公衆浴場

公衆一般が利用する入浴施設
浴場から転送)

公衆浴場(こうしゅうよくじょう)とは、公衆一般が利用する入浴施設のこと。大衆浴場公共浴場[注 1]とも。

奈良健康ランド天理市

日本の公衆浴場

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法制

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公衆浴場法では、公衆浴場の定義を置き(第1条)、都道府県知事(保健所を設置する市又は特別区にあっては,市長又は区長)の許可制として配置基準を定めることとしている(第2条)[1]

また、1981年(昭和56年)には「公衆浴場の確保のための特別措置に関する法律」が制定され、国及び地方公共団体による公衆浴場の経営の安定のための必要な措置(3条)や活用についての配慮(4条)、貸付けについての配慮(5条)、助成等についての配慮(6条)が規定されている[1]

各法律では次のように定義されている。

  • 「公衆浴場法」第1条
    • この法律で「公衆浴場」とは、温湯、潮湯又は温泉その他を使用して、公衆を入浴させる施設をいう。
  • 「公衆浴場の確保のための特別措置に関する法律」第2条
    • この法律で「公衆浴場」とは、公衆浴場法(昭和二十三年法律第百三十九号)第一条第一項に規定する公衆浴場であつて、物価統制令(昭和二十一年勅令第百十八号)第四条の規定に基づき入浴料金が定められるものをいう。

上の「公衆浴場の確保のための特別措置に関する法律」に基づき、自治体ごとに特別措置が講じられており、固定資産税の減免、水道料金の低減、利子補給などが条例で定められている[1]

また、公衆浴場法に規定する浴場業は生活衛生関係営業の運営の適正化及び振興に関する法律の適用業種であり、各業種ごとに各都道府県に同業組合の設立が認められている[1]

なお、旅館業における衛生等管理要領では「旅館営業にあっては、当該施設に近接して公衆浴場がある等入浴に支障をきたさないと認められる場合には、宿泊者の需要を満たすことができる適当な規模の入浴設備を必ずしも有する必要のないこと。」と定められている[2]

産業分類

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日本標準産業分類では公衆浴場を一般公衆浴場とその他の公衆浴場に分ける[3]

  • 一般公衆浴場
    • 日本標準産業分類では「日常生活の用に供するため、公衆又は特定多数人を対象として入浴させるもので、公衆浴場入浴料金の統制額の指定等に関する省令(昭和32年厚生省令第38号)に基づく都道府県知事の統制をうけ、かつ、当該施設の配置について公衆浴場法第2条第3項に基づく都道府県の条例による規制の対象となっている事業所をいう。」と定義される[3]。いわゆる銭湯業のことを指す[4]
  • その他の公衆浴場
    • 日本標準産業分類では「薬治、美容など特殊な効果を目的として公衆又は特定多数人を対象として入浴させる事業所をいう。」と定義される[3]。温泉浴場業、蒸しぶろ業、砂湯業サウナぶろ業、スパ業、鉱泉浴場業、健康ランドスーパー銭湯がこれに当たる[4]

歴史

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世界の公衆浴場

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インド

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モヘンジョダロの大浴場

紀元前2600年頃のインダス文明モヘンジョダロや、ハラッパー等の諸都市は、大規模な公衆浴場が完備していた。 古代インド十六大国マガダ国の首都王舎城(現在のビハール州ラージギル)は温泉が多く、王舎城に創された仏教最初の寺院である竹林精舎の近くに、温泉がある仏教僧院(Tapodarama)があった。湯治を目的としていた思われる。現在、跡地にはヒンドゥー寺院が建てられるが、温泉は今も健在である。宗教施設の中や、その周辺に公衆浴場があることが多い。

ヒンドゥー教の多くは1日の始まりに、寺院の公衆浴場などで、時間をかけて全身を洗いきよめる[5]

ヨーロッパ

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古代ローマの公衆浴場(イギリスバース市

歴史的には、例えば古代ローマカラカラ浴場などが有名である。また、中東にはハンマームと呼ばれる公衆浴場が存在する。

東アジア

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台湾大韓民国中華人民共和国などに存在する。特に大韓民国では日本統治時代に銭湯文化が根付き、現在でも各地に公衆浴場がある。一般の銭湯を「沐浴湯(목욕탕・モギョクタン)」と言い、サウナが付いている銭湯は「サウナ(사우나)」と呼ぶこともある。韓国でも従来型の銭湯である沐浴湯は徐々にその数を減らしつつある一方で、都市部では様々なサウナを備えた「チムジルバン」が増えている。同じ日本統治を経験した台湾は、韓国ほどは銭湯文化が根付かなかったが、各地にある温泉などを中心に公衆浴場が存在する。「サウナ」に公衆浴場を備えた施設は台湾各地にある。

中華人民共和国には以前から「浴池」と称する公衆浴場が存在した。家庭に風呂がない住宅が多いためであるが、シャワーが中心で浴槽はないところも多い。垢すりが常駐する公衆浴場も多く、その場合は浴槽は日本のように温浴する場所でなく、垢を洗い流す場所であることもある。小都市にはシャワー(淋浴)のみの小規模な公衆浴場が多い。特にイスラム教徒の多い地域では宗教的な意味から淋浴室が多数存在する。ムハンマドが「清潔は信仰の半分」と言い、 クルアーンで「信仰する者よ、あなたがたが礼拝に立つ時は、顔と両手を肘まで洗い、頭を撫で両足をくるぶしまで洗え。」(クルアーン5:6)とあるため、イスラム教徒は礼拝の前に体を清潔にする必要があるからである。中国のムスリムはシャワーで全身を洗うことも多い。

これらの国では日本で言うところのスーパー銭湯も、大都市を中心に増加しつつある。

脚注

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注釈

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  1. ^ 共同浴場は別の意味(温泉地などでの運営者側の共同)で用いられる場合がある。

出典

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  1. ^ a b c d 木藤伸一朗「公衆浴場と法」『立命館法学』、立命館大学、2008年。 
  2. ^ 旅館業における衛生等管理要領”. 厚生労働省. 2024年5月26日閲覧。
  3. ^ a b c 資料4 温泉を利用する公衆浴場の実態”. 環境省. 2024年5月26日閲覧。
  4. ^ a b 大分類N-生活関連サービス業、娯楽業”. 総務省. 2024年5月26日閲覧。
  5. ^ NHK BSプレミアム 名作選 HVスペシャル「大沐浴 ~インド・3000万人の祈りの日」2014年6月11日 再放送

関連項目

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