日本語ドメイン名
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日本語ドメイン名(にほんご-めい)とは国際化ドメイン名(IDN)のうち、日本語文字(ひらがな、カタカナ、日本語漢字など)によって表現されたドメイン名である。
概要
編集2013年5月1日時点において、汎用「.jp」トップレベルドメインの約90万件の内、約12万件が日本語ドメイン名であったが、2018年3月には100万件のうちおよそ10万件と減少している[1]。
日本語ドメイン名の普及推進を担っている代表的な組織の1つとして、株式会社日本レジストリサービス(JPRS)が存在する。JPRSは日本の国別コードトップレベルドメインである「.jp」を管理するスポンサ組織である。またアジア共通の課題や方針を提案する技術チームとして、CNNIC/JPNIC/KRNIC/TWNICの共同によるJoint Engineering Team(JET)がある[2][3]。
2014年5月時点で日本語ドメイン名に公式対応しているトップレベルドメインには、「.jp/.com/.net/.cc/.tv/.asia/.biz/.tel/.ac/.co/.la/.pw/.みんな」などがある。
アクセス方法
編集対応環境とブラウザ
編集日本語ドメイン名を利用するには、利用者側の環境が国際化ドメイン名(IDN)に対応している必要がある。
Internet Explorer(IE)、Firefox、Google Chrome、Safari、Operaは、2010年時点の最新版ではすべてIDNに標準対応している[4]。ただし各ブラウザで偽キリル文字などでURLを偽装するフィッシング詐欺対策として、下記のような場合は国際化表記をせず、Punycode(「xn--」で始まる英数字とハイフン)で表記するようになっている。
- IE / Google Chrome
- 利用言語以外の文字を含む場合、複数の文字体系が混在する場合は国際化表記しない[5][6]。IEでは言語に属さない記号などを含む場合、Google Chromeでは内蔵のブラックリスト内の文字を含む場合にも国際化表記しない。
- Firefox / Opera
- 内蔵のホワイトリスト外のトップレベルドメインでは国際化表記しない[7][8]。Firefoxでは内蔵のブラックリスト内の文字を含む場合にも国際化表記しない[9]。
- Safari
- 内蔵のホワイトリスト外の文字体系を含む場合は国際化表記しない[10]。標準ではラテン文字と誤認しやすい文字を含むキリル文字、ギリシア文字、チェロキー文字がリストから除外されている。
Windows XPに標準搭載され、2011年7月時点で約9%のシェアを持つ[11]ウェブブラウザであるIE6は、IDNに対応していない。このため、IE6をIDNに対応させるためのプラグイン『i-Nav』がベリサインによって開発され、同社とJPRSによって無償配布されている。
また、対象が汎用「.jp」トップレベルドメインに限られるが、IDN非対応の携帯電話ブラウザ向けに「日本語JPアクセスサイト」がJPRSによって提供されている。
URLの入力
編集日本語ドメイン名を使用したサイトは、URLアドレスバーに通常のURLを入力する方法でアクセスできる。例えば、「日本語.jp」、または「日本語.net」と言った具合にドメイン名を入力してサイトにアクセスする。国際化ドメイン名の仕様により、処理過程で必ず「NAMEPREP」と呼ばれる正規化処理が行われるため、「ニッポン.jp」(全て半角)と入力しても「ニッポン。jp」(全て全角)と入力しても、ウェブブラウザ上で「ニッポン.jp」に変換されてサイトにリダイレクトされる[12]。
取得と管理
編集取得方法
編集日本語ドメイン名を取得するには、通常、日本語ドメイン名の登録業務を行っているドメイン名登録業者(レジストリまたはレジストラ)に有償で登録依頼をおこなう。汎用.jpトップレベルドメインにおいては、指定事業者制度が存在し、JPRSによって日本語ドメイン名対応指定事業者一覧が公開されている[13]。
背景技術と制限
編集日本語ドメイン名の下地となっている技術は国際化ドメイン名(IDN)である。ドメイン名は歴史的に英数字またはハイフンのみが使用可能であったが、この技術的制限をクリアしつつ、日本語を含む多国語ドメインを使用可能にするものとして、IDNが発案された。
入力されたURLのうち、ドメイン名部分をPunycode変換により英数字とハイフンの文字列に変換し(例:「日本語.jp」から「xn--wgv71a119e.jp」)、これをもってDNS正引きすることにより、Punycodeでドメイン名登録されたサーバへのアクセスを実現するというものが、Punycodeを用いたIDNの概要である[14]。このうち日本語を用いたIDNが特に日本語ドメイン名と呼ばれているが、他の言語でのIDNと技術規格上の違いはない。
一方で、言語特有の取り組みは管理面でなされている。ICANNのIDN実装ガイドラインでは、レジストリがIDNを言語に関連付けて登録することを定めている[15]。この取り組みはIDNを特定の言語(文字体系)に限定することで同形字(homoglyph)偽装を防ぎ、言語ごとの異体字対応も可能にするものであるが、採用言語の細則策定を含めて各レジストリの裁量に委ねており、レジストリごとに日本語への対応状況は異なる。
トップレベルドメイン | 管理組織 | 対応状況 | IANAリポジトリ登録 |
---|---|---|---|
汎用.jp | 日本レジストリサービス | 対応表明あり[16] | あり |
.com/.net .name/.cc/.tv |
ベリサイン | .com/.net/.cc/.tvでは対応表明あり[17] | あり(.com/.net/.name) |
.asia | DotAsia Organisation | 対応表明あり[18] | あり |
.biz | NeuLevel | 対応表明あり[19] | あり |
.info | Afilias | 対応表明なし[20] | |
.museum | Museum Domain Management Association | 対応予定[21] | |
.org | Public Interest Registry | 対応表明なし[22] | |
.tel | Telnic Limited | 対応表明あり[23] | あり |
.ac/.sh/.io/.tm | Internet Computer Bureau | 本国では対応表明なし[24] 日本事務所で.acを受付 |
|
.co | .CO Internet S.A.S. | 対応表明あり[25] | あり |
.la | LA Names/CentralNic | CentralNicでは対応表明あり[26] | |
.pw | PW Registry | 対応表明あり[27] | |
.to | Tonga Network Information Center | 未定[28] |
2003年から2004年にかけては文字符号化形式のRACEからPunycodeへの移行や、前述のIDN実装ガイドラインの成立といった仕様の転換が重なり、「.org」トップレベルドメインを管理するレジストリであるPublic Interest Registryが、旧仕様で登録された日本語ドメイン名を含むすべてのIDNを抹消すると発表したこともある[29]。この抹消はのちに撤回されたが、2013年5月現在でもPublic Interest Registryは日本語ドメイン名を新規受付していない。
脚注
編集- ^ “JPドメイン名の登録数(累計)の推移”. 株式会社日本レジストリサービス. 2018年8月28日閲覧。
- ^ “インターネット 歴史の一幕:国際化ドメイン名の標準化 - JPNIC”. 日本ネットワークインフォメーションセンター. 2018年8月28日閲覧。
- ^ “ドメイン名の歴史(日本語JPドメイン名 - 導入の背景とその経緯 -)”. 株式会社日本レジストリサービス. 2018年8月28日閲覧。
- ^ 日本語.jp 「対応環境について」2010年3月19日閲覧
- ^ マイクロソフト「Internet Explorer 7 での国際ドメイン名のサポート」2006年3月16日
- ^ The Chromium Projects 'IDN in Google Chrome' 2013年6月2日閲覧
- ^ mozilla.org 'IDN-enabled TLDs' 2010年3月18日閲覧
- ^ Opera Software 'Advisory: Internationalized domain names (IDN) can be used for spoofing.' 2005年2月25日
- ^ Bugzilla 'Bug 283016 - Make it possible to blacklist characters in domain names' 2005年2月21日
- ^ アップル「Safari の国際化ドメイン名のサポートについて」2008年10月4日
- ^ Net Application 'Browser Version Market Share' 2011年8月8日閲覧
- ^ JPNIC「国際化ドメイン名」2010年3月18日閲覧
- ^ JPRS「指定事業者制度」2008年7月22日閲覧
- ^ @IT「いますぐ使える国際化ドメイン名の理論と実践」2003年2月11日
- ^ JPRS「国際化ドメイン名(IDN)を言語に関連付けて登録するためのガイドラインがRFC化」2004年4月15日、JPNIC「IDN-AdminガイドラインがInformational RFC(RFC3743)として発行」2004年4月19日
- ^ JPRS「JPRSがRFC準拠の日本語JPドメイン名登録管理サービスを本日より開始」2003年7月10日
- ^ ベリサイン '国際化ドメイン名' 2013年5月28日閲覧
- ^ DotAsia Organisation 'DotAsia Announces the launch of .Asia Internationalized Domain Name (IDN) for the Global Chinese, Japanese and Korean Internet Community' 2013年5月28日閲覧
- ^ NeuStar 'NeuStar Launches Chinese and Japanese Language Domain Names In .BIZ TLD' 2007年3月22日(インターネットアーカイブ)、NeuLevel 'International Domain Names (IDN) Language Support Guide' 2013年5月29日閲覧
- ^ Afilias 'Internationalized Domain Names' 2013年5月28日閲覧
- ^ Museum Domain Management Association 'Supported scripts and languages' 2013年5月29日閲覧
- ^ Public Interest Registry 'Internationalized Domain Name (IDN) Questions' 2013年5月29日閲覧
- ^ Telnic Limited 'IDN.tel Archived 2011年8月24日, at WebCite' 2013年5月28日閲覧
- ^ NIC.AC 'IDN Code Points Policy for the .AC Top Level Domain'、NIC.SH 'IDN Code Points Policy for the .SH Top Level Domain Archived 2014年9月25日, at the Wayback Machine.'、NIC.IO 'IDN Code Points Policy for the .IO Top Level Domain Archived 2005年12月18日, at the Wayback Machine.'、NIC.TM 'IDN Code Points Policy for the .TM Top Level Domain'、2013年5月29日閲覧
- ^ .CO Internet '.CO Registry Announces the Global Launch of Asian Internationalized Domain Names' 2013年5月28日閲覧
- ^ CentralNic 'Internationalised Domain Names (IDNs)' 2013年5月29日閲覧
- ^ PW Registry 'Introducing .PW' 2013年5月28日閲覧
- ^ TonicJapan「日本語ドメインついて」2013年5月29日閲覧
- ^ Internet Watch「PIRが“日本語.org”を一斉抹消と告知、国内レジストラは反発」2004年1月13日、Internet Watch「PIR、“日本語.org”などIDNの一斉抹消は中止へ」2004年1月19日、マイコミジャーナル「日本語ドメインは今、どうなっているのか」2004年2月18日
外部リンク
編集- 日本語.jp - 株式会社日本レジストリサービス