湯前神社
静岡県熱海市にある神社
湯前神社(ゆぜんじんじゃ)は、静岡県熱海市に鎮座する神社である。式内社の「久豆弥(くづみ)神社」の論社で、旧社格は村社。社前には江戸時代までの熱海温泉の中心的な源泉だった大湯間歇泉があり、この神社の名称・起源もそこに由来している。
湯前神社 | |
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湯前神社の社殿(2023年1月撮影) | |
所在地 | 静岡県熱海市上宿町4-12 |
位置 | 北緯35度5分53.6秒 東経139度4分16.7秒 / 北緯35.098222度 東経139.071306度座標: 北緯35度5分53.6秒 東経139度4分16.7秒 / 北緯35.098222度 東経139.071306度 |
主祭神 | 少彦名神 |
社格等 | 式内社論社・旧村社 |
創建 | 天平勝宝元年、または天平宝字年中(8世紀半ば) |
例祭 | 2月10日・10月10日 |
主な神事 | 献湯祭(2月10日・10月10日) |
地図 |
祭神
編集少彦名神を祀る。少彦名神は温泉の神として日本各地に祀られているが、本来は大湯そのものを神として祀ったものと思われる[1]。
由緒
編集社伝によると、天平勝宝元年(749年)6月、小児に神託が下り、諸病を除く効果があるので温泉を汲み取って浴せよとの神教があり、その報恩として里人が祠を建てて少彦名神を祀ったのに創まるという[2]。また天平宝字年中(8世紀半ば)に箱根山の金剛王院(廃寺[注釈 1])に住した万巻(満願)上人が、熱海の海中に温泉が湧いてその熱湯のために多くの魚介類が死んでいたのを哀れみ、海浜に祈祷の壇を築いて100日間の勤行に励むと、満願の日に内陸部へと湯脈が移ったので、その傍らに「湯前権現」と称して温泉の守護神として祀るようになったともいう[3]。
『伊豆国神階帳』田方郡部に載せる「従四位上 熱海の湯明神」に比定され[注釈 2]、『元亨釈書』に釈桓舜が説法をしたと伝える「温泉神祠」も当神社の事と推定されているが[4]、『延喜式神名帳』の「久豆弥(くづみ)神社」に当てる説もある[注釈 3]。中世以降広く「湯前権現」と称され、鎌倉時代に源頼朝を初めとする歴代将軍や幕府の要人が走湯、箱根の二所権現に盛んに参詣するようになると、広く湯治の神として喧伝された[4]。
祭祀
編集境内
編集- 樹幹の二分の一程度が焼損しているが樹勢はお旺盛で、樹高:17メートル、幹周り:7.2メートル(熱海市天然記念物指定時)[6]。
- 石鳥居
- 安永9年(1780年)に第7代久留米藩主・有馬頼徸が熱海に来湯したさいに寄進したもの。鳥居両柱の石をくり抜き作られている。高さ:3.45メートル、幅:4.1メートル、直径:0.35メートル。寄進年は鳥居の柱に刻まれている[7]。
- 石燈籠
- 宝暦8年(1758年)に久留米藩主・有馬頼徸が熱海に来湯したさいに寄進したもの。高さ:2.05メートル、柱直径0.35メートル。寄進年は燈籠の柱に刻まれている[7]。
- 手水場
- 手水は源泉が流れていたが、現在は停止している。
- 拝殿・本殿
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石鳥居と天然記念物のクスノキ(左端)
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天然記念物のクスノキ
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源泉が流れる手水場
文化財
編集熱海市指定文化財
- 建造物
- 天然記念物
脚注
編集注釈
編集- ^ 現神奈川県箱根町にあり、箱根神社の別当寺であった。
- ^ 『伊豆国神階帳』は伊豆国の国内神名帳。
- ^ 出口延経『神名帳考証』等。久豆弥神社の「くづみ」は伊豆国の古代の郷名である「久寝(くすみ)」に因むものと見るのが通説であるが、その「くすみ」を伊豆国の隅(「国隅(くすみ)」)と解したり(『日本地理志料』)、熱海の温泉湧出を神の業と見、それを「奇霊(くしび)」(奇魂)と称したのが「くすみ」と訛ったと解して(竹村茂正『豆州式社考案』)、久寝郷を熱海市に比定するのがその論拠とされる。もっとも久寝郷は現伊東市市街地一帯を指すとする説が有力なので、久豆弥神社を同市の葛見神社に比定する説もある(『式内社調査報告』)。
出典
編集参考文献
編集- 教部省撰『特選神名牒』(復刻版)、思文閣出版、昭和47年 ISBN 4-901339-07-9(初版は磯部甲陽堂、大正14年)
- 菱沼勇「久豆彌神社」(『式内社調査報告』第10巻 東海道5、皇學館大學出版部、昭和56年)
- 『静岡県の地名』(日本歴史地名大系22)、平凡社、2000年ISBN 4-582-49022-0
外部リンク
編集- 湯前神社|観光・体験|あたみニュース(熱海市観光協会)