宇宙怪獣ガメラ
『宇宙怪獣ガメラ』(うちゅうかいじゅうガメラ)は、1980年(昭和55年)3月20日に公開された日本の特撮映画。監督は湯浅憲明。昭和ガメラシリーズ第8作。封切り時の同時上映は『鉄腕アトム 地球防衛隊』。
宇宙怪獣ガメラ | |
---|---|
Gamera, Super Monster | |
監督 | 湯浅憲明 |
脚本 | 高橋二三 |
製作 | 大葉博一 |
ナレーター | 中村正 |
出演者 |
マッハ文朱 小島八重子 小松蓉子 工藤啓子 前田晃一 |
音楽 | 菊池俊輔 |
主題歌 | マッハ文朱「愛は未来へ…」 |
撮影 | 喜多崎晃 |
編集 | 田賀保 |
製作会社 | 大映 |
配給 | 大映配給 |
公開 | 1980年3月20日[1][2] |
上映時間 | 91分[1] |
製作国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
前作 | ガメラ対深海怪獣ジグラ |
次作 | ガメラ 大怪獣空中決戦 |
概要
編集1971年の『ガメラ対深海怪獣ジグラ』以来、徳間グループ資本下となった大映によって9年ぶり[1]に製作されたガメラシリーズの映画。事実上、昭和ガメラシリーズ最終作となっている[3]。なお、マッハ文朱の映画初主演作品でもある[4]。
作劇自体は「完全新作」ではなく、「過去作品のフィルムを使用した新作映画」と称する方がより正確である。歴代ガメラシリーズの特撮シーン[注釈 1]に新撮影のドラマ部分・特撮シーンを加えて再編集し、別のストーリーとして作られている[5]。そういったことから、マッハには「ガメラの集大成的な作品」と評されている[4]。
作中の宇宙船のデザインなどに、当時流行していた『スター・ウォーズ』など宇宙を舞台にしたSF作品の影響が見受けられる。
ストーリー
編集平和を監視するためにM88星から地球に派遣され、日本社会に紛れて暮らす女性異星人(スーパーガール)のキララ、マーシャ、ミータンは、宇宙海賊船ザノン号による地球侵略の動きを察知する。宇宙海賊の女幹部・ギルゲもまた地球に潜入しており、スーパーガールの存在をザノン号のキャプテンに知らせる。キャプテンは侵略の使者として怪獣ギャオスを地球に送り込み、破壊の限りを尽くす。しかし、武器を持たないスーパーガールには反撃ができないうえ、居所を知られたためにザノン号に上空から殺人光線で狙撃されるようになる。そんな中、スーパーガールは偶然出会った圭一少年の話から、かつて悪の怪獣を次々と倒した正義の怪獣「ガメラ」の存在を知る。
スーパーガールが宇宙空間へ向けて送った念力により、ガメラは地球の危機を知って東京・新宿に飛来し、ギャオスを倒す。ギャオスを失った宇宙海賊はジグラ、バイラス、ジャイガーを相次いで送り込むが、いずれもガメラに倒される。一計を案じたギルゲはガメラの身体に操縦装置を取り付けて操り、地球の破壊に加担させる。キララが囮となってガメラに飛びつき、ザノン号に光線を撃たせ、操縦装置の破壊に成功する。ギルゲはスーパーガールの打倒を命じられ、立ちはだかる。しかし、キララに戦うことの無益をさとされたギルゲは、罪の意識のために自決を試みるものの、スーパーガールによる手当てを経て介抱される。ギルゲは、スーパーガールとともに地球の平和を守ることを決意する。
宇宙海賊はさらにギロンとバルゴンを送り込むが、ガメラはこの2体も倒す。怪獣を失ったザノン号は、殺人光線による地球攻撃に着手しようとする。ガメラは地球を飛び立ち、ザノン号を見つけて体当たりで破壊するが、その大爆発とともに姿を消す。スーパーガールたちはガメラの存在を知らせた礼として、圭一を夜間飛行に案内するのだった。
製作
編集ガメラ
編集ぬいぐるみは、本作品まで昭和ガメラシリーズを支えてきたエキスプロダクションによって製作された。前作までと違い、首が鎌首をもたげたような形状になっている。また、公開に合わせ、同じスタッフによってアトラクション用のぬいぐるみも製作され、各種宣伝イベントで使われた(後述)。
ジェット噴射での3尺飛行モデルは、予算不足のため、顎を開閉させるリモコン装置を取り付ける余裕もなかった。なんとかやりくりして装置を取り付けたものの、後ろ足やリモコン機能はなく、口を常時開閉し続けるものとなっている[5]。
キララ
編集マッハ文朱が2021年に明かしたところによれば、「ガメラで育った世代」と大ファンであることを公言して臨んだ本作品の撮影当時は20歳であり、アクションシーンはスタントマンなしですべて担当したうえ、変身ポーズは湯浅憲明に言われて自分で考えたという[4]。
新撮
編集特撮パートのうち、いくつかのガメラ飛行シーン、ガメラが新宿の高層ビル群に姿を現すシーン、暴れるガメラの足下で『さらばドジラ』という東宝の「ゴジラシリーズ」(当時シリーズ制作休止中だった)を意識したとみられる架空の映画作品の宣伝看板が横転する意図不明のシーン[2][5]などは新撮である。
合成
編集過去作品の未合成フィルムを編集および再合成してライブ使用したため、光線などの光学合成をやり直している。
合成シーンには、『宇宙からのメッセージ』(1978年、深作欣二監督、東映)で本格的に導入されたビデオ合成システム「東通ecgシステム」が使われた[5]。ビデオとフィルムの画質の調和にはまだ試行錯誤があり、特にガメラの炎は明るくなりすぎてしまうため、フィルムで撮影したものをビデオに取り込むなどの工夫がなされた[6]。
劇中、登場人物の夢の中で、実写のガメラ(飛行シーン用のミニチュア)が、当時人気を博していたアニメ作品『宇宙戦艦ヤマト』のヤマトや『銀河鉄道999』の999号のアニメと一緒に宇宙を飛ぶシーンがある[3]。これらは背景にアニメフィルムを使い、飛行ミニチュアを合成して撮影された。
模型
編集宇宙船「ザノン号」のプロップはヒルマモデルクラフトが担当した。テレビCM(キヤノンの一眼レフカメラ「A-1」)で使用した宇宙船のミニチュアに、船体を切断してパイプで繋ぐなどの改造を施したものである[7][5]。
キャスト
編集スタッフ
編集- 監督:湯浅憲明(本編・特撮とも)
- 製作・配給:大映配給株式会社
- 企画:徳山雅也
- 製作(製作者):大葉博一
- プロデューサー:徳山雅也、篠原茂
- 脚本:高橋二三
- 音楽:菊池俊輔
- 撮影:喜多崎晃
- 録音:飛田喜美雄
- 照明:島田忠昭
- 美術:横島恒雄
- 編集:田賀保
- 助監督:村石宏實
- 製作主任:久里耕介
- 操演:中島徹郎
- 装飾:岩田信尚
- メイク:土屋千恵
- 記録:小林みどり
- スチール:野上哲夫
- 擬闘:松尾悟(グループ十二騎)
- 特殊撮影:東通ecgシステム
- 造型:ヒルマモデルクラフト、エキスプロ
- 劇画:開田裕治
- 視覚効果:石田徹
- タイトル:デン・フィルム・エフェクト
- 効果:P.A.G.、赤塚不二夫、藤田信夫
- 衣装:京都衣装
- 録音所:にっかつスタジオセンター
- 現像:東京現像所
- 主題歌:マッハ文朱「愛は未来へ…」(ミノルフォン・レコード 作詞:やまひさし 作曲:菊池俊輔)
- 音楽製作:徳間音楽工業株式会社
- 特撮フィルム
- 撮影協力:株式会社マツダファミリア城南、株式会社関東マツダ ほか
- 製作協力:株式会社東通、株式会社大映映画撮影所、日本楽器製造株式会社、MAZDA
- アニメーション作品提供:株式会社オフィス・アカデミー、東映動画株式会社
宣伝・興行
編集放送での宣伝
編集劇場公開に合わせ、テレビ番組『600 こちら情報部』で湯浅監督の特撮演出風景などがレポートされ、スタジオには湯浅監督とガメラが招かれた。
サウンドトラック
編集公開当時に挿入歌「生きてるかぎり」をA面・主題歌「愛は未来へ…」をB面収録としたシングルレコード盤が発売された(ミノルフォン KA-1196)。のち2021年3月24日発売のCD『大怪獣ガメラ+(プラス)』(CINEMA-KAN CINK-103)に両曲が収録された。
アトラクションショー展開
編集公開当時に展開されたアトラクションショーではエキスプロ製作のぬいぐるみが登場するほか、スーパーガールと同郷とされる宇宙人が登場し、『仮面ライダー』のように殺陣を披露する内容となっていた。この宇宙人は「平和星人」と呼称されていたが、これがスーパーガールらの公式設定と関連するのかは不明である。なお、その姿は全身タイツに装飾されたヘルメットであり、男女どちらでも演じられるようになっていた。このころからエキスプロはイベント代理店業務も行っており、同社が扱っていた『大魔神』やタツノコプロ作品との共演ショーも行われたようである。のちにテレビ番組『さんまのナンでもダービー』内の着ぐるみレースコーナーに登場したのは、この時の造形物である。
映像ソフト化
編集- VHS - 1991年発売。
- レーザーディスク - 1995年発売。
- DVD - 2001年11月28日発売の「ガメラTHE BOX(1969-1980)」に収録されており、単品版も同時発売[8]。トールケース版は2007年10月26日発売。2006年8月31日発売の「ガメラ 生誕40周年記念Z計画 DVD-BOX」に収録されている。
- BD - 2009年7月24日発売の「昭和ガメラ ブルーレイBOX II」に収録されており、単品版も同時発売。
関連作品
編集漫画作品『大怪獣ガメラ』[9]では本作品の世界観に触れられており、『宇宙怪獣ガメラ』のラストで消息不明となったガメラが人類によってアトランティスの技術を使って蘇生され、「平成ガメラシリーズ」の姿に生まれ変わったガメラを過去の世界に送り込み、地球の歴史を改変させる、という設定になっている。
脚注
編集注釈
編集出典
編集- ^ a b c 宇宙怪獣ガメラ - 日本映画製作者連盟
- ^ a b 野村宏平、冬門稔弐「3月20日」『ゴジラ365日』洋泉社〈映画秘宝COLLECTION〉、2016年11月23日、83頁。ISBN 978-4-8003-1074-3。
- ^ a b 『昭和55年 写真生活』(2017年、ダイアプレス)p38
- ^ a b c “「宇宙怪獣ガメラ」が映画祭で復活 主演のマッハ文朱「若いガメラファンにとって私はキララ」”. よろず〜ニュース (デイリースポーツ). (2021年7月14日) 2024年10月31日閲覧。
- ^ a b c d e 特撮全史 2020, p. 87, 「宇宙怪獣ガメラ」
- ^ 石井博士ほか『日本特撮・幻想映画全集』勁文社、1997年、269頁。ISBN 4766927060。
- ^ 『別冊映画秘宝 特撮秘宝』 Vol.4、洋泉社〈洋泉社MOOK〉、2016年8月27日、261頁。ISBN 978-4-8003-1005-7。
- ^ 「綴込特別付録 宇宙船 YEAR BOOK 2002」『宇宙船』Vol.100(2002年5月号)、朝日ソノラマ、2002年5月1日、170頁、雑誌コード:01843-05。
- ^ 寺沢健一郎, 破李拳竜, 1995年, 大怪獣ガメラ(マンガボーイズ・コミックス・スペシャル), 徳間書店
参考文献
編集- 『ガメラクロニクル』(ソニーマガジン、1999年3月発売、ISBN 978-4-78-971354-2)
- 『キャラクター大全 特撮全史 1980〜90年代 ヒーロー大全』講談社、2020年1月7日。ISBN 978-4-06-512925-8。