対空戦闘指揮統制システム
対空戦闘指揮統制システム(たいくうせんとうしきとうせいしすてむ、英: Air Defence Command and Control System、略語ADCCS(アドックス))は、陸上自衛隊の方面隊・師団・旅団の高射特科部隊に配備される装備品。
概要
編集対空レーダ等の情報を集約し、対空射撃・対空戦闘に必要な情報を迅速・正確に処理伝達するための指揮・統制を行うシステム。
方面隊用のI型、師団用のII型、旅団用のIII型がある。製作は三菱電機。
従来の対空戦闘指揮装置はC2システムとして対空戦闘指揮装置、およびこれに連接されたC4Iシステムとして方面隊用に方面隊高射指揮所装置(MTQ-1)が、師団用に師団対空情報処理システム(DADS)が配備されている。しかしこれらのシステムは戦闘爆撃機やヘリコプター等の対処に限られ、巡航ミサイルや空対地ミサイルの対処には対応していていない。また多数機に対する情報処理・指揮統制にも制約を受ける上に、MTQ-1とDADSの間で連接が行われておらず、情報処理や一元的な指揮統制に支障をきたす。結果として、目標への重複攻撃(オーバー・キル)や撃ち漏らしが生じる可能性が高い。これらの問題を解決した上で能力向上を図り、効果的な対空戦闘指揮統制を行うため本システムが開発された。
従来のシステムとADCCSを比較すると次のような特徴がある。
- 対処目標
- ADCCS:戦闘爆撃機・ヘリコプター・巡航ミサイル・空対地ミサイル等
- MTQ-1・DADS:戦闘爆撃機・ヘリコプター等
- 連接可能なシステム
ADCCSは複数の方面隊や師団や旅団が運用する対空監視レーダ(対空レーダ装置 JTPS-P25等)・低空レーダ(低空レーダ装置 JTPS-P18等)や、03式中距離地対空誘導弾、ホーク、81式短距離地対空誘導弾、93式近距離地対空誘導弾、87式自走高射機関砲、91式携帯地対空誘導弾といった対空火器と連接することで、対空情報が共有され一元的な指揮統制が可能となり、情報集約能力や処理能力や伝送能力が飛躍的に向上する。さらに航空自衛隊の新自動警戒管制システム(JADGE)とも連接可能で、対空情報の共有化でより広域の情報取得も可能である。
構成
編集次にADCCSの構成を記す(師団用II型)[3]。
- 対空戦闘指揮統制装置II型
- 対空作戦調整所装置II型
- 通信装置II型
- 対空情報受信装置(連隊・大隊等用、個人携帯SAM用、LAN用)
- 連接装置(中SAM・ホーク射撃単位用、短SAM(B)・短SAM(C)用、近SAM用、87AW用、対空レーダ装置用、低空レーダ用)
- 指揮官幕僚用端末装置
概要で挙げた装備以外にも、ADCCS開発後に新たに配備された装備(例:11式短距離地対空誘導弾)との連接は可能である。なおJTPS-P25はADCCSの構成品として扱われる。また野外通信システム(広帯域多目的無線機)を用いた対空装備に留まらない他の自衛隊C4Iシステムとの連接も可能になる予定。
調達と配備
編集2004年(平成16年)度から2008年(平成20年)度までに開発が行われ、2009年(平成21年)度に予算が計上、2011年(平成23年)度から配備が始まった。
配備部隊・機関
- 第1高射特科団
- 第1高射特科団本部付隊(東千歳駐屯地):対空戦闘指揮統制システムⅠ型[4]
- 第2高射特科群
- 第301高射運用隊(松戸駐屯地)
- 第8高射特科群
- 第302高射運用隊(青野原駐屯地)
- 第2高射特科団
- 第2高射特科団本部付隊(飯塚駐屯地)
- 第5旅団
- 第5高射特科隊(帯広駐屯地):対空戦闘指揮統制システムⅡ型[5]
- 第6師団
- 第6高射特科大隊(郡山駐屯地):対空戦闘指揮統制システムⅡ型
- 第11旅団
- 第14旅団
- 第14高射特科隊(松山駐屯地):対空戦闘指揮統制システムⅡ型[7]
脚注
編集- ^ 高射特科群のこと、特科#高射特科を参考
- ^ 陸上自衛隊のC4Iシステム#固定型システムを参考
- ^ 部隊実験に伴う対空戦闘指揮統制システム技術援助等に関する役務
- ^ “第1高射特科団 部隊紹介 装備品”. 2024年4月13日閲覧。
- ^ “第5高射特科隊”. 2024年8月25日閲覧。
- ^ “第11高射特科隊”. 2024年4月13日閲覧。
- ^ “松山駐屯地に所在する部隊”. 2024/8/25閲覧。