野党
野党(やとう)とは、「政府から離れた在野の政党」を意味する[1]。政権・内閣・行政を担わない政党のことであり、それを担う与党と対峙する[1]。
概要
編集明治期に、吏党・民党がそれぞれ必ずしも「親政府」・「反政府」を意味するものではなくなっていったため、次第にこれに代わって「与党」・「野党」という言葉が用いられるようになった。
単純小選挙区制の議会においては、デュヴェルジェの法則に従って二大候補が形成される傾向にあり、従って議会を占める政党は二大政党制がとられることになる。このような場合には政権の奪取に失敗した野党も未来の政府を構成する可能性が高く、公的な性格を帯びると認識される。
より比例代表制に重点をおいた選挙システムにおいては、複数の野党が形成される。このような多数野党は世界の一般である。
長期に渡って単一の党派による支配が続いている組織化の進んだ民主政体(一党優位政党制)においては、野党が名目・形式・体裁だけの平等主義に弱体化され、ゲリマンダーによって野党に不利な選挙システムを構築される場合がある。
公式野党
編集イギリスなどウェストミンスター・システムに基づいた議院内閣制の諸国においては、野党第一党に「国王陛下の野党」(Her Majesty's Loyal Opposition)、または「公式野党」(Official Opposition)と呼ばれる公式な地位が与えられ、その党首にも同時に「野党指導者(Leader of the Opposition)」の称号が与えられて特別な歳費も支給されることがある。
この場合、野党第一党の党首らは、公式な制度として影の内閣を組織する事例が多い。
日本の国政野党
編集※令和6年(2024年)10月28日現在
野党の議席数 | |
---|---|
衆議院議席数 |
250 / 465 (54%) |
参議院議席数 |
91 / 248 (37%) |
主な野党共闘
編集野党第一党
編集「野党第一党」とは政権与党に次ぐ議席数を持っている野党、つまり野党の中で最も多くの議席を持つ政党である、2024年6月20日現在、日本では野党最大議席を持つ政党は立憲民主党である。また、同じように野党の中で2番目に議席を持つ政党を「野党第二党」、3番目は「野党第三党」とも言う。
野党第一党は基本的に「選挙区内で一番(与党候補へ)勝てそうな野党候補」であるため、政権与党に対するお灸票という「どの政党も支持していないが、与党に不満の意思を示したい層」からの懲罰的投票行動による票が集まりやすい[2][3][4]。他にも「お灸」の例として、野党など他党への投票することもせずに、「投票に行かない」という懲罰的投票行動もある[5]。
ゆ党
編集「ゆ党」(ゆとう)とは、野党の中で、政権・与党に対して「是々非々の立場を取る政党」を、「(政権・与党へ)対立的な姿勢をとる政党(や党)」と区別する際に用いられる[6][7][8][9][10] 。
「ゆ」は五十音順では「や」と「よ」の間にある文字であり、すなわち「野党(や党)」と「与党(よ党)」の間に位置するという意味である。確認されている中での初出としては、1994年の週刊文春で竹下登(自民党)と赤松広隆(社会党の当時前書記長)による「小沢・細川クンにモノ申す」にて、1993年の細川連立政権発足により自民党が初めて野党となった時、自民党に対して「与党が野党になるのは大変だが、自民党は『ゆ党』になる」と言う意見があったと記されている。竹下自身は「(野党となった)自民党は政権の重みを知っているので、『与党(細川連立政権)はけしからん』だけではダメだ」という意味で捉えたと明かしている[9]。ただ、この用語は主に反与党の立場を取る人物・団体が「ゆ党」たる立場の団体に対して、批判的に使用することが多く、その際には若干の軽蔑のニュアンスが含まれることが多い。
1996年(平成8年)に第1次橋本内閣での連立与党の社民党と新党さきがけの所属議員が離党し、新党さきがけの鳩山由紀夫と菅直人の両頭体制で発足した旧民主党が結党された。社民党から当時の国会議員の約半数の35人、さきがけからは15人が参加、山花貞夫・海江田万里らの市民リーグは解党して、所属議員5人全員が参加、新進党からは鳩山邦夫が参加した。計57人の新党が誕生した。彼らが新党結成させた主な理由は自民党と新進党(当時の野党第一党,右派政党)以外の政党が埋没していた状態からの脱却が目的であったため、「(当時の)橋本龍太郎内閣(自社さ連立政権)そのものとの対立」ではなかった。このことから内閣に対する姿勢・野党第一党である新進党との距離が曖昧であり、旧民主党に対して、ゆ党という表現が使われた[11]。
2016年(平成28年)1月には衆議院本会議の代表質問において、おおさか維新の会が「私たちは与党でもない野党でもない」と述べた。民主党がこの発言を問題視し、維新および当時友好関係にあった改革結集の会[12]の2党は野党ではなく「ゆ党」であると主張し、衆院予算委員会で野党の質問時間に含めない考えを示し、最終的に与野党が2党に時間を譲り合う“ゆ党”扱いとなった[13]。これに対し維新は「政権に参加していない党は野党だ」と主張し、抗議として与党からの配分時間のみを返上したうえで予算委員会を欠席する事態となった[14]。2021年時点で維新の会と国民民主党の2党が政権与党へ明確な対決姿勢ではなく、是々非々の立場を取る立場であり、「ゆ党」と報道されている[10][6]。2021年の衆院選でも野党当選者のうちの3の1が「ゆ党」である維新の会と国民民主党が占めたように躍進している[6]。
世論調査
編集2024年11月の衆院選で最も議席の割合を伸ばしたのは国民民主党であり[15]、議席数は4倍となった[16]。前回の世論調査から、支持率は8倍増の10.1%となり、更には国民民主党は野党内で2位の支持率になり、野党第一党の立憲民主党との支持率差は3.6%差まで縮まった上に、20代の支持最多政党・30代で自民党に次ぐ支持政党となった。国民民主党の「ゆ党」姿勢への支持率も65%であった(国民民主党支持の83.9%、自民党支持の63.2%、立憲民主党支持の51.1%)[15]。同月の読売新聞の世論調査でも、自民・公明党連立政権と国民民主党の部分連合(野党のまま個別政策では連立政権へ協力)への「賛成」が66%となった[17]。2024年11月11-12日にかけての世論調査で政党支持率は、自民党が30%(前回25%)、無党派層が30%(同31%)、立憲民主党が11%(同14%)、国民民主党が10%(同7%)、れいわ新選組が4%(同4%)、日本維新の会が3%(同5%)、公明党が3%(同4%)、共産党が2%(同3%)であった。国民民主党と野党第一党の立憲民主党の支持率差が1%差まで縮まった[18]。躍進した背景には、自民党・立憲民主党の双方を支持しない有権者層の受け皿となったことにある[16]。
現在「ゆ党」と呼ばれている政党
編集現存する政党で過去に「ゆ党」と呼ばれていた政党
編集過去に存在した政党で「ゆ党」とされた事例
編集脚注
編集- ^ a b なるほどヒヨコ:与党と野党の違いは?. 毎日新聞(2019年5月16日) . 2024年6月20日閲覧。
- ^ “若年層で支持を集める「国民民主党」支持層が離れていった「自民党」 有権者の投票行動を分析【衆院選2024】 | TBS NEWS DIG (2ページ)”. TBS NEWS DIG (2024年10月28日). 2024年11月13日閲覧。
- ^ “国際問題 外交問題 国際政治|e-論壇「議論百出」”. www.gfj.jp. 2024年11月13日閲覧。
- ^ “自民58議席減・自公で過半数割れの衝撃!政治評論家・野上忠興氏が予想【表あり】=衆院選公示(日刊ゲンダイDIGITAL)”. Yahoo!ニュース. 2024年11月13日閲覧。
- ^ “衆院選「自公惨敗」池上彰の見解は?「支持者のお灸のすえかた」「泣き落としの本性は」…“池上無双” 本誌に降臨(SmartFLASH)”. Yahoo!ニュース. 2024年11月13日閲覧。
- ^ a b c “「ゆ党」の台頭【森島 賢・正義派の農政論】”. コラム. 2024年11月13日閲覧。
- ^ ゆ党とは - コトバンク(2012年12月25日閲覧)
- ^ “新党きづな 各党あいさつ回り 「ゆ党」目指すも前途多難”. 産経新聞. (2012年1月19日) 2012年12月25日閲覧。
- ^ a b 竹下登・赤松広隆「小沢・細川クンにモノ申す」『文藝春秋』1994年4月号 168ページ
- ^ a b “維新と国民、第三極「ゆ党」の行方は:中日新聞Web”. 中日新聞Web. 2024年11月13日閲覧。
- ^ 後藤謙次『ドキュメント 平成政治史 1 崩壊する55年体制』岩波書店、2014年4月17日。ISBN 978-4000281676。p. 363–365
- ^ “おおさか維新と改革結集、政策協議会設置で合意”. 産経新聞. (2016年2月10日) 2020年2月5日閲覧。
- ^ “おおさか維新は「ゆ党」? 衆院予算委の質問時間めぐり与野党紛糾”. 産経新聞. (2016年1月7日) 2020年2月5日閲覧。
- ^ “【衆院予算委】おおさか維新「民主がいじめ」 予算委を欠席 「ゆ党」への質問時間「削減」に抗議 ”. 産経新聞. (2016年1月8日) 2020年2月5日閲覧。
- ^ a b “国民民主党の支持率8倍増で10.1%に…20代の支持最多で与党と野党の間“ゆ党”姿勢への期待65%【FNN世論調査】|FNNプライムオンライン”. FNNプライムオンライン (2024年11月5日). 2024年11月13日閲覧。
- ^ a b “衆院選で議席4倍、国民民主なぜ躍進? 自民・立民避ける有権者の受け皿に:中日新聞Web”. 中日新聞Web. 2024年11月13日閲覧。
- ^ “自民、公明党と国民民主党の部分連合に「賛成」66%…読売世論調査”. 読売新聞オンライン (2024年11月12日). 2024年11月13日閲覧。
- ^ “石破内閣支持率43%、前回調査から上昇…読売世論調査”. 読売新聞オンライン (2024年11月12日). 2024年11月13日閲覧。
- ^ a b 維新と国民、第三極「ゆ党」の行方は(中日新聞)