教訓主義
教訓主義(きょうくんしゅぎ、ダイダクティシズム、Didacticism)とは、文学その他の芸術の中で、教育的で有益な特質を強調する芸術観のこと。詩であれば教訓詩(didactic poetry)、戯曲であれば教訓劇(didactic play)。
概略
編集教訓主義芸術は本質的にエンターテインメントや芸術家の個人的な目標の追求を許さない。
批評とアドバイスを列挙したアレキサンダー・ポープの『批評論』(An Essay on Criticism, 1711年出版)はその一例といえる。
「didactic(教訓的)」という語は、有益で事実に基づく(かつ/もしくはその他の)教育的情報を詰め込みすぎたテキスト(ならびにその延長として映画やテレビのようなメディア)、時には読者(視聴者)の楽しみを損なうもの指すこともある。対義語は「non-didactic(非教訓的)」である。もし作者がメッセージの伝達以上に芸術的な特質や技巧を大事だと考えたら、たとえその作品が教育的に有益なものでも、「non-didactic」と見なされる。
最良の詩のほとんどすべて教訓的だとする意見もあった。それに対して、エドガー・アラン・ポーは『詩の原理』(The Poetic Principle, 1850年出版)の中で、教訓主義を「異端」の最たるものと呼んでいる。
教訓主義といわれる作品の一覧
編集- ヘーシオドス『仕事と日』(紀元前700年頃)
- ルクレティウス・カルス『物の本質について』(De rerum natura, 紀元前1世紀)
- ウェルギリウス『農耕詩』(Georgics, 紀元前29年)
- ジャータカ(5世紀)
- ジョン・バニヤン『天路歴程』(1678年)
- 作者不詳『靴ふたつさん』(The History of Little Goody Two-Shoes, 1765年)
- Ignacy Krasicki『The Adventures of Mr. Nicholas Wisdom』(1776年)
- パーシー・ビッシュ・シェリー『女王マッブ』(Queen Mab, 1813年)
- アイン・ランド『肩をすくめるアトラス』(1957年)
- ヨースタイン・ゴルデル『ソフィーの世界』(1991年)
教訓劇は道徳またはテーマの使用を通して観客に教える。
音楽における教訓主義には、グイード・ダレッツォがソルフェージュの音名(solfège syllables)を教えるために使った『聖ヨハネ賛歌』がある。