海嘯
海嘯(かいしょう、英: tidal bore)とは、河口に入る潮波が、垂直壁となって河川を逆流する現象である。潮津波(しおつなみ)、暴潮湍、暴漲湍(ぼうちょうたん)、潮汐段波(ちょうせきだんぱ)とも呼ばれる[1][2]。
フランス語では「マスカレ(仏: Mascaret)」、中国語では大逆潮、大海嘯、涌潮、怒潮などとも呼び[2]、また通常の津波についても用いられる。日本でも、昭和初期までは地震による津波について呼ばれていた。
波形から段波と呼ばれる形状構造をとっているため、波の前面での破壊力が大きい。
海岸でこの現象が起こるのは、河口が広い三角江であり、発生する代表的な河川はブラジルのアマゾン川(これを特にポロロッカという)、パキスタンのインダス川、インドのフーグリー川、中華人民共和国の銭塘江、フランスのセーヌ川、イギリスのセヴァーン川である[2]。世界の河川や湾では、約80か所で確認される[3]。
アマゾン川の海嘯
編集日本の海嘯
編集1874年(明治7年)8月19日、福岡県三潴県で強風により海嘯が発生。圧死者391人、溺死者367人、家屋全壊(倒家)1万8902戸、家屋半壊(半倒)4429戸、流出283戸などの被害が出た記録が残る[4]。三潴県は筑後川河口、有明海に面していた。なお、有明海では類似の災害として、 1927年(昭和2年)の台風接近時に高潮が発生し、沿岸部で大きな人的被害が発生したこともある[5].
銭塘江の海嘯
編集銭塘江の海嘯は「銭塘江潮」とも呼ばれる。中国語では「钱塘江大潮」であり、現在の中国語の「海啸」は専ら津波を指す。
朔か望のあとに発生することが多く、したがって太陰太陽暦の日付で1日から3日、および15日から18日ごろに発生する[6]。とくに中秋節と重なる中国暦8月18日ごろの潮が古来有名であり、そのため、杭州では月餅を食べながら見物する伝統がある。
この現象は銭塘江の河口がラッパ状に開いていることや、その先に舟山諸島が点在し、潮流を複雑にしていること、さらに東シナ海では台湾海峡から流れ込む潮流のスピードが海峡の幅が狭まるにつれ強くなることが原因となって現れると考えられる。
サーフィン
編集垂直壁となる逆流を乗り切るスリルから、サーファーには人気があるものの、危険は大きい為、発生する都市が率先して奨励することは少ない。基本的には観覧のみを観光資源としており、サーフィン自体は黙認する形になっている。フランスのガロンヌ川が有名。
参照
編集- ^ 「海嘯」 。
- ^ a b c 進, 桑島 (1995). “銭塘江の大逆潮”. 日本航海学会誌 Navigation 124: 103–106. doi:10.18949/jinnavi.124.0_103 .
- ^ “Catalogue of Worldwide Tidal Bore Occurrences and Characteristics, U.S. Geological Survey Circular 1022” (1988年). 2024年1月1日閲覧。.
- ^ 池田正一郎『日本災変通志(『福岡県三潴郡誌』引用部分)』新人物往来社、2004年12月15日、729頁。ISBN 4-404-03190-4。
- ^ 「台風で高潮、死者四百人越す」『大阪毎日新聞』1927年(昭和2年)9月14日(昭和ニュース事典編纂委員会『昭和ニュース事典第1巻 昭和元年-昭和3年』本編p165 昭和ニュース事典編纂委員会 毎日コミュニケーションズ刊 1994年)
- ^ “迫力の大逆流! 中秋の銭塘江「一線潮」 浙江・海寧”. AFP (2019年9月19日). 2019年9月19日閲覧。
関連項目
編集外部リンク
編集- 小田原大海嘯 明治35年、土木貴重写真コレクション