憲法義解
『憲法義解』(けんぽうぎげ、けんぽうぎかい)[1][2]は、伊藤博文著の形をとる大日本帝国憲法及び(旧)皇室典範の逐条解説書。帝国憲法のみならず、明治期の日本の思想を知る上で重要な資料である。
『憲法義解』 (けんぽうぎげ、けんぽうぎかい) 『大日本帝國憲法義解』 | ||
---|---|---|
著者 | 伊藤博文 | |
訳者 | 伊東巳代治、沈紘、平島及平 | |
発行日 | 1889年(明治22年)4月24日 | |
発行元 | 国家学会 | |
言語 | 日本 | |
ページ数 | 114 | |
公式サイト | www.iwanami.co.jp | |
コード | ISBN 978-4-00-331119-6 | |
ウィキポータル 法学 | ||
|
沿革
編集伊藤博文は井上毅・伊東巳代治・金子堅太郎とともに憲法起草に取り組み、1888年(明治21年)憲法案と皇室典範案を完成させた。この頃、各条文に解説を加える説明書を井上毅が作成した。同年、両法案を枢密院で審議する際、この説明書を「憲法説明」・「皇室典範説明」と題して各顧問官に配布し、法案審議の参考に宛てた。その後、井上毅がこの説明書を出版することを提案し、稿本を作成した。1889年(明治22年)2月11日に憲法と皇室典範が制定された後、起草者たちと法学者数名が稿本を共同で審査し若干修正した。こうして完成した説明書は『大日本帝国憲法義解』・『皇室典範義解』と題された。このうち『大日本帝国憲法義解』は伊東巳代治によって英訳された。この英訳は欧米の学者たちに寄贈され、金子堅太郎が欧米に赴いて批評を聞いて回った。
『大日本帝国憲法義解』・『皇室典範義解』は公刊の際に、伊藤博文の私著という形で、その版権を国家学会に寄贈した。国家学会は1889年(明治22年)4月24日『大日本帝国義解』と『皇室典範義解』を別々に印刷して関係者に配布し、6月1日、両義解を合わせて『帝国憲法皇室典範義解』として公刊した。英訳本(Commentaries on the constitution of the empire of Japan)は版権を与えられた英吉利法律学校(現中央大学)が6月23日に出版した。
その後、『帝国憲法皇室典範義解』は版を重ね、1935年(昭和10年)の増補版からは本の背中に「憲法義解」の文字を入れた。宮沢俊義が校訂して岩波文庫で出版(1940年(昭和15年)、度々復刊)した際に、題名を『憲法義解』のみとした。2019年(令和元年)に岩波文庫の改版が出版された[3]。
脚注
編集書誌情報
編集原著
編集- 伊藤博文『帝国憲法義解』国家学会、1889年4月24日。NDLJP:789171。
- 伊藤博文『帝国憲法皇室典範義解』(5版)丸善、1889年6月1日。NDLJP:994279。 - 国家学会蔵版。
- 伊藤博文『帝国憲法皇室典範義解』(増補15版)丸善、1935年4月22日。NDLJP:1281828。 - 国家学会蔵版。
- 伊藤博文『帝国憲法義解 新訳』日本国学振興会訳註、日本国学振興会、1938年5月5日。NDLJP:1441516。
- 伊藤博文『憲法義解』宮沢俊義校註、岩波書店〈岩波文庫〉、1940年4月15日。ISBN 978-4003311110。NDLJP:1267849。復刊1997・2005年ほか
- 伊藤博文『憲法義解』宮沢俊義校註、坂本一登解説、岩波書店〈岩波文庫 青版〉、2019年6月。ISBN 978-4003311196。 - 伊藤 (1940)を改版。
- 伊藤博文『帝國憲法 皇室典範 義解』呉PASS出版〈呉PASS復刻選書4〉、2014年2月11日。ISBN 978-4908182044。 - 伊藤 (1889)の復刻。
現代語訳
編集- 相澤理 編著『「憲法とは何か」を伊藤博文に学ぶ 『憲法義解』現代語訳&解説』アーク出版、2015年5月。ISBN 978-4-86059-152-6。
中国語訳
編集- 伊藤博文 纂『伊藤博文 日本帝国憲法義解』沈紘 訳、金粟斎、1901年。 - 活版、附:『日本皇室典範義解』。
- 伊藤博文『帝国憲法皇室典範義解』平島及平 漢訳、東亜同文書局、1907年5月17日。NDLJP:789186。
英語訳
編集- Hirobumi Ito (1889-06-23) (Google ブックス), Commentaries on the Constitution of the Empire of Japan, Translated by Miyoji Ito, Tokyo: Igirisu Hôritsu Gakkô
- Hirobumi Ito (June 1906), Commentaries on the Constitution of the Empire of Japan, Translated by Miyoji Ito (2d ed.), Tokyo: Chûô Daigaku
- Hirobumi Ito (May 1931), Commentaries on the Constitution of the Empire of Japan, Translated by Miyoji Ito (3rd ed.), Tokyo: Chū-ō Daigaku
- 伊藤博文 (2015), 英訳 憲法義解, 呉PASS復刻選書5, 伊東巳代治訳, 呉PASS出版, ISBN 978-4-908182-07-5 - 復刻。
外部リンク
編集- 『憲法義解』 - コトバンク
- 『帝国憲法義解』 - コトバンク
- 『大日本帝国憲法義解』 - コトバンク
- 『帝国憲法義解』 - 国立国会図書館
- 『帝国憲法義解・皇室典範義解』 - 国立国会図書館
- 『帝国憲法皇室典範義解』 - 国立国会図書館
- 『帝国憲法義解』 - 国立国会図書館
- 伊藤博文著『憲法義解』の現代語訳(HISASHI)[リンク切れ]
- 大日本帝国憲法義解 伊藤博文
- 憲法義解・同英訳書画像公開 - JaLII 名古屋大学法情報研究センター
- 帝国憲法義解 : 新訳 - NDL Digital Collections