海獣ビヒモス (The Giant BehemothBehemoth, the Sea Monsterとも) は1959年に製作されたイギリスアメリカ合作のSF怪獣映画。アーティスト・アライアンス、ダイアモンド・ピクチャーズ製作。モノクロ。

海獣ビヒモス
The Giant Behemoth
(Behemoth, the Sea Monster)
監督 ユージン・ルーリー
ダグラス・ヒコックス
脚本 ダニエル・ルイス・ジェームズ
ユージン・ルーリー
原案 ロバート・エイブル
アレン・アドラー
製作 デヴィッド・ダイアモンド
テッド・ロイド
出演者 ジーン・エヴァンス
アンドレ・モレル
音楽 エドウィン・T・アストレイ
撮影 デスモンド・デイビス
ケン・ホッジス
編集 リー・ドゥイグ
公開 アメリカ合衆国の旗 1959年3月3日
イギリスの旗 1959年10月
日本の旗 劇場未公開
上映時間 80分
製作国 イギリスの旗 イギリス
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 英語
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ビヒモス旧約聖書に書かれた想像上の獣で、陸を支配し海のレヴィアタンと敵対するものとされるが、この映画で登場するのは太古の水棲生物の生き残りである。

ストーリー

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米国の科学者スティーブ・カーンズは、核実験が海洋生物に与える危険性について警鐘を鳴らす。同じころ、イギリス沿岸部のコーンウォール州では、漁師が巨大生物に殺され、多くの魚の死体が打ち上げられる。カーンズとイギリスのピックフォード教授は、核実験により突然変異した巨大生物の仕業ではないかと疑う。

巨大生物はエセックス州に上陸し、古生物学者のサンプソン博士は、その巨大生物が、核実験の放射線を浴びたことで放射能電気パルスを発するパレオサウルス[1]の生き残りであると特定する。博士はこの生物も被曝により瀕死だが、その前にロンドンに大惨事をもたらすだろうと警告する。

カーンズとピックフォードはテムズ川の封鎖を進言するが軍は取り合わない。そして巨大生物は、テムズ川のフェリーを転覆させ、ロンドン市街に上陸する。巨大生物の発する放射性電気パルスは逃げ遅れた人々を被曝させ大火傷を負わせる。巨大生物はロンドン橋を破壊し川に転落する。

カーンズとピックフォードの案で、ラジウムを充填した魚雷を打ち込み生物の死期を早める作戦を立てる。イギリス海軍の小型潜水艦X艇によりそれは実行され、巨大生物は死にその遺体はアメリカ東海岸に打ち上げられた。

スタッフ

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キャスト

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  • スティーブ・カーンズ:ジーン・エヴァンス
  • ジェームズ・ピックフォード教授:アンドレ・モレル
  • ジョン:ジョン・タ-ナー
  • サンプソン博士:ジャック・マッゴーラン

製作

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キング・コング』によりストップモーション・アニメーションの第一人者と言われたウィリス・オブライエンは、1949年の『猿人ジョー・ヤング』ではアカデミー視覚効果賞を受賞したものの興行的には失敗し、その後企画や作品に恵まれず、これが実質的に最後の作品となった[4]

企画段階では、不定形の放射性物質の物語であったが、配給会社の強い要望で、1953年の『原子怪獣現わる』に酷似したものとなったが、怪物が放射線を吸収するなどに原案の名残が見られる。

監督はその『原子怪獣現わる』や『怪獣ゴルゴ』の監督であるユージン・ルーリーが手掛けている。実写シーンはすべてロンドンを含むイギリスで撮影され、オブライエンによるストップモーション・アニメーションはロサンゼルスで撮影され合成された。本作の予算は非常に少なかったため、モンスターがフェリーを襲うシーンやロンドンに上陸するシーンは、『キングコング』の効果音がそのまま使われている[5]

Video Movie Guide 2002によると、オブライエンのストップモーション・アニメーションは悪くはなかったが、それは明らかに低予算の下で制作しなければならなかったという条件の下での評価である。実際オブライエンは、わずか2万ドルという低予算でこれを請け負っており都市破壊すら再現できなかった[6]。また、撮影は盟友ピート・ピーターソンのガレージで行われたという[7]

映画評論家のグレン・エリクソンは『海獣ビヒモス』は『原子怪獣現わる』のコピーであり、構造や脚本は、古生物学者の立ち位置に至るまで酷似している、と指摘している[8]

公開

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この映画は、1959年3月に"The Giant Behemoth"として米国で先に公開された[9]。この際のバージョンは80分である[10]。その際の監督名はユージン・ルーリーのみが記載され共同監督とされるダグラス・ヒコックスの名は記載されなかった。

英国では遅れて同年10月28日に公開された。当初"The Giant Behemoth"は72分に編集され全英映像等級審査機構で審査を受けたもののXレート(16歳未満禁止)と判定されてしまい、3日後さらに69分にカットされAレート(大人同伴であれば12歳未満も可)と認定されたが[11]、その際タイトルを"Behemoth, the Sea Monster"と変更し公開された[12]。なお、こちらのバージョンでは、監督名はダグラス・ヒコックスとユージン・ルーリーの連名となっている。

日本での公開

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日本では劇場未公開。日本で発売されたDVDによると、過去50分程度にカットされたバージョンが地方TV局[13]で放送されたのみとのこと[14]。なお、本作品の邦題については、「大海獣~」「海獣~」「巨獣~」[15]など表記にブレがある。

  • 2009年にランコーポーレーションより激安DVDとして発売

注釈

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  1. ^ パレオサウルスは、19世紀にイギリス西部ブリストルで発掘された原竜脚類の化石で、映画制作時にもそう呼ばれていたが、21世紀に入りテコドントサウルスと統一された。
  2. ^ BEHEMOTH THE SEA MONSTER Monthly Film Bulletin; London Vol. 26, Iss. 300, (1 January 1959): 157.
  3. ^ 戦時中チャールズ・チャップリンと親交があったことから下院非米活動委員会ブラックリストに掲載されてしまったため
  4. ^ この後も、アーウィン・アレンの『失われた世界』(自身が手掛けた『ロスト・ワールド』のリメイク)や『おかしなおかしなおかしな世界』に名を連ねているものの、前者は結果として本物のトカゲを使った特撮となり、後者はクレジットからも外されている。
  5. ^ Nixon, Rob. "The Giant Behemoth (1959)" (article) TCM.com. Retrieved: 30 January 2015.
  6. ^ 『モンスターメイカーズ・ハリウッド怪獣特撮史』2000年1月25日初版 洋泉社刊 P.71
  7. ^ Martin, Mick and Potter, Marsha (2001) Video Movie Guide 2002. New York: Ballantine Books. p. 430. ISBN 978-0-3454-2100-5
  8. ^ Erickson, Glenn (9 June 2007) "Cult Camp Classics Volume 1: Sci-Fi Thrillers, Attack of the 50 Foot Woman, The Giant Behemoth, Queen of Outer Space." DVD Savant, Retrieved: 30 January 2015.
  9. ^ THE GIANT BEHEMOTH(1959)”. https://aficatalog.afi.com/. 2023年10月26日閲覧。
  10. ^ ランコーポレーションの国内DVDでは79分と記載
  11. ^ Behemoth the Sea Monster”. Aveleyman.com. 2023年10月22日閲覧。
  12. ^ BEHEMOTH THE SEA MONSTER | British Board of Film Classification”. bbfc.co.uk. 2019年2月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年10月22日閲覧。
  13. ^ 東京12チャンネル(現テレビ東京系列との文献もある。木全公彦. “映画の國 コラム「日本映画の玉(ギョク)」続・合作映画の企画「大海獣ビヒモス」”. 映画の國. 有限会社マーメイドフィルム. 2023年10月23日閲覧。
  14. ^ DVD『大海獣ビヒモス』 2009年 RUNコーポレーションパッケージより
  15. ^ 『怪物の事典』 ジェフ・ロヴィン著 1998年、青土社刊、ISBN 4791756886、p.121など

外部リンク

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