宇宙霊魂
宇宙霊魂(うちゅうれいこん、希: ψυχή κόσμου, 羅: Anima mundi)は、宇宙は全体としてひとつの魂を有する活きものであり、その魂は宇宙に遍在する原理的なものとなっているという考えに基づく概念である。世界霊魂(せかいれいこん)とも[1]。
概説
編集いくつかの思想体系では、地球上の生きとし生けるもの全ては本質的につながっているとされ、魂が人の体につながっているように宇宙の魂/生命は宇宙とつながっていると考えられた。この思想はプラトンの『ティマイオス』から始まり、ほとんどのネオプラトニズムの体系において重要な構成要素であった。
プラトンの考えた宇宙霊魂は、身体の中に魂があるのではなく、逆に魂の中に身体があるのだというように定式化される。また、ネオプラトニストのプロティノスは時間の中に空間があると考えており、プロティノスの考える時間はこの宇宙霊魂にぴったり符合する[3]。
中世にはピエール・アベラールがプラトンの世界霊魂の思想を聖霊の隠喩として解釈した。アベラールはキリスト教の観点から、世界霊魂の思想を真面目に取り扱わなかった[4]。
ストア派は宇宙霊魂が世界で唯一の生命力だと信じていた。同様の概念は東洋哲学でもバラモン教のブラフマン-アートマンで述べられている。さらに、中国の陰陽家や道家、宋明理学でも気がこれに相当する。
似た概念はパラケルススのようなヘルメス主義哲学者や、バールーフ・デ・スピノザ、ゴットフリート・ライプニッツ、フリードリヒ・シェリングに見いだされる。さらに、1960年代からジェームズ・ラブロックらが進めてきたガイア理論もこれと類似した思想である。
参考文献
編集- Jung, C. G. (1968). Psychology and Alchemy. 12. London: Routledge. ISBN 0-691-01831-6(日本語版『心理学と錬金術』人文書院)
- Roszak, Theodore (2001) [1992]. The Voice of the Earth: An Exploration of Ecopsychology. Phanes Press. ISBN 1890482803
- Southern, R. W. (2001). Scholastic Humanism and the Unification of Europe, Volume II: The Heroic Age. Wiley-Blackwell. ISBN 978-0-631-22079-4
- プラトン『ティマイオス』田之頭安彦訳、岩波書店、1975年9月13日。
- 小浜善信「時間の問題―アリストテレスとイアンブリコス―」『新プラトン主義の原型と水脈』昭和堂、2000年、24-61頁。
- J・マレンボン『初期中世の哲学 480-1150』中村治訳、勁草書房、1992年5月30日。ISBN 978-4326100941。