抑速ブレーキ(よくそくブレーキ)とは、列車車両を完全に止める「停止ブレーキ」に対し、速度を一定以下に抑えるためのブレーキのことをいい、文献によっては「勾配抑速ブレーキ」のことをいう。「ブレーキ」というが、操作はブレーキハンドルではなくマスコンハンドルで行う(一部、ブレーキハンドルで抑速ブレーキをかける車両も存在する)。

下り坂でブレーキを連続使用した場合、車輪ディスクを物理的に押さえる「摩擦ブレーキ」では摩擦による熱が蓄積し、フェード現象によってブレーキ力が低下したり、ベーパーロック現象でブレーキが全く効かなくなったりするため、「非摩擦ブレーキシステム」を使用する。

主なものとして、電車電気機関車といった電気車では、モーター発電機として使用し、発生した電力を車載の抵抗器熱エネルギーに変換してブレーキ力を得る発電ブレーキ、同じく発生した電力を架線に戻して他車がその電力を使用したり、自車の蓄電池に蓄えることでブレーキ力を得る回生ブレーキが使用される[1]

気動車ディーゼルエンジンを動力源とする大型トラックバスでは、排気管を塞ぎ、その際に発生する圧力で回転を抑制してブレーキ力を得る排気ブレーキ流体抵抗を利用するコンバータブレーキ・流体式リターダーが装備されている。

1990年代までの抑速ブレーキは多くがワンハンドルマスコンでは使用できなかった。近畿日本鉄道南海電気鉄道でワンハンドルマスコンを採用しないのにはこの抑速ブレーキが一部車両に搭載されており、部品を統一した方が安上がりになるのが理由である。技術の進歩によりJRではE233系電車313系電車など、ワンハンドルでも抑速ブレーキを採用した車両も登場している。

脚注

編集
  1. ^ リニアモーター使用の場合も、同様に電気ブレーキが使用される。例えば愛知高速交通東部丘陵線(リニモ)100形は、60‰超の勾配が随所に存在するため、抑速ブレーキが使用される。