機動戦士ガンダム 戦略戦術大図鑑
『機動戦士ガンダム 戦略戦術大図鑑 一年戦争全記録』(きどうせんしガンダム せんりゃくせんじゅつだいずかん いちねんせんそうぜんきろく)は、アニメ作品群「ガンダムシリーズ」のうち、宇宙世紀を舞台にした作品、特に一年戦争と呼ばれる宇宙世紀0079年前後に関する資料集である。
ENTERTAINMENT BIBLE .39 機動戦士ガンダム 戦略戦術大図鑑 ~一年戦争全記録 | ||
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著者 |
スタジオ・ハード(編・構成) (山口宏、平沢正弘、木川明彦) | |
イラスト | 大河原邦男、石橋謙一、前田真弘、根木義雄、中村淳一 | |
発行日 | 1991年2月 | |
発行元 | バンダイ | |
ジャンル | ファンブック、設定資料集 | |
国 | 日本 | |
ページ数 | 143 | |
コード | ISBN 4-89189-177-7 | |
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概要
編集本書はガンダムシリーズのうち、アニメ『機動戦士ガンダム』『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』などの舞台となった一年戦争の資料集である。ただし、アニメのキャラクターやメカデザインの設定画といったようなものを扱うのではなく、戦争中にどこでどのような戦闘が行われたか、どのような人物が係わり、どのような兵器が使われたか、といったことを記述した書籍である。画稿は少なく、みのり書房のアニメ雑誌「月刊OUT」別冊『宇宙翔ける戦士達 ガンダムセンチュリー』のように新たに書き上げられた文章で構築されている。
内容はバンダイの書籍『MS ERA 0001〜0080 ガンダム戦場写真集』と同じように、ガンダムシリーズ劇中の視点から「宇宙世紀0094年に地球連邦の予備役軍人ビク・ハボクックの手に作られた戦争の資料集」という形がとられ、この劇中の視点から見る方式は、後にティーツー出版の書籍『ジオン新報 秘匿された記録』や講談社の書籍『機動戦士ガンダム 公式百科事典 GUNDAM OFFICIALS』などといった資料集に受け継がれている。
記述の多くは新たに設定されたものであり、アニメや『モビルスーツバリエーション』の設定とは異なる部分も多いが、サンライズ監修の一年戦争のあらゆるオフィシャルの設定情報をまとめた『機動戦士ガンダム 公式百科事典 GUNDAM OFFICIALS』にも参考資料として使われ、本書の設定の記述が一部反映されている[1]。また、「ガンダムファンにとって常識化しているが作品には出てこない設定」の幾つかはこの本が出典であり[2]、一部のキャラクターも『機動戦士ガンダム ギレンの野望 ジオン独立戦争記』や『機動戦士ガンダム0079カードビルダー』などのゲームや漫画作品にも登場している。
特に、賛否両論になったのはエースパイロット達の撃墜スコアで、本書には連邦軍のスコアは自己申告制なので、ジオン軍のスコアほど信用できないと書かかれているはいるものの、両軍のエースパイロット達のMS撃墜数は地球連邦軍のMS本格配備から終戦まで2ヶ月ほどにもかかわらず100機以上を越えており、おまけに航空機などは除く数字と明記されている為、多くのファンは頭を抱えた[2]。また、連邦軍やにアムロ・レイを越える撃墜数を出したパイロットを出したことは多くのファンに衝撃を与え、一部からも反感を買った[2]。
この撃墜スコアに対して、書籍『マスターアーカイヴ 機動戦士ガンダム MSV エースパイロットの軌跡』では大戦末期に連邦軍もMSの実戦投入を開始したのが原因で、ジオン軍内で対MSエースの概念が出現、公式記録においてMSを航宙機や戦闘ポッドと同列に扱い、広義の戦闘機という意味ですべての撃墜数を合計してエースパイロットの称号を与えた一方、国民向けのプロパガンダ放送ではMSのみに絞った形で撃墜数を喧伝してMSエースとして紹介する行為も行われた。 連邦軍側は、南極条約締結以降になるとMS5機以上の撃墜者をMSエースという称号を明確に定義して認定したとし、称号を与える制度を施行した。MSという新兵器に苦戦を強いられていた状況に対し、自軍でも十分に対抗できることを証明する存在として、対MSエースをことさら強調したかったというがあるのだろうとしている。撃墜数の認定方法にも、両陣営で大きな差異があり、ジオンは厳格で、連邦は緩やかであったとしている。たとえば、ジオンの撃墜スコアの認定には僚機による証言やガンカメラの記録映像の提出が不可欠であったが、連邦軍は往々にして自己申告が検証を経ずに認められる傾向があった。これは、連邦側が開戦初期は劣勢であったのが原因で戦局が不利であればこそ英雄の存在は欠かせないというわけであった。しかし、ジオン側の撃墜スコアの認定基準も大戦末期に入ると曖昧になっていたという証言もあったとしている。なぜならば、ジオンは国民向けのプロパガンダ放送でエースパイロットを大きく取り上げてたので、ミリタリーバランスが連邦側に傾き始めた頃から、その傾向が顕著になっていった。そんな中で、トップエースとして紹介された者たちの撃墜スコアは、にわかには信じがたい数字にまで上昇していったとしている。たとえば公国軍のトップエース、ブレニフ・オグス中佐は193機のMSを撃墜したと記録されているが、この数字も疑わしいと言わざるを得ない。連邦軍によるMSの生産が本格化したのがU.C.0079年10月以降であったことを考えると、終戦までの3ヶ月弱で200機近いMSを撃墜したことになるためだ。いかに公国軍が戦力不足に悩みパイロットたちにオーバーワークを強いていたと言っても、毎日MSとの交戦の機会があったわけではあるまい。また仮に連日出撃したとしても、1日2機以上の撃墜が必要となるこのペースは、端的に言って異常である。僚機との共同撃墜を含んでいるのではないか、あるいは航宙機の撃墜数を合算しているのではないかといった異論が多いのも無理からぬことでなかろうか、とはいえ、どれだけ疑わしい点があっても両軍に多くのエースパイロットが誕生したのは紛れもない事実で、綺羅星の如き英雄達は確かに実在したのだと書かれている[3]。
後に、著者の一人である山口宏はTwitterで「もともと非公認設定本だった為、読み物として面白いかを最優先にして自由に書けた、しかし、数年後に『機動戦士ガンダム ギレンの野望』で本書の内容をそのまま使われたがために、めんどくさい事になってしまった」と語っている[4]。撃墜スコアの件に関しても、本書の著者である山口は「WW2とかを調べると、必ずしも技量=撃墜スコアではなく、出撃回数、会敵機会、敵機との性能差など、その辺も読み物重視で『そんな事実が!』というつもりで書いたものの独り歩きしちゃってますね」とTwitterで語っている[5]。
登場人物
編集本書は人物に関する設定が非常に多く、主に第二次世界大戦で活躍した軍人から名前が取られている。
登場兵器
編集地球連邦軍
編集- 宇宙艦艇
- 水上・水中艦艇
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- 対潜小型空母 ヒマラヤ型(級)
- アルバータ級ミサイル巡洋艦
- ミサイル巡洋艦 モンブラン型
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- ログウッド
- 潜水艦V型
- 攻撃型潜水艦VIII型
- 潜水母艦(艦型不明)
- 陸上艦艇
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- 陸上戦艦 ビッグ・トレー型
-
- パターン号、マルケッティア号
ジオン公国軍
編集- 宇宙艦艇
- 水中艦艇
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- 情報収集潜水艦 プローバー型
- 攻撃型潜水艦 ユーコン型
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- U-99、U-202
- 水中母艦 マッド・アングラー型
脚注
編集- ^ 『機動戦士ガンダム 公式百科事典 GUNDAM OFFICIALS』講談社、2001年3月21日初版発行、890頁。(ISBN 978-4-06-330110-6)
- ^ a b c 『ACE IN THE GUNDAM』英和出版社、2015年、51頁。ISBN 978-4865450927。
- ^ 『マスターアーカイヴ 機動戦士ガンダム MSV エースパイロットの軌跡』SBクリエイティブ、2018年、3-5頁。ISBN 978-4797397208。
- ^ @Yamayama800 (2016年9月1日). "あの本は、非公認設定本ということで、逆に自由に書けたんですが(読み物として面白いかどうかを最優先に)、そのあと『ギレンの野望』で色々とネタを使われちゃったんで、めんどくさい事になりましたね……。". X(旧Twitter)より2021年4月5日閲覧。
- ^ @Yamayama800 (2016年9月2日). "WW2とか調べると、必ずしも技量=撃墜スコアじゃないんですよね。". X(旧Twitter)より2021年4月5日閲覧。