァンスタイン)
- 「星を継ぐ者」(結城マサト)
- 「白き陽の御子」(山瀬京介)
- 「ベル・ゲーム 〜虚像のエコー〜」(2nd Editionサプリメント『ネヴァーサレンダー』収録)(深海シン)
- 「愛はさだめ、さだめは死」(夜見トオル)
- 「蒼穹のエンゲージ」「グリムゲルデの仮面」「星空のラストリゾート」(サクラ=ヴァンスタイン)
- ブレイド・オブ・アルカナ
- 「ディングレイの魔核」(『ハイデルランド英雄譚』収録)(エルトリウム)
- 「運命の翼」(アルベルト・リヒター)
- トーキョーN◎VA
- 「トータル・エクリプス」(トーキョーN◎VA The Revolution:サプリメント『トータル・エクリプス』収録)「火星人故郷に還る」(トーキョーN◎VA The Detonation:『ゲーマーズ・フィールド別冊Vol.24 鈴吹太郎の希望』収録)(カーロス・マウリシオ・ダ・シルバ)
- 異能使い
- 「漆黒の顎」(『鳴神の巫女』収録)「デモンスレイヤー〜葬魂鬼」(異能使い 第二式)(早良麗)
- その他
- 「別れの日は過ぎて」(BEAST BIND NEW TESTAMENT 新約・魔獣の絆:サプリメント『ビーストバインドエヴァンジェル』収録)(夜刀神いぶき)
- 「星に願いを」(スターレジェンド:『ゲーマーズ・フィールド別冊Vol.08 MAGIC!MAGIC!』収録)(ホノカ・アースウィンド)
- 「ドジッ娘☆なんですけど」(まじしゃんず・あかでみいRPG:『ゲーマーズ・フィールド別冊Vol.17 特集SRS'09』収録)(キョウシロウ=魔奈部)
- 「セイント・アンガー」(ガンメタル・ブレイズ)(ジャック・バランタイン)
その他
編集- ナイトウィザード The ANIMATION 第3巻 オーディオコメンタリーTRPG編 出演
参考文献
編集- 菊池たけし『ナイトウィザードソースブック ロンギヌス』エンターブレイン、2005年。ISBN 4-7577-2231-1。
- 菊池たけし『ナイトウィザードリプレイ 白き陽の御子』エンターブレイン、2006年。ISBN 4-7577-2556-6。
- 菊池たけし『セブン=フォートレス・リプレイ シェローティアの空砦(1) 惨劇の冥魔王』エンターブレイン、2009年。ISBN 978-4-7577-5046-3。
- 田中天『ナイトウィザード The 2nd Edition リプレイ 愛はさだめ さだめは死』エンターブレイン、2008年。ISBN 978-4-7577-3923-9。
- 田中としひさ『おこんないでね』アスキー、1996年。ISBN 4-7561-1211-0。
- 『ゲーマーズ・フィールド別冊 Vol.21 かわいそうとはこういうことだ』ゲーム・フィールド、2011年。ISBN 978-4-86224-061-3。
脚注
編集- ^ 『おこんないでね』第23回で公式リプレイ用セッションに参加している姿が描かれている。なお、『かわいそうとはこういうことだ』に掲載された「かわたなPC人気投票」結果リストには、このPCは掲載されていない。
- ^ a b 『かわいそうとはこういうことだ』、7頁。
- ^ 『アリアンロッド・サガ・リプレイ・デスマーチ 死んで花実が咲くものか!』、18-29頁。
- ^ 『アリアンロッド・サガ・リプレイ・デスマーチ(2) 愛はお金で買えません!』、361頁。
- ^ 『ナイトウィザードソースブック ロンギヌス』、19頁。
- ^ 『セブン=フォートレス・リプレイ シェローティアの空砦(1) 惨劇の冥魔王』、209頁。
- ^ a b 『かわいそうとはこういうことだ』、11頁。
- ^ 『時計仕掛けの破壊神』、504頁。
- ^ 『ナイトウィザードリプレイ 白き陽の御子』、26頁。
- ^ 『ナイトウィザード The 2nd Edition リプレイ 愛はさだめ さだめは死』、20頁。
- ^ 初出は『ナイトウィザード』(ルール第1版)サプリメント『ロンギヌス』。 ISBN 4-7577-2231-1
- ^ 初出は『ゲーマーズ・フィールド別冊』Vol.22『SRS'11』。
- ^ Episode05を除く。