慢性腎不全
慢性腎不全(まんせいじんふぜん、英: Chronic renal failure)は、慢性に生じた腎不全。糸球体や尿細管が冒されることで生じるが、原因はさまざまである。
慢性腎不全 | |
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概要 | |
診療科 | 腎臓学 |
分類および外部参照情報 | |
ICD-10 | N18 |
ICD-9-CM | 585 403 |
DiseasesDB | 11288 |
MedlinePlus | 000471 |
eMedicine | med/374 |
Patient UK | 慢性腎不全 |
MeSH | D007676 |
解説
編集自覚症状がないまま、数カ月から数十年かけて腎機能の低下が進み、失われた機能が回復する見込みはほとんどない[1]
統計
編集- 慢性糸球体腎炎が一番で50%、糖尿病性腎症が二番で15%。
- 透析導入まで至った症例では、糖尿病性腎症38%、慢性糸球体腎炎32%、腎硬化症7.6%。
疫学
編集原因
編集- 糖尿病性腎症(透析導入として最多の原因疾患)
- 慢性糸球体腎炎(2番目に多い)
- 悪性腎硬化症(3番目に多い)
- 多発性嚢胞腎(常染色体性優性多発性嚢胞腎/ADPKDなど)
病態
編集病期は第1期〜第4期に分けられる。
- 第1期(腎予備能減少期)
- GFR(糸球体濾過値)が正常〜50%の間に減少した時期であるが、生体の恒常性はほぼ正常に維持されており、無症状である。
- 第2期(代償性腎不全期)
- GFRが、50〜30%に低下し尿濃縮機能の低下、軽度の高窒素血症、軽度の貧血を認める。
- 第3期(腎不全期、非代償期)
- GFRが30〜5%に低下し、高窒素血症(高アンモニア血症)、等張尿、夜間尿、代謝性アシドーシス、低カルシウム血症、高P血症、低ナトリウム血症などが認められる(糸球体濾過量が30ml/分以下に低下した状態が続くものを言う)。
- 第4期(尿毒症期、末期腎不全)
- GFRが5%以下となり、多彩な症状(尿毒症症状)が出現し、放置すれば死に至る。
→詳細は「慢性腎臓病」を参照
臨床像
編集治療
編集- 慢性腎不全の治療には
- 保存療法
- 食事療法 - 管理栄養士などの専門家の食事指導を受けて食事療法を実践する。
- 水分摂取
- 蛋白質 - 低蛋白質の食事にする。これは、尿毒素の原料になる蛋白質を控えるため。
- 炭水化物 - エネルギー不足による蛋白質分解を避けるために、高カロリーの食事にする。
- 塩分(塩化ナトリウム)- 高血圧がある場合には塩分摂取量を7g/日以下とする。ただし、腎不全における高血圧とは、通常の140/90よりも厳格な130/85mmHgとする。これは、高血圧が腎臓にある糸球体に負荷をかけてより一層腎不全を悪化させるため。
- 化学療法
- ACE阻害薬・アンギオテンシンII受容体拮抗薬 - 糸球体血圧を下げて腎不全の進行を抑えるために用いる。ただし、糸球体血圧を下げ過ぎると、逆に糸球体血流量が低下して腎前性腎不全になるので、クレアチニンが2.0mg/dl以上のときは慎重に投与する。肝排泄性のテモカプリルやテルミサルタンの使用を考慮する。また、カリウムの上昇にも留意し、利尿剤の併用を行う。
- 感染症対策
- 感染症に対してアミノグリコシド系抗生物質を用いる時は、用量に注意する。
治療に役立つメモ
編集腎性貧血はエリスロポエチン投与で改善することが多いが、エリスロポエチンの反応性が低下した場合は以下のようなことが考えられる。
- 慢性疾患(感染症、悪性腫瘍)の貧血
- 鉄欠乏性貧血
- 副甲状腺機能亢進症
- アルミニウム中毒
予後
編集出典
編集- ^ 腎臓病とは 全国腎臓病協議会
- ^ 腎不全予防のターゲットは便秘 日経メディカルオンライン 記事:2017年7月31日
外部リンク
編集- 一般社団法人 日本腎臓学会
- NPO法人 日本腎臓病協会
- 慢性腎不全 大阪府立急性期総合医療センター腎臓高血圧内科
- 『慢性腎不全』 - コトバンク