徳之島節

奄美に伝わる島唄

徳之島節(とくのしまぶし)は奄美に伝わる島唄の一つ。徳之島全土で歌われる民謡。様々な同系の歌のヴァリエーションがある。島内では二上がり節みち節はやり節井之ぬいび加那志と呼ばれ、奄美大島では徳之島節の他に犬田布節沖永良部島では犬田布嶺節(インターブレーぶし)とも呼ばれる。これらをミチ節系と呼び、更に沖縄にも伝播して道之島節として分布する。

犬田布(いんたぶ)とは徳之島の地名で、1863年に起きた犬田布騒動(犬田布一揆)は一人の農民が黒糖の横流しの疑いで捕らえられ拷問を受けたことが発端と言われる。歌がいつ成立したのは定かではないが、この一件と歌が関係しているのではと沖永良部の古老の伝承の中には伝わる。このように薩摩藩政時代の苛政に苦しむ島民の怨嗟絶望が伝統的に歌い上げられる。

この歌は元々病人を慰める夜伽(トゥギ歌)や旅立ちを送る際など悲しい場面で歌われたものとされ、また一説には呪詛を込めた歌であるサカ歌として用いられたともいわれるが、現在では元々の意味は薄れて人生の様々な感慨がこの曲の旋律に乗せて歌われている。

奄美大島における徳之島節の囃子には「廻れよ三合瓶小(さんごうびんぐゎ)、受けれよ硯蓋小(すぃでぃりぶたぐゎ)」といった婚礼に関する事物が現われることから、この歌は婚礼と結びついていたのではないかという仮説がある[1]

徳之島節のソフト化

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以下の歌手の歌ったものがリリースされている。それぞれ歌詞を異なる。

下記の歌詞に近い悲哀と苦痛の歌。
同上だが歌詞は少し異なる。
愛する人を追ってきたところで出会った徳之島へ飛ぶ蝶に伝言を託す歌。囃子言葉が婚礼に関係する。
  • 中孝介 - 『ノトス』(ジャバラ・レコード、2004年)収録

歌詞の一例

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様々な歌詞のものが出回っており、以下は伝統的な一例にすぎない。

奄美方言 対訳
徒ぬ世(ゆ)ぬ中や
長生き すぃれぃば
朝夕血ぬ涙(なだ)
袖どしぼりゅる
かしゅて気張たんち
誰が為(たむぃ)どぅなりゅる
大和いちゆぎりゃんきゃぬ
為(たむぃ)どうなりゅる
仕方やねんど ねんど 
辛い世の中は
長生きすれば
朝夕血の涙
袖を絞るのだ
こんなに苦労して働いたとて
誰が為になるというのだ
大和の役人の
ためにしかならない
仕方がないのだ

みち節

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以下はみち節(道節)として歌われているものに共通する部分である。

奄美方言 対訳
夜中(ゆなか) 目(みぃ)ぬ醒みぃて
眠(ねぶ)ららぬ 時(とぅき)や
うまちぃ 取(とぅ)い寄(ゆ)して
吹きゅる煙草
夜中目が醒めて
眠れぬ時は
火を取り寄せて
吹く煙草