新之助
新之助(しんのすけ)は、2017年(平成29年)に一般発売が開始されたイネ(稲)の品種[1]。「北陸190号」と「新潟75号」の交配によって育成された[2]。新潟県における2017年(平成29年)産の産地品種銘柄(選択銘柄)になっている[1]。品種名は、「新しい」と「新潟」の「新」に、現代的でスタイリッシュな日本男児をイメージして付けられた[2]。
新之助 | |
---|---|
属 | イネ属 Oryza |
種 | イネ O. sativa |
交配 | 北陸190号×新潟75号 |
亜種 | ジャポニカ O. s. subsp. japonica |
品種 | 新之助 |
開発 | 新潟県農業総合研究所 |
概要
編集新潟県の「米研究120周年」を記念する晩生品種である。新潟県全体の高温障害・気象災害のリスクと収穫作業の分散で、晩生品種として「新之助」が開発された。中生品種は「コシヒカリBL」、早生品種は「こしいぶき」(2000年に品種開発)である。熟期は晩生で、「コシヒカリ」と比べると1週間程度収穫時期が遅くなる[1]。開発途中の2010年(平成22年)の猛暑では、高温に強い性質が実証された。コシヒカリBLよりも茎が太く、10センチほど短く、風で倒れにくい。
品種特性
編集粒は大粒[1]。日本穀物検定協会[3]の食味官能試験では、新潟コシヒカリと同レベルでタンパク質が低く適度なアミロース含有である。表層は硬めで、しっかりした粒感と「粘り」が両立している。味覚センサーによる分析では、コクや甘み、味の厚みに特徴があるとする結果が出ている[2]。長期貯蔵でも脂肪酸度が低く古米化の品質劣化がしにくく、比較的美味しさを保つのが特徴である[4][2]。炊飯米は、比較的硬めでしっかりとした粒感がありつつも粘りも強く、「コシヒカリ」とはまた違った良食味となっており、炊飯後も固くなりにくい[2]。
食味官能評価値 | 味度メーター[5] | 千粒重(g) | タンパク質(%) | 整粒歩合 |
---|---|---|---|---|
0.55 | 87.8 | 23.6 | 6.3以下 | 70% |
年度 | 生産量(トン) |
---|---|
2015年(平成27年) | 50 |
2016年(平成28年) | 500 |
2017年(平成29年) | 10,000程度 |
「新之助」の食味値を上げる三要素(タンパク質・アミロース・脂肪酸度)が低めになる品種特性と共に「米食味コンクール」でも上位を占めると期待される[6][7]。 山形県の「つや姫」については、「タンパク質」6.4 %以下[8][9]、「食味官能評価値」0.5強の数値である[10]。
- 食味官能評価値(日本穀物検定協会)
新之助 |
---|
0.55 |
- たんぱく質(%)
魚沼コシヒカリ | 米山プリンセス | 新之助 | いちほまれ (越南291号) |
つや姫 | ゆめぴりか |
---|---|---|---|---|---|
6.0以下 | 6.0以下 | 6.3以下 | 6.4以下 | 6.4以下 | 6.8以下[11][12][13] |
- 交配系譜[14]
どんとこい[15][16][17] | 南海129号 | どまんなか | キヌヒカリ | ||||||||||||||||||||||||||
北陸190号 | 新潟75号 | ||||||||||||||||||||||||||||
新之助 | |||||||||||||||||||||||||||||
パッケージ
編集紅白幕をイメージした色合いに、「助」の文字を水引をイメージして表現したロゴが配されている[2]。ロゴは上下で対となったデザインになっている[2]。全体的に「めでたさと期待」を表現し、「ハレの日のお米」としての特別感を演出している[2]。
経過
編集- 2008年(平成20年) - 晩生品種として、新潟県農業総合研究所[18]で研究を開始。20万株から選抜し、最初の選定基準は米の食味と相関する「炊飯時の米の輝き」である。
- 2015年(平成27年) - 9月24日、新潟県が、品種名を「新之助」と発表[19][20]。輸出を視野に中国で商標登録を申請[21][22]。
- 2016年(平成28年)
- 2017年(平成29年)8月23日 - JA全農新潟県本部のJA仮渡し金(60キロ当たり)が魚沼コシヒカリと同額の1万7200円と判明[26]。
- 2018年(平成30年)11月21日 - 日経トレンディ主催の「米のヒット甲子園2018」で、大賞米を受賞[27]。
脚註
編集- ^ a b c d 日本食糧新聞社 編 2018, p. 65.
- ^ a b c d e f g h 日本食糧新聞社 編 2018, p. 66.
- ^ “食味評価試験”. 日本穀物検定協会. 2016年12月16日閲覧。
- ^ “特集2 新潟の新しいお米「新之助」のデビューに向けて”. 2016年12月15日閲覧。
- ^ “トーヨー味度メーター”. 東洋ライス. 2016年12月15日閲覧。
- ^ “粒感と粘り、「ポストこしひかり」が決定…福井”. 読売新聞 (2016年12月3日). 2016年12月15日閲覧。
- ^ “ポストこしひかり決定、評価日本一 全国のブランド米超える自信作”. goo (2016年12月3日). 2016年12月15日閲覧。
- ^ “山形のブランド米「つや姫」”. 全国農業協同組合連合会 山形県本部(JA全農山形). 2016年12月15日閲覧。
- ^ “山形つや姫ブランド化戦略推進本部「つや姫」生産者認定制度実施要綱”. 2016年12月15日閲覧。
- ^ “評価日本一の「すごいコメ」誕生 「つや姫」や「新之助」上回る”. 福井新聞 (2016年12月3日). 2018年11月28日閲覧。
- ^ “平成24 年「ゆめぴりか」作付け生産者の皆様へ”. 北海道米の新たなブランド形成協議会. 2017年8月19日閲覧。
- ^ “「ゆめぴりか」栽培マニュアル”. 北海道米の新たなブランド形成協議会. 2017年8月19日閲覧。
- ^ “「ゆめぴりか」をどのように作りこなすか!”. ながぬまクリーンライス生産組合ゆめぴりか部会. 2017年8月19日閲覧。
- ^ “開発ストーリー”. 新潟県. 2016年12月19日閲覧。
- ^ “「どんとこい」は多肥条件でも食味の低下が少ない”. 農業・食品産業技術総合研究機構. 2016年12月19日閲覧。
- ^ “どんとこい(普通栽培・中生)”. 日本穀物検定協会. 2016年12月19日閲覧。
- ^ “どんとこい”. お米ガイド. 2016年12月19日閲覧。
- ^ “農業総合研究所”. 新潟県. 2016年12月15日閲覧。
- ^ “新しいお米は「新之助」 新潟県が開発、NGTも応援”. YouTube (2015年9月24日). 2016年12月15日閲覧。
- ^ “新潟の新しいお米の名前は「新之助(しんのすけ)」です。”. 新之助 特設サイト (2015年9月24日). 2020年10月10日閲覧。
- ^ “中国商標局のデータベース(中国商標網)による商標検索マニュアル”. JETRO北京. 2016年12月19日閲覧。
- ^ “中华人民共和国国家工商行政管理总局”. 中華人民共和国国家知識産権局. 2016年12月19日閲覧。
- ^ “新潟県の水稲の奨励品種等(平成28年6月30日現在)”. 新潟県農林水産部 農産園芸課 (2016年6月30日). 2018年7月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年12月15日閲覧。
- ^ “新潟の新ブランド米「新之助」試験販売始まる 競合に懸念の声も”. 産經新聞 (2016年10月6日). 2016年12月15日閲覧。
- ^ “【キラリ甲信越】新潟ブランド米「新之助」料亭などで高評価 全国へ浸透図る”. 産經新聞 (2016年12月16日). 2016年12月16日閲覧。
- ^ “一般、岩船、佐渡200〜400円増17年産コシ仮渡し金 魚沼据え置き”. 新潟日報 (2016年12月16日). 2017年8月25日閲覧。
- ^ “米のヒット甲子園2018、大賞に新潟県・長岡産の「新之助」が輝く“日本の米”と海外に誇れる点も評価”. 日経トレンディ (2018年11月22日). 2018年11月28日閲覧。
参考文献
編集- 日本食糧新聞社 編『全国お米のこだわり銘柄事典』日本食糧新聞社、2018年4月18日。ISBN 9784889272666。
関連項目
編集外部リンク
編集- 新之助 公式ホームページ
- 新潟の新しい米「新之助」 (shinnosuke.niigata) - Facebook
- 新潟の新しいお米「新之助」【公式】- Twitter
- 新潟の新しいお米「新之助」- Instagram
- 新潟米図鑑vol.2〜新潟の銘柄米ガイドブック〜 - 新潟県農林水産部 食品・流通課
- 新之助関係成果 - 新潟県農業総合研究所 作物研究センター
- 新之助誕生秘話 - 全国米穀販売事業共済協同組合
- 日経ビジネス コメどころ・新潟が執念で作った「次世代米」
- 日経トレンディ “世界のNIIGATA”の自信作、「新之助」のお味は? 20万株から選ばれた新品種 - ウェイバックマシン(2016年10月20日アーカイブ分)
- 日経トレンディ ポストコシヒカリ! お米の戦国時代を制する品種は? - ウェイバックマシン(2016年10月5日アーカイブ分)