産業用ロボット(さんぎょうようロボット、industrial robot)とは、人間の代わりに、工場での組み立てなどの作業を行う機械装置(ロボット)である。産業ロボットとも言う。

概要

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厳密にはティーチングプレイバックという方法で動作する産業用の機械を指す。しかし、最近では人間の代わりに作業をする機械としての役割が重視されることから、ある程度自律的に動作する人間のに似た部分を有する機械として解釈されるのが一般的である。また、国際標準化機構(ISO)は「3軸以上の自由度を持つ、自動制御、プログラム可能なマニピュレーター」と定義している。

主に自動車電子部品生産する工場の現場で使用されている。例えば自動車の生産工場で使われるロボットの場合、スポット溶接を行うロボット、ボディ塗装を行うロボット、部品取り付けを行うロボットが多く見られる。人間が作業を行う場合、決められた動作を繰り返したり、重量物の運搬を必要としたり、霧散している塗料を吸い込んだりする危険性など、肉体的・精神的負担の大きい労働環境である場合が多い。このような環境での作業時、労働者への大きな負荷から作業ミスを誘発する恐れもあり、品質安定の面からもロボットが用いられる。

また、労働者の賃金が高い国で工場を維持するために、工場全体をロボット化して、最低限の要員のみで運営している事例も存在する。このような工場の自動化をファクトリーオートメーション(FA)と呼ぶ。

同じロボットでも、歩行ロボットとは大きく異なるものである。設計思想が異なり、使われているテクノロジーも少々違う。歩行ロボットが産業用に使われた例は今のところ無いが、将来的な可能性はある。また後述のように、ロボットの用途が接客や愛玩、清掃など第三次産業という「産業」であっても、非工業向けは産業用ロボットでなくサービスロボットなどと呼ばれることが多い。

主な用途

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歴史

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知られている初期の産業用ロボット(ISOの基準を満たす)はオーストラリア/カナダ人の"Bill" Griffith P. Taylorによって作成され、『メカノマガジン』1938年3月号に掲載された。[1][2] クランクのような素子はメカノの部品を使用して作られ、1台の電動機を動力にした。掴み掴んで回転を含む5軸の動きが可能だった。自動化はパンチテープによって電磁石の作動を制御する事により起重機の制御レバーの動きを制御した。このロボットは積木を予めプログラムされた類型に積み重ねる事が出来た。それぞれの動作のために複数の電動機の革命が必要で、最初はグラフ用紙に記録された。情報は同様にロボットの8台の電動機で駆動された紙テープに移された。Chris Shuteは1997年にロボットの完全な複製を製作した。

 
ジョージ・デボル,1982年撮影

ジョージ・デボルは1954年にロボットの最初の特許を出願し、1961年に登録された。ロボットを最初に生産した最初の会社は1956年にデボルの基本特許を基にデボルとジョセフ・F・エンゲルバーガーによって設立されたユニメーション社だった。 ユニメーション社のロボットは同様にプログラム可能なトランスファーマシーンと呼ばれ、移動せず、ベルトコンベアーの横に設置される形態が定まった。それらは油圧式アクチュエータを使用し、プログラムされた関節座標を備える事で多様な関節は入力工程で保存された動作を運転中に再現する。それらは正確に繰り返される。ユニメーション社は後に川崎重工とイギリスのGKN社に日本とイギリスのユニメートの製造権を与えた。ユニメーション社の競争相手は一時期、オハイオ州のCincinnati Milacronのみだった。1970年代末に複数の日本の大企業が類似の産業用ロボットの生産を開始した事により状況は一変した。

1969年に米国スタンフォード大学のVictor Scheinmanはアーム・ソリューションに基づく全電動式6軸関節式ロボット「スタンフォード アーム」を開発した。これは空間内を正確に移動する事を企図しており、組み立てや溶接など、より高度な用途にロボットを使用できる可能性を秘めていた。Scheinmanは米国マサチューセッツ工科大学人工知能研究所で"MIT arm."と呼ばれる2番目のアームを設計した。ユニメーション社の協力を受けた後、Scheinmanは彼の設計を開発するためにこれらの設計をゼネラルモーターズ(GM)から支援を受け、さらに後に組み立て用ロボット(PUMA)として販売するユニメーション社に売却した。

産業用ロボットは欧州において1973年にABBロボティックスKUKAの両社により速やかに市場を開拓された。ABBロボティックス(正確にはアセア)はIRB6を世界初の商業的に入手可能な完全電気式マイコン制御ロボットとして発売した。最初の2台のIRB6ロボットはスウェーデンのMagnusson社に販売され切削と研磨管の曲げのために1974年1月に製造工程に組み込まれた。同様に1973年KUKAロボティックスはFAMULUSとして知られ、同様に電気機械式駆動の6軸を有する関節ロボットの一つでもある最初のロボットを製造した。[3][4]

ロボットへの関心は1970年代末に高まり、ゼネラル・エレクトリック(GE)、ゼネラルモーターズ(日本のファナックとの合弁事業GMファナック ロボティックス)やフランスの創業間もないAutomatix(市販品では初のマシンビジョン搭載したロボットを開発)と アデプト テクノロジーを含む多くのアメリカの企業が進出した。1984年にロボットブームは最高潮に達し、ユニメーション社はウェスティングハウスによって107百万ドルで買収された。ウェスティングハウスはユニメーション社を1988年に現在でも関節ロボットを産業とクリーンルーム用に製造するフランスのStäubli Faverges SCAへ売却してその後、さらに2004年末にロバート・ボッシュのロボット部門を買収した。

日本企業以外でこの市場で生き残った主要な企業は: アデプト・テクノロジー、Stäubli-Unimation、スウェーデン-スイスABB アセア ブラウン ボベリドイツKUKA ロボティックスイタリアComauである。

類型

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形状による分類

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用途による分類

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(参考)非工業向けロボット

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産業用ロボットはIndustrial robotの邦訳である。したがって、サービス産業などで使われているロボットは産業用ロボットとは区別するのが適当である。

市場構造

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国際ロボット連盟 (IFR) の調査であるワールド ロボティックス 2020によると、2019年末時点で約2,722,077台の産業用ロボットが運用されている。この数字は2022年末には3,788,000台に達すると予測される。[5]

2019年末時点において世界の産業用ロボットの市場はIFRの推計でUS$138億ドルであるとされる。ソフトウェア、システムエンジニアリング、ロボットシステムの整備費用などを含めるとUS$480億ドルであると推計される。[5]

2018年の年間の購入額は中国が最大であり、国内での稼働台数は中国が最大である。[6]

2019年の産業用ロボットの主な利用先は、自動車産業が約28%、電気・電子産業が約24%、金属・機械産業が約12%、化学工業・樹脂産業が約5%、食品産業が約3%である。[5]

世界の産業用ロボットの年毎の生産台数 (台数単位):[5]

生産台数
1998 69,000
1999 79,000
2000 99,000
2001 78,000
2002 69,000
2003 81,000
2004 97,000
2005 120,000
2006 112,000
2007 114,000
2008 113,000
2009 60,000
2010 118,000
2012 159,346
2013 178,132
2014 229,261
2015 253,748
2016 294,312
2017 381,335
2018 422,271
2019 373,240
2020 (予想) 420,870

日本の状況

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前述のように、日本は産業用ロボットの有力メーカーが複数ある(ファナック川崎重工安川電機不二越ダイヘンパナソニックなど)。輸出を含む有力産業としてだけでなく、導入企業における効率化にとっても重要であり、経済産業省は所管部署として「ロボット政策室」を設置している。

業界団体としては日本ロボット工業会がある。自動車など大手メーカーに比べ活用が遅れていた中小製造業に産業用ロボットを普及させることを目指す団体「FA・ロボットシステムインテグレータ協会」も2018年7月13日に設立された[7]

特徴

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産業用ロボットは自動制御を行う点でCNC工作機械とよく似ており、FA設備として同じような印象を受けるが、コンセプト的には、産業用ロボットはティーチングプレイバックを行う点で区別される。もちろん、中間的な製品も存在する(例:3次元レーザー切断装置)。また、産業用ロボットはティーチングプレイバックを行うだけでなく、ある程度自律的な動作が可能な機械として解釈されるのが普通である。機械装置としては産業用ロボットは次のような特徴がある。

  1. CNC工作機械は数値制御を行うが、ロボットは行わない
  2. ロボットは条件分岐命令を持つ
ロボットは数値制御をしない

数値制御の場合、それぞれの軸が独立しており、X軸が100.0mm動く指令が出れば、エンコーダにより、Xに100.0mm移動することが保証されている。

一方ロボットはX軸、Y軸、Z軸それぞれの方向に独立した動作機構を持っているわけではない。例えば、X方向に100.0mm動く指令が出た場合、ロボットの全てのモーターに指令が行き、結果としてX方向に100.0mm動く。しかしX軸のエンコーダを持っているわけではないので、その100.0mmは「計算上の」100.0mmであり、100.0mm移動したという保証はされていない。 (ただし、直交ロボットを除く)

つまり、CNC工作機械はNC制御を行うが、産業用ロボットは一般的にはNC制御を行わない。 簡単に言えば、常に定規で測りながら動いているのがNC、目隠しで動いているのがロボットと言えよう。

ロボットは条件分岐命令を豊富に持つ

産業用ロボットもCNC工作機械もプログラムを実行していくことで作業を行うことに違いは無い。つまりロボットと言えども産業用ロボットはプログラムに無い動作をすることはない。

しかし、産業用ロボットは自律的に動作することが可能であり、その点がCNC工作機械とは大きく違っている。具体的に言えば産業用ロボットは条件判断命令を持つ。つまり、状況の変化を検出して動作を変化させたり、適切なプログラムを選択したりすることができる。そのため、多少歪んだ物でもそれなりに加工したり搬送したりすることができる。CNC工作機械は正確に物を加工することを目的とする装置なので、条件判断命令を持たないか、あっても異常の検出程度にしか使わないのが普通である。また条件分岐命令を活用するために豊富な入出力インターフェースを備えていることもロボットの特徴と言える。

ロボットはNC制御ではないため、計算上の座標空間で動作しており、その動作には常に誤差がある。しかし、そもそもロボットは誤差のあるものを加工対象として開発された機械で、センサーで状況を検出し柔軟な動作をすることを前提に作られているわけである。

ただし、全てのロボットがロボットとしての機能を必要として導入されているわけではなく、単に動作の自由度の高さや、品質の向上を目的としてロボットが導入されることも多い。

プログラム

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詳しくはティーチングの項を参照。 産業用ロボットのプログラムはティーチングによって行なう。 産業用ロボットはティーチングによって「記録」された動作を「再生」することで作業を行なう。 これをティーチングプレイバックといい、この機能を持つことが産業用ロボットの定義の一つとなっている。 通常、ティーチングには実機を使用するが、机上で行なうために3DCGを使ったオフラインティーチングも良く行われるようになっている。

ロボットについての考え

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ロボットは単独で使われることは無く、ふつう周辺装置と組み合わせてシステムとして使われる。素材関連を除く生産設備としてはもっとも大きなものの一つである。ロボットを生産設備として機能させるには、非常に多くの周辺設備と高度なノウハウが必要になる。

法規制

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労働安全衛生規則 第150条の3~5、第151条にて、ティーチングや運転、検査を行う際の危険防止措置が定められている。

関連項目

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脚注

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  1. ^ “An Automatic Block-Setting Crane”. Meccano Magazine (Liverpool UK: Meccano) 23 (3): 172. (March 1938). 
  2. ^ Taylor, Griffith P. (1995). Robin Johnson. ed. The Robot Gargantua. Gargantua: Constructor Quarterly 
  3. ^ KUKA-Roboter.de: 1973 The First KUKA Robot English, 28th of March 2010
  4. ^ History of Industrial Robots”. 2012年10月27日閲覧。
  5. ^ a b c d Executive Summary World Robotics 2020 Industrial Robots
  6. ^ 世界の産業用ロボット稼動台数推定 (マニピュレーティングロボットのみ)
  7. ^ 「中小に産業ロボ普及へ144社 協会設立、指針を作成」『日本経済新聞』朝刊2018年7月14日(企業面)2018年7月14日閲覧。

外部リンク

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  • ボアスコープ ロボットの眼として自動検査装置に組み込まれる事例も多い。
関連団体