特別将棋栄誉賞
特別将棋栄誉賞(とくべつしょうぎえいよしょう)は、日本将棋連盟に所属する将棋棋士がプロ入り後、すなわち四段昇段後に公式戦で通算1000勝を挙げた時に贈られる賞である。また、通算1200勝の時にも贈られる。対局数の多くなった現代でも1年間に30勝すればベストテンに入るほどであり、通算1000勝を挙げる棋士は極めて少ない。前段階として、通算600勝で将棋栄誉賞、通算800勝で将棋栄誉敢闘賞が贈られる。また、通算1500勝達成者には特別将棋栄誉敢闘賞が贈られる。
ここでは「特別将棋栄誉賞」(通算1000勝および1200勝)、「特別将棋栄誉敢闘賞」(通算1500勝)の各受賞者のほか、節目となる通算1100勝、1300勝、1400勝の各達成者について記す。
受賞者(1000勝)
編集通算1000勝達成者(「特別将棋栄誉賞」受賞者)を達成順に記載する。
通算1000勝を達成している棋士は10名(2023年12月8日時点)。
:現役棋士 |
# | 達成者 | 達成日 | 達成時年齢 | 達成速度 (四段昇段後) |
達成時の勝敗成績 | 最終成績 | 備考 (※ 1200勝達成者) | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 大山康晴 | 1977年 | 4月30日54歳 | 1か月37年 | 2か月1000勝 | 455敗 (0.687)持将棋 2 | 1433勝 | 781敗 (0.647)[1] | ※ |
2 | 加藤一二三 | 1989年 | 8月21日49歳 | 7か月35年 | 0か月1000勝 | 671敗 (0.598)持将棋 1 | 1324勝1180敗 (0.529) | [1] 最多対局数 2505局 / 最多敗戦数 1180敗 | ※ |
3 | 中原誠 | 1992年 | 1月10日44歳 | 4か月26年 | 3か月1000勝 | 485敗 (0.673)持将棋 3 | 1308勝 | 782敗 (0.626)[1][2] | ※ |
4 | 米長邦雄 | 1994年12月12日 | 51歳 | 6か月31年 | 8か月1000勝 | 657敗 (0.604)持将棋 1 | 1103勝 | 800敗 (0.580)[1] | |
5 | 内藤國雄 | 2000年 | 9月18日60歳10か月 | 41年11か月 | 1000勝 | 752敗 (0.571)1132勝1000敗 (0.531) | [1] | ||
6 | 有吉道夫 | 2001年 | 3月 5日65歳 | 7か月45年11か月 | 1000勝 | 843敗 (0.543)1088勝1002敗 (0.521) | [1] | ||
7 | 谷川浩司 | 2002年 | 7月13日40歳 | 3か月25年 | 6か月1000勝 | 532敗 (0.653)持将棋 3 | 現役 | [1] | ※ |
8 | 羽生善治 | 2007年12月20日 | 37歳 | 2か月22年 | 0か月1000勝 | 373敗 (0.728)持将棋 1 | 現役 | 最年少・最速・最高勝率[1]、 2019年 1434勝(最多勝記録更新)[3]、 2022年 1500勝(史上初)[4] |
※ |
9 | 佐藤康光 | 2017年 | 7月28日47歳 | 9か月30年 | 3か月1000勝 | 598敗 (0.626)現役 | [5] | ||
10 | 丸山忠久 | 2023年12月 | 8日53歳 | 4か月33年 | 8か月1000勝 | 600敗 (0.625)現役 | [6] |
1100勝達成者
編集表彰対象ではないが、節目となる通算1100勝を達成している棋士は8人(2024年1月11日時点)。
:現役棋士 |
# | 達成者 | 達成日 | 達成時年齢 | 達成速度 (四段昇段後) |
達成時の勝敗成績 | 備考 (※ 1200勝達成者) | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 大山康晴 | 1979年11月29日 | 56歳 | 8か月39年 | 7か月1100勝 | 520敗 (0.679)[7] | ※ | |
2 | 加藤一二三 | 1993年 | 3月 8日53歳 | 2か月38年11か月 | 1100勝 | 745敗 (0.596)[7] | ※ | |
3 | 中原誠 | 1995年 | 6月29日47歳 | 9か月29年 | 8か月1100勝 | 557敗 (0.664)[7] | ※ | |
4 | 米長邦雄 | 2003年 | 6月30日60歳 | 0か月40年 | 2か月1100勝 | 791敗 (0.582)持将棋 1 | [7][8] | |
5 | 谷川浩司 | 2006年 | 2月 6日43歳10か月 | 29年 | 1か月1100勝 | 601敗 (0.647)持将棋 3 | [7][9] | ※ |
6 | 内藤國雄 | 2009年 | 1月21日69歳 | 2か月50年 | 3か月1100勝 | 883敗 (0.554)[10] | ||
7 | 羽生善治 | 2010年 | 6月 1日39歳 | 8か月24年 | 5か月1100勝 | 420敗 (0.723)持将棋 1 | 最年少・最速・最高勝率[11] | ※ |
8 | 佐藤康光 | 2024年 | 1月11日54歳 | 3か月36年 | 9か月1100勝 | 710敗 (0.607)[12] |
受賞者(1200勝)
編集通算1200勝でも「特別将棋栄誉賞」として表彰される。
2024年3月31日現在の達成者は5名。
:現役棋士 |
# | 達成者 | 達成日 | 達成時年齢 | 達成速度 (四段昇段後) |
達成時の勝敗成績 | 備考 (※ 1500勝達成者) | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 大山康晴 | 1982年 | 6月 3日59歳 | 2か月42年 | 3か月1200勝 | 568敗 (0.679)持将棋 2 | [13] | |
2 | 中原誠 | 1999年 | 6月29日51歳 | 9か月33年 | 8か月1200勝 | 636敗 (0.654)持将棋 3 | [13] | |
3 | 加藤一二三 | 2001年 | 2月14日61歳 | 1か月46年 | 6か月1200勝 | 888敗 (0.575)持将棋 1 | [13] | |
4 | 谷川浩司 | 2011年 | 3月10日48歳11か月 | 34年 | 2か月1200勝 | 698敗 (0.632)持将棋 3 | [13][14] | |
5 | 羽生善治 | 2012年 | 8月17日41歳10か月 | 26年 | 8か月1200勝 | 459敗 (0.723)持将棋 1 | 最年少・最速・最高勝率[13] | ※ |
1300勝達成者
編集表彰対象ではないが、節目となる通算1300勝を達成している棋士。
2024年3月31日現在の達成者は5名。
:現役棋士 |
# | 達成者 | 達成日 | 達成時年齢 | 達成速度 (四段昇段後) |
達成時の勝敗成績 | 備考 (※ 1500勝達成者) | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 大山康晴 | 1985年11月15日 | 62歳 | 8か月45年 | 7か月1300勝 | 650敗 (0.667)持将棋 2 | [15] | |
2 | 中原誠 | 2007年 | 9月27日60歳 | 0か月41年11か月 | 1300勝 | 769敗 (0.628)持将棋 3 | [15] | |
3 | 加藤一二三 | 2011年11月 | 1日71歳10か月 | 57年 | 3か月1300勝1074敗 (0.548) | 持将棋 1 | [15] | |
4 | 羽生善治 | 2014年11月20日 | 44歳 | 1か月28年11か月 | 1300勝 | 499敗 (0.723)持将棋 2 | [15] 最速・最年少・最高勝率 | ※ |
5 | 谷川浩司 | 2018年10月 | 1日56歳 | 5か月41年 | 9か月1300勝 | 832敗 (0.610)持将棋 3 | [16] |
1400勝達成者
編集表彰対象ではないが、節目となる通算1400勝を達成している棋士。
2024年3月31日現在の達成者は2名。
:現役棋士 |
# | 達成者 | 達成日 | 達成時年齢 | 達成速度 (四段昇段後) |
達成時の勝敗成績 | 備考 (※ 1500勝達成者) | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 大山康晴 | 1990年 | 5月 1日67歳 | 1か月50年 | 0か月1400勝 | 743敗 (0.653)持将棋 2 | [17][18][19] | |
2 | 羽生善治 | 2018年 | 4月12日47歳 | 6か月32年 | 3か月1400勝 | 565敗 (0.712)持将棋 2 | [20] 最年少・最速・最高勝率 | ※ |
1500勝(特別将棋栄誉敢闘賞)
編集特別将棋栄誉敢闘賞(とくべつしょうぎえいよかんとうしょう)は、日本将棋連盟に所属する将棋棋士が公式戦で通算1500勝を挙げた時に贈られる賞である。2022年4月に新たに制定された[4][21]。
:現役棋士 |
# | 達成者 | 達成日 | 達成時年齢 | 達成速度 (四段昇段後) |
達成時の勝敗成績 | 備考 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 羽生善治 | 2022年 | 6月16日51歳 | 8か月36年 | 5か月1500勝 | 654敗 (0.696)持将棋 2 | 2019年 1434勝(最多勝記録更新)[3][4] |
1000敗
編集1000敗に到達した場合でも特に表彰はないが1000勝達成よりも難しいとされ、隠れた名誉の記録である。
これは、順位戦や棋戦上位のリーグ戦以外の公式戦はトーナメントであるためで、トーナメント棋戦敗退時の負け数は参加棋戦数と同数になる(竜王戦だけは原則2敗)。また、順位戦をはじめとしたリーグ戦では対局数が最大負け数であるが、順位戦以外のリーグ戦はその前にトーナメントを勝ち上がらないと参加すらできず、参加できてもそこでの成績不振はリーグ陥落に繋がる。順位戦での成績下位は降級点・降級、さらにはフリークラス編入に繋がる。フリークラス編入となった場合対局数が減少し、何より現役継続が危ぶまれる。
1000敗に到達するのは長期間現役でいる以外に、タイトル戦に出場する、本戦の挑戦者リーグ戦(王将戦・王位戦)に進む、竜王戦で2組以上に在籍して本選前に1敗する(2組は決勝までは勝ち進まないと本選には進めないが決勝は負けても本選出場可能。1組はどこで1敗しても2敗目を喫する前に通算3勝できれば本選出場できる。)、竜王戦で挑決3番勝負まで進む、棋王戦でベスト4まで進む(ここまで進めば2敗失格システムとなる)、順位戦で長期在籍するなど、長期間高い水準で活躍した者のみが到達できる[22]。
順位戦で長期在籍しつつ負け数を稼ぐ方法としては、降級・降級点を取らない程度に多く負ける(A級では4勝5敗、B1では5勝7敗、B2以下では4勝6敗ならよほどのことがない限り降級・降級点は回避できる)、降級点の取得と抹消を繰り返す(10戦全敗で降級点を取得した次の年に6勝4敗で抹消すれば2年で14敗、1年あたり7敗と降級点回避より効率いい)、降級と昇級を繰り返す(B2またはC1で2期連続10戦全敗で降級してから即昇級すれば3年で最低20敗と1年あたり6敗より多く稼げてこれまた降級点回避より効率よく稼げる)、フリークラス編入と即復帰を繰り返す(3期連続10戦全敗でフリークラス編入した直後に順位戦復帰条件を満たせば4年で30敗、1年あたり7.5敗と降級と昇給・降級点の取得と抹消よりさらに多く稼げるが60歳までしか使えない)、がある。
2024年3月31日現在での1000敗への到達者は3名で、いずれも1000敗に到達した時点で既に1000勝も達成している特別将棋栄誉賞の受賞者である。
# | 到達者 | 到達日 | 到達時年齢 | 四段昇段後 年数 |
到達時の勝敗成績 | 最終成績 | 「1000勝」 達成以後の成績 |
備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 加藤一二三 | 2007年 | 8月22日67歳 | 7か月53年 | 0か月1261勝1000敗 (0.558) | 1324勝1180敗 (0.529) | 261勝329敗 | [23] / 2013年 1100敗到達(史上初)[24] |
2 | 有吉道夫 | 2010年 | 3月 9日74歳 | 7か月54年 | 9か月1086勝1000敗 (0.521) | 1088勝1002敗 (0.521) | 86勝157敗 | [25] |
3 | 内藤國雄 | 2015年 | 3月12日75歳 | 4か月57年 | 5か月1132勝1000敗 (0.531) | 1132勝1000敗 (0.531) | 132勝248敗 | 現役最後の対局で到達[26] |
脚注
編集- ^ a b c d e f g h 「羽生善治二冠が公式戦通算1000勝(特別将棋栄誉賞)を達成」『日本将棋連盟』2007年12月20日。2007年12月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。
- ^ 『近代将棋 1992年3月号「プロ棋界最前線(武者野勝巳)」』近代将棋社、196–199頁。 - 国立国会図書館デジタルコレクション収蔵
- ^ a b 「羽生善治九段、通算1434勝達成 歴代単独1位に」『日本将棋連盟』2019年6月4日。
- ^ a b c 「羽生善治九段が1500勝達成」『日本将棋連盟』。
- ^ 佐藤康光九段、1000勝(特別将棋栄誉賞)を達成!|将棋ニュース|日本将棋連盟
- ^ 丸山忠久九段が通算1000勝達成 史上10人目
- ^ a b c d e 「谷川浩司九段、通算1100勝を達成(日本将棋連盟からのお知らせ)」『日本将棋連盟』。2007年8月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。
- ^ 「米長邦雄永世棋聖、通算1100勝達成」『日本将棋連盟』。2003年8月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。
- ^ “お知らせ - 谷川浩司九段、通算1100勝達成!|囲碁・将棋チャンネルホームページ” (2006年2月7日). 2023年12月21日閲覧。
- ^ “内藤國雄九段、1,100勝を達成|将棋ニュース|日本将棋連盟” (2009年1月26日). 2023年12月21日閲覧。
- ^ “羽生善治名人、1100勝を達成!|将棋ニュース|日本将棋連盟” (2010年6月2日). 2023年12月21日閲覧。
- ^ 『通算成績|成績・ランキング|日本将棋連盟』2024年1月12日。オリジナルの2024年1月12日時点におけるアーカイブ 。
- ^ a b c d e 「羽生二冠、1200勝を達成!」『日本将棋連盟』2012年8月17日。
- ^ 谷川浩司九段が1200勝を達成!|将棋ニュース|日本将棋連盟
- ^ a b c d 「羽生名人、1300勝を達成!」『日本将棋連盟』2014年11月21日。
- ^ 「谷川浩司九段、通算1300勝を達成!」『日本将棋連盟』2018年10月1日。
- ^ 『近代将棋 1992年4月号「超人大山、ガンに克ち、将棋に勝つ」』。 - 国立国会図書館デジタルコレクション収蔵
- ^ 『将棋世界 1990年7月号』日本将棋連盟。 - 国立国会図書館デジタルコレクション収蔵
- ^ 「【将棋】羽生棋聖、史上2人目の1400勝を達成 名人戦第1局に勝利」『産経ニュース』2018年4月12日。2024年11月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。
- ^ 「羽生1400勝、最速・最年少 史上2人目、最高勝率で達成」『日本経済新聞』2018年4月13日。2024年11月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。
- ^ 羽生善治九段が前人未到の1500勝達成「これで終わりということではない」 - デイリースポーツ online(2022年6月16日)
- ^ 負け数が増える要因には、(1)タイトル戦や挑戦者決定戦等の番勝負・プレーオフに進出(七番勝負の場合は最大4敗、五番勝負の場合は最大3敗)、(2)王将戦・王位戦の挑戦者決定リーグに参加(対局数が最大の敗数、王将戦では対局数6、王位戦では対局数5)、(3)順位戦に長期間在籍(対局数が最大の敗数、A級では対局数原則9、B級1組では対局数原則12、B級2組以下では対局数10)などが挙げられる。
- ^ 「加藤一二三九段 公式戦通算1000敗を記録」『日本将棋連盟』2007年8月22日。2011年9月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。
- ^ 「加藤一二三九段、史上初の通算1100敗に」『日本将棋連盟』2013年3月13日。2013年3月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。
- ^ 「有吉道夫九段 通算1000敗となる」『日本将棋連盟』2010年3月10日。2010年3月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。
- ^ 「内藤國雄九段、現役最後の対局で通算1000敗」『日本将棋連盟』2015年3月13日。2015年3月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。