小林勝 (小説家)
日本の小説家
小林勝(こばやし まさる、1927年11月7日 - 1971年3月25日)は、日本の小説家である。代表作に『断層地帯』『蹄の割れたもの』、戯曲『檻』などがある。早稲田大学露文科中退。
来歴
編集日本統治時代の朝鮮慶尚南道の晋州に生まれた。父は朝鮮で農林学校の生物教師をしていた。小林は植民者の息子として朝鮮で育ち、1944年大邱中学校4年修了時点で、陸軍予科士官学校に入学した。1945年3月には特攻要員として陸軍航空士官学校に入学。敗戦によって復員した小林は、1948年に日本共産党に入党し、50年代の日本共産党が分裂抗争した時期には、徳田球一率いるいわゆる所感派に属して「火炎瓶闘争」に加わって逮捕される。その経験をもとに書いたものが、代表作である『断層地帯』である。その後新日本文学会に入会し、長谷川四郎や菅原克己らとともに雑誌『生活と文学』の編集を手がけるなど、文学運動に携わった。
評価
編集小林勝の文学は「自己嫌悪と羞恥の文学」であった。「自己嫌悪と羞恥」の原点こそ、日本が植民地支配した朝鮮での少年期体験だった。だからこそ、小林は彼にとっての「故郷」であり、原風景である朝鮮にたいする安直な郷愁を拒否したのである。
著作
編集略年譜
編集- 1927年、朝鮮慶尚南道晋州において生まれる。
- 1944年3月、大邱中学校4年修了。陸軍予科士官学校に入学。
- 1945年3月、陸軍航空士官学校に入学。特攻要員だった。
- 1945年8月、敗戦により復員。
- 1948年、日本共産党入党。新日本文学会の活動も始める。
- 1950年、日本共産党の分裂抗争において、主流派に属す。『新日本文学』と対立した『人民文学』が創刊されると、これに加わる。
- 1952年6月、朝鮮戦争・破防法反対デモに参加。「火炎壜事件」の現行犯で逮捕。
- 1953年1月、保釈。『人民文学』などに小説や詩を発表する。
- 1955年5月、新日本文学会入会。事務局員として活動。
- 1956年、「フォード・一九二七年」(新日本文学5月号=芥川賞候補作となる)
- 1958年、長編『断層地帯』書肆パトリア
- 1960年、「架橋」(文學界六月号=芥川賞候補)
- 1961年、日本共産党の第8回党大会を機に、党規律にそむいた共同声明に参加、除名処分をうける。
- 1971年、腸閉塞で死亡。享年43。