政見放送削除事件
政見放送削除事件(せいけんほうそうさくじょじけん)は、1983年の第13回参議院議員通常選挙において、雑民党の政見放送の内容の一部を、日本放送協会(NHK)が候補者に無断で削除、放送した事件。
最高裁判所判例 | |
---|---|
事件名 | 損害賠償請求事件 |
事件番号 | 昭和61年(オ)第800号 |
1990年(平成2年)4月17日 | |
判例集 | 民集44巻3号547頁 |
裁判要旨 | |
| |
第三小法廷 | |
裁判長 | 安岡満彦 |
陪席裁判官 | 坂上壽夫、貞家克己、園部逸夫 |
意見 | |
多数意見 | 安岡満彦、坂上壽夫、貞家克己 |
意見 | 園部逸夫 |
反対意見 | なし |
参照法条 | |
民法709条、公職選挙法150条1項、公職選挙法150条の2 |
事件概要
編集当該政見放送中、雑民党党首の東郷健は、視覚障害者の竜鉄也や、足の不自由な八代英太らと協力して「太陽はいらない」というコンサートを挙行した時のエピソードとして、「『メカンチ [注釈 1]、チンバ [注釈 2]の切符なんか、だれが買うかいな』と言われて、あまり売れませんでした。このような差別がある限り、この世に幸福はありません」と主張した。
NHKは、この「メカンチ、チンバ」を差別用語で放送禁止用語に当ると判断し、自治省に照会し違法ではないとの言質を得た上で、東郷に無断で放送時に当該部分の音声を削除した。東郷はNHKの編集行為を公職選挙法違反として損害賠償請求した。
東京地裁の一審判決では東郷の主張を認めたが、東京高裁で逆転敗訴、最高裁は「差別用語を使用した点で、他人の名誉を傷つけ善良な風俗を害する」として削除を正当とし、原告の敗訴が確定した。
ちなみに、この放送内での別所において「メカンチやチンバのある身障者とか、そういう差別されている人たちと手をつなぎたい」と発言しているが、この部分に関しては削除されていない。
なお雑民党は次の第14回参議院議員通常選挙(1986年)において、東京都選挙区にろう者の渡辺完一を擁立した。この際の無音放送が再び問題化し(TBSラジオが報道特番『無言の政見放送』としてとりあげた[1])、参議院の政見放送に手話通訳が導入される直接の契機になった。
その後の政見放送削除
編集2016年および2020年の東京都知事選挙では、出馬した後藤輝樹が政見放送収録中に性的表現などを連発した。このため実際の放送では、開始前に「公職選挙法第150条の2の規定をふまえ音声を一部削除しています」との断りの上で、音声の一部を削除(無音化)した上で放送された[2][3][4]。
脚注
編集注釈
編集出典
編集- ^ TBSラジオ開局70周年を記念して、2021年12月より1ヶ月間Youtube上で配信される。https://m.youtube.com/watch?v=PS0YiN08eVI
- ^ 不適切発言連発か 都知事選NHK政見放送で謎の"音声消去" 日刊ゲンダイ 2016年7月26日
- ^ NHKの政見放送で音声カットの嵐 その理由とは【都知事選】 - ハフポスト日本版、2016年7月28日
- ^ 後藤輝樹氏が「政見放送」で過激発言を連発、何を言っても許されるの? 都知事選弁護士ドットコム2020年6月28日