捷水路
捷水路(しょうすいろ、英語: cut-off channel)は河川の蛇行部分を短縮する水路のことである。ショートカット(英: short-cut)ともいう。
概要
編集河川が蛇行する部分においては当然ながら直線的な部分と比較して流速は低下する。主に洪水対策のために河川を改良する際、これを直線的に短絡することによって、流速を高めることによるものが行われる。この際に建築が行われる水路のことを捷水路という。蛇行切断(英: cut-off)と関連した水路であり、蛇行切断の効果の多くはこの捷水路によってもたらされるものである。
市川 & 石川 (2014)はこの建築の前段階として行われる模型実験において、それぞれの河川状況による影響と一般的に捷水路における特性を分類するために実験的研究を行った。これによると分流が始まる上流側においては、その対岸に砂州が形成され、合流する下流側においても堆積が進行するという予測がなされた[1]。
効果
編集捷水路は河川の蛇行部を短絡するため、平時はもとより洪水時に流下能力[注釈 1]を向上させることが可能である[3]。
北海道の石狩川流域においては、1879年から1909年の間に計34回の氾濫が発生しており、1910年から捷水路を用いた河道の短縮を行った。この結果、平水位・洪水位共に低下したほか、広義の氾濫原の縮小をもたらした[4]。
このような利点を持つ捷水路であるが、流下能力を向上させるものであるため、河川環境を変化させる可能性が指摘されている。清野 & 宇多 (2002)は大分県の八坂川の捷水路工事が2000年に行われたことと関連し、生物相の単調化の影響が予測され、さらに流入している守江湾のカブトガニ産卵地が流出する可能性を指摘した[5]。
例
編集ここでは代表的な捷水路の例を示す。
注釈
編集脚注
編集- ^ 市川誠、石川忠晴「捷水路が設置された湾曲河道区間の水理特性に関する実験的研究」『土木学会論文集B1』第70巻第4号、土木学会、2014年、I_727-I_732、doi:10.2208/jscejhe.70.I_727、ISSN 1880-8751、NAID 130005070159、2020年10月21日閲覧。
- ^ “流下能力”. 国土技術政策総合研究所. 2020年8月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年10月21日閲覧。
- ^ a b 古川厳水, 長坂丈巨, 吉川勝秀「湖沼の遊水機能を生かした治水対策に対する経済効果:都市化の著しい印旛沼流域における実証的検討」『建設マネジメント研究論文集』第15号、土木学会、2008年、41-50頁、doi:10.2208/procm.15.41、NAID 130003821549。
- ^ 品川守、舘谷清、山口甲「捷水路による洪水氾濫と洪水流の変化」『水工学論文集』第36巻、1992年、305-310頁、doi:10.2208/prohe.36.305、ISSN 1884-9172、NAID 130004041916、2020年10月21日閲覧。
- ^ 清野聡子; 宇多高明 (2002-02-22). “稀少生物カブトガニの生息地としての大分県守江湾干潟における環境変遷とその修復”. 沿岸海洋研究 39 (2): 117-124. doi:10.32142/engankaiyo.39.2_117. ISSN 2434-4036. NAID 110007999261. NDLJP:10577939 2020年10月21日閲覧。.
- ^ “北海道初の本格的治水事業「生振捷水路」”. 日本の土木遺産. 建築コンサルタンツ協会 (2005年). 2020年2月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年10月21日閲覧。
- ^ “生振捷水路”. 石狩ファイル. 石狩市 (2006年3月31日). 2020年7月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年10月21日閲覧。