岩根茂樹
岩根 茂樹(いわね しげき、1953年5月27日 - )は、日本の経営者。元関西電力社長、元電気事業連合会会長。
森山栄治(元部落解放同盟福井県連合会書記長)との間の金品受領・便宜供与問題で、関西電力社長を引責辞任し、善管注意義務違反により損害を与えたとして、関西電力から総額19億円を超える損害賠償請求訴訟を受けた。
人物・経歴
編集大阪府出身[1]。1972年大阪府立天王寺高等学校卒業、1976年京都大学法学部卒業、関西電力入社[1]。美浜原子力発電所3号機事故後の2005年に原子力保全改革推進室長となり、再発防止策のとりまとめなどで頭角を表し、2007年に執行役員企画室長となる[2]。2010年常務取締役、2012年副社長[1]。
2016年、関西電力社長に就任した[1]。2019年6月には電気事業連合会会長に就任したが[3]、金銭受領・便宜提供事件が発覚すると、同年10月に辞任した[4]。その後体調不良と称して表舞台から消え記者会見でも副社長を代役に立てていたが、2020年に第三者委員会から重大な責任があったと追及されるに至ると、関西電力社長職を引責辞任した[5][6]。
金銭受領・便宜供与問題
編集2019年9月に発覚した高浜原子力発電所がある福井県大飯郡高浜町の森山栄治助役からの八木誠会長、豊松秀己副社長、森中郁雄副社長らの3億2千万円の金銭授受においては金品ではなく「非常に高額な」記念品的なものの受取りをし、小林敬元大阪地方検察庁検事正が委員長を務めた調査委員会の調査を受け、社内処分を受けた事実を認めた[7][8][9]。
これを受けて記者会見で菅原一秀経済産業大臣は、「言語道断。ゆゆしき事態だ」と断じた[10]。更田豊志原子力規制委員会委員長は、「まだそんなことがあるのか」「憤りを感じた」とし、関西電力の対応を批判した[11]。
関西電力幹部に流れた金品の拠出元となった建設会社の売上高は無入札による特命発注などによる原発関連工事の受注増により少なくとも6倍増となり、記者会見を行った岩根も、当該建設会社と森山助役が関係していたことを認識していたことを明らかにした[12][13][14]。また森山元助役の人権教育の教え子であることも自白した[15]。
また、2016年の社長就任時から関西電力コンプライアンス委員長を兼務していたが[16]、TBSテレビ報道特集では、関西電力のコンプライアンス委員会について、「隠蔽のための作戦会議と化している」とする内部告発文書が紹介された[17]。関西電力が設置した第三者委員会からも森詳介、八木誠らと謀り隠蔽を主導したとして、特に大きな責任があると指弾された[18]。2020年善管注意義務違反があったとして、関西電力から総額19億3600万円の損害賠償請求訴訟が大阪地方裁判所になされた[19][20]。
2021年11月9日、会社法の収賄や特別背任などで市民団体から刑事告発を受け捜査を行っていた大阪地検特捜部は、岩根ら告発対象の関西電力幹部9人全員を嫌疑不十分で不起訴処分とした[21]。市民団体はこれを不服として大阪第2検察審査会に審査を申し立て、審査会は2022年7月7日付で岩根ら3人について「起訴相当」、ほか6人については「不起訴不当」と議決した[22]。議決を受け特捜部は再捜査を行ったが、12月1日付で9人全員を再び嫌疑不十分で不起訴処分とした[23]。検察審査会は3月30日付で3人について「起訴議決に至らなかった」とする議決を行い、一連の問題の刑事手続きが終了した[24]。
カルテル事件
編集関西電力主導でカルテルを締結していた問題で、森本孝元社長、彌園豊一元副社長、川崎幸男関電エネルギーソリューション社長らと、事件を主導していたと指摘され、2023年に月額報酬50%3ヶ月分の自主返納を求められた[25][26]。
外部リンク
編集脚注
編集- ^ a b c d “関西電力社長に岩根副社長が昇格 トップ交代6年ぶり”. 日本経済新聞 (2016年3月28日). 2019年9月23日閲覧。
- ^ “目線を上げて「全社一丸」 「百忍千鍛」前へ、前へ! 岩根氏 関西電力”. FACTA. 2019年9月28日閲覧。
- ^ “電気事業連合会 会長交代でどう変わる?” (2019年6月20日). 2019年9月28日閲覧。
- ^ 関電 八木会長の辞任決定 社長は第三者委報告後東京新聞2019年10月9日 夕
- ^ ベテランの安定感「苦労人」の評も 関電新社長の森本孝氏産経新聞2020.3.14 13:2
- ^ 「関電「内向き体質」払拭遠く 会長の外部起用カギに」日本経済新聞2020/3/14 19:05
- ^ “関電役員、なぜ金品を受領したのか…岩根社長、辞任否定” (2019年9月27日). 2019年9月28日閲覧。
- ^ 関電、20人が3.2億円受領 岩根社長は辞任否定日本経済新聞2019/9/27 11:31
- ^ 原発再稼働切迫で関係悪化恐れるNHK10月02日 08時48分
- ^ 経産相「言語道断」 関電の資金授受問題 - 毎日新聞
- ^ 原子力規制委員長「憤り」、金品受領問題で関電批判 日本経済新聞 2019年10月2日 15:40
- ^ 「森山元助役が「顧問」の建設会社に…関電が入札せず「特命発注」」読売新聞2019/10/03 13:39
- ^ 元助役“資金源”の会社 関電から15億円工事受注かテレビ朝日2019/09/30 11:55
- ^ 「原発関連工事で売上高6倍 関電から受注 建設会社」東京新聞2019年9月28日 夕刊
- ^ 関電金品受領問題会見詳報(4)】森山氏の関連企業に「工事を発注した事実はある」産経新聞2019.9.27
- ^ 関電経営陣追加処分見送り 情報トップに伝わらず 企業統治甘さ露呈毎日新聞2019年10月2日 21時
- ^ 関電経営トップ「居座り」と「関西検察OB」との深い関係ヤフーニュース
- ^ 関電75人に3.6億円相当 第三者委報告 高浜町元助役から金品東京新聞2020年3月15日 朝刊
- ^ 当社旧取締役に対する損害賠償請求訴訟の提起について関西電力
- ^ 岩根前社長ら旧経営陣5人を提訴へ 関電が発表 19億3600万円賠償求め毎日新聞2020年6月15日
- ^ “金品受領問題で告発された関西電力元役員らを不起訴 大阪地検特捜部”. 朝日新聞. (2021年11月9日) 2023年4月28日閲覧。
- ^ “関電元幹部3人「起訴相当」 金品受領問題などで検察審査会”. 時事通信. (2022年8月9日) 2023年4月28日閲覧。
- ^ “関電元役員を再び不起訴 大阪地検 報酬減額補てんは検審が再審査へ”. 朝日新聞. (2022年12月1日) 2023年4月28日閲覧。
- ^ “関電旧経営陣、起訴至らず 補填問題刑事手続き終了”. 東京新聞. (2023年4月28日) 2023年4月28日閲覧。
- ^ 関西電力、カルテル問題で森本前社長が特別顧問辞任関西電力2023年4月12日
- ^ 役員の報酬減額等について
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