害必要数(がいひつようすう、number needed to harm (NNH))とは、疫学における指標の一つで、何人の人が危険因子英語版にさらされれば1人の有害作用が発生するかを示す[1]絶対リスク増加の逆数として定義され、次式で計算される。

Illustration of two groups: one exposed to a risk factor, and one unexposed. Exposed group has larger risk of adverse outcome (NNH = 4).
危険因子の暴露群(左)は非暴露群(右)と比較して罹患(黒)のリスクが高まっている。1人の罹患が発生するためには、4人が危険因子に暴露される必要がある(NNH=4)。

ここで、は治療(暴露)群における罹患率は対照(非暴露)群における罹患率である[2]。NNHが低いほど、その危険因子は有害である。NNHが1であるとは、その危険因子に暴露された人全員が罹患することを意味する。

NNHに関連する指標として、「絶対リスク減少の逆数」として定義される治療必要数(NNT)がある。

NNHは根拠に基づく医療において重要な指標である。治療効果があるが患者に有害な影響をもたらす可能性のある治療法を実施するかどうかを意思が判断するのに役立つ。 しかし、NNHには信頼区間の欠如やバイアス、2つの異なる治療法またはグループ間に差がない可能性の排除の難しさなど、いくつかの問題がある[3]

リスク増加の例
数値 実験群 (E) 対照群 (C)
罹患数 (E) EE = 75 CE = 100 175
非罹患数 (N) EN = 75 CN = 150 225
計 (S) ES = EE + EN = 150 CS = CE + CN = 250 400
罹患率 (ER) EER = EE / ES = 0.5, or 50% CER = CE / CS = 0.4, or 40%
指標 略称
絶対リスク増加 ARI EERCER 0.1, or 10%
害必要数 NNH 1 / (EERCER) 10
相対危険度 RR EER / CER 1.25
相対リスク増加 RRI (EERCER) / CER, or RR − 1 0.25, or 25%
Attributable fraction among the exposed AFe (EERCER) / EER 0.2
オッズ比 OR (EE / EN) / (CE / CN) 1.5

脚注

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  1. ^ 薬物の効力および安全性”. MSDマニュアル. 2024年10月29日閲覧。
  2. ^ Porta, Miquel; Greenland, Sander; Hernán, Miguel; Silva, Isabel dos Santos; Last, John M. (2014) (英語). Dictionary of Epidemiology - Oxford Reference. doi:10.1093/acref/9780199976720.001.0001. ISBN 9780199976720 
  3. ^ Hutton JL (2010). “Misleading Statistics: The Problems Surrounding Number Needed to Treat and Number Needed to Harm”. Pharm Med 24 (3): 145–9. doi:10.1007/BF03256810. 

関連項目

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