泥棒を捕まえる人
『泥棒を捕まえる人』[1][2](A Thief Catcher) は、1914年公開の短編サイレント映画。キーストン社による製作で、監督および主演はフォード・スターリング[3]。共演はチャールズ・チャップリン、マック・スウェイン、エドガー・ケネディなど[4][5]。
泥棒を捕まえる人 | |
---|---|
A Thief Catcher | |
監督 | フォード・スターリング |
脚本 | ヘンリー・レアマン |
製作 | マック・セネット |
出演者 |
フォード・スターリング マック・スウェイン エドガー・ケネディ チャールズ・チャップリン |
配給 | キーストン・フィルム・カンパニー |
公開 |
アメリカ合衆国 1914年2月19日 日本 2011年4月9日 |
上映時間 | 7分35秒[1] |
製作国 | アメリカ合衆国 |
言語 |
サイレント映画 英語字幕 |
長らく行方が分からなかった作品であったが、2010年に発見された。1971年に映画研究家ウノ・アスプランドが制定したチャップリンのフィルモグラフィーの整理システムにあてはめると[6]、出演第3作『メーベルの窮境』と第4作『夕立』の間に入る作品となる。
概要
編集内容としては典型的な「キーストン・コップスもの」の一つであり、チャップリンの出演時間はおよそ3分間である[3]。ところが、チャップリン自身が1914年8月に早くも作成した自身のフィルモグラフィーでは、この作品が記されなかった[3][注釈 1]。英国映画協会の記録からもこの作品は抜け落ちており[3]、チャップリンの伝記を著した映画史家のデイヴィッド・ロビンソンも、おそらく見落とした[7]。いずれにせよ、『泥棒を捕まえる人』は封切後、チャップリン自身を含めて記録と記憶から消えていくこととなり、フィルムそのものも行方不明となった。
転機となったのは、アメリカの映画史家ポール・ギルッキ (Paul Gierucki) がミシガン州の骨とう品店で「キーストン」と書かれた古いフィルム缶を購入したことである。ギルッキは購入したフィルムを「典型的なキーストン・コップスもの」と決めつけており、数か月間目を通していなかった。ところが、ギルッキがあらためて状態の良いフィルムに目を通したところ、そのうちの一つに映っていたキーストン・コップスの中に、明らかにチャップリンと思われる役者の姿を見て驚き、独特の仕草からチャップリンであろうことが推測できたものの、断定まではいたらなかった。ギルッキは友人のフィルムコレクターであるリチャード・ロバーツに「チャップリン」が映っているフィルムを見せたところ、ロバーツはたった2秒でチャップリンであると断定した。そのフィルムこそ、長く行方知れずとなって忘却のかなたにあった『泥棒を捕まえる人』であった[3][8][9]。
『泥棒を捕まえる人』はバージニア州アーリントン郡で開かれているスラップスティコン映画祭 (Slapsticon film festival) に出品され、96年ぶりに日の目を見た[3]。翌2011年4月9日と10日には、ヒューマントラストシネマ有楽町で開催されたチャップリン映画祭で、映画監督の周防正行とチャップリン研究家の大野裕之によるトークショーを付して日本において初めて公開された[1][10]。日本では他に、2012年9月にオーディトリウム渋谷や銀座テアトルシネマ、シネ・リーブル梅田でも上映され、9月15日に行われたオーディトリウム渋谷での先行上映イベントでは、日本チャップリン協会名誉会長の黒柳徹子が『泥棒を捕まえる人』を鑑賞した[11]。『泥棒を捕まえる人』は、82番目のチャップリン映画として登録された[3]。
キャスト
編集出典:[12]
- フォード・スターリング:不審者
- チャールズ・チャップリン:警官
- ウィリアム・ハウバー:警官
- ジョージ・ジェスク:警官
- エドガー・ケネディ:不審者
- ルーベ・ミラー:警官
- マック・スウェイン:不審者
脚注
編集注釈
編集- ^ "Mabel's Strange Predicament" (『メーベルの窮境』)と記してある下に"Between Showers" (『夕立』)と記されている(#ロビンソン (上) p.163)
出典
編集- ^ a b c #大野 (2011)
- ^ #シネマトゥディ (1)
- ^ a b c d e f g #The Telegragh
- ^ Larotonda, Matthew (July 18, 2010). “Lost Charlie Chaplin Silent Film Re-Debuts 96 Years Later at Virginia Movie Festival”. ABC News
- ^ Zongker, Brett (July 15, 2010). “Long-Lost Chaplin Film to Debut at Va. Festival”. The Associated Press
- ^ #大野 (2007) p.253
- ^ #ロビンソン (上) pp.140-160
- ^ Brunsting, Joshua (June 8, 2010). “Charlie Chaplin Film Found At An Antique Sale, Once Thought Lost”. The Criterion Cast. 2013年5月2日閲覧。
- ^ “Progressive Silent Film List: A Thief Catcher”. Silent Era. 2013年5月2日閲覧。
- ^ #シネマトゥディ (2)
- ^ #シネマトゥディ (3)
- ^ Sterling, Ford (1914-02-19), A Thief Catcher, Ford Sterling, Keystone Kops, Phyllis Allen, Keystone Film Company 2024年5月5日閲覧。
参考文献
編集サイト
編集- “Long lost Charlie Chaplin film found at antiques fair” (英語). The Telegraph. The Telegraph. 2013年5月2日閲覧。
- “チャップリン映画祭、幻の出演作A THIEF CATCHER 泥棒を捕まえる人、東京初上映!”. 大野裕之公式ブログ 阿修羅のごとくラブリィ!. 大野裕之. 2013年5月2日閲覧。
- “チャップリン映画祭開催 96年ぶりに発見された幻の出演作『A THIEF CATCHER 泥棒を捕まえる人』も上映”. シネマトゥディ. CINEMATODAY Inc. 2013年5月2日閲覧。
- “喜劇王チャップリンの初期短編がデジタルリマスターで復活!吹き替えは豪華声優陣!”. シネマトゥディ. CINEMATODAY Inc. 2013年5月2日閲覧。
- “黒柳徹子、幻のチャップリン作品、世界初の劇場公開に大興奮!”. シネマトゥディ. CINEMATODAY Inc. 2013年5月2日閲覧。
印刷物
編集- デイヴィッド・ロビンソン『チャップリン』 上、宮本高晴、高田恵子(訳)、文藝春秋、1993年。ISBN 4-16-347430-7。
- デイヴィッド・ロビンソン『チャップリン』 下、宮本高晴、高田恵子(訳)、文藝春秋、1993年。ISBN 4-16-347440-4。
- 大野裕之『チャップリン再入門』日本放送出版協会、2005年。ISBN 4-14-088141-0。
- 大野裕之『チャップリン・未公開NGフィルムの全貌』日本放送出版協会、2007年。ISBN 978-4-14-081183-2。