滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん、英語: serous otitis media, SOM、あるいはotitis media with effusion, OME。かつては中耳カタル: otitis media catarrhalisとも))は、中耳炎の一つ。中耳腔に滲出液の貯留を認める一方、耳痛発熱などの急性炎症症状を欠くことを特徴とする。

滲出性中耳炎
概要
診療科 神経学
分類および外部参照情報
ICD-10 H65.0 (急性・亜急性)
H65.2 (慢性)

疫学・病態

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年齢別発症率は小児(乳幼児から小学校低学年)と高齢者の二峰性の分布を示し、特に就学児童の難聴の原因としては最多であるが、軽度難聴以外の症状がないことから見逃されやすい[1]。10歳までに9割以上が治癒することから、治療が不必要な場合も多い。ときに遷延化するが、この場合も学童期においては急激に治癒する。しかし稀に改善を認めず、真珠腫性中耳炎などの後遺症を来たす例もある[2]

本症は、何らかの理由により耳管の通気が障害された結果、中耳腔内が陰圧化することを病態の本質とする。この結果、周囲から組織液が滲出して中耳腔内に貯留するとともに、伝音性難聴を来たす。耳管の通気障害の原因としては、小児の場合は急性中耳炎上気道炎、口蓋・咽頭扁桃の肥大や副鼻腔炎が、成人の場合は上咽頭の悪性腫瘍がある。また口唇口蓋裂ダウン症候群未熟児等にも続発しうる[1]

診断・治療

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中耳腔内の陰圧化により鼓膜が内陥することから、この所見により診断は比較的容易である。純音聴力検査では伝音難聴の所見を呈し、インピーダンス・オージオメトリではB型ないしC型のティンパノグラムを示す[1]

基本的には保存的治療が主となる。中耳腔内の陰圧化を解除するため耳管通気が試みられ、また原疾患である感染症やアレルギーに対する薬物療法が行なわれる。ただしこれらの治療を行なっても遷延化する場合があり、この場合は鼓膜切開や鼓膜チューブの留置などの外科的治療が行なわれうる[2]

参考文献

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  1. ^ a b c 鈴鹿有子「滲出性中耳炎」『今日の治療指針 2010年版』医学書院、2010年。ISBN 978-4-260-00900-3 
  2. ^ a b 飯野ゆき子「滲出性中耳炎」『今日の小児治療指針 第14版』医学書院、2006年。ISBN 978-4-260-00090-1