大飛島遺跡
大飛島遺跡(おおびしまいせき)または大飛島洲の南遺跡(おおびしますのみなみいせき)は、岡山県笠岡市大飛島にある古代祭祀遺跡。笠岡市指定史跡に指定され(指定名称は「大飛島洲の南遺跡」)、出土品は国の重要文化財に指定されている。
![](http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/6/67/Obishima_Site%2C_gaikan-1.jpg/300px-Obishima_Site%2C_gaikan-1.jpg)
概要
編集岡山県南部、瀬戸内海に浮かぶ大飛島から東に突き出した砂洲(砂嘴)の基部に位置する。1962年(昭和37年)に遺跡として発見され、これまでに5次の調査が実施されている。
大飛島にはかつて小飛島へと伸びた砂洲(現在はほぼ消滅)があり、その基部の山裾の巨岩群付近において多数の遺物が検出されている。東西の潮流がぶつかる潮待ちの場所にある砂洲という地理的特異性によって、海の神を祀る祭祀が行われたと推測される[1]。出土品には多量の奈良三彩のほか、銅鏡・帯金具・銅銭(皇朝十二銭)・銅鈴・手捏ね土器・竈模造品・紡錘車などといった、貴族・官人クラスの全国的にも貴重かつ祭祀色の強い遺物が含まれており、何回もの国家的祭祀の存在を示唆する[1]。遺物は奈良時代-平安時代初期を中心としており、遣唐使の派遣時期とも重なることから、遣唐使の航海に伴う祭祀を示唆するとして重要視される遺跡になる[1]。
遺跡域は1963年(昭和38年)に笠岡市指定史跡に指定され[2]、出土品は2003年(平成15年)に国の重要文化財に指定されている[3]。
調査等の履歴
編集出土品
編集遺跡からの主な出土品は次の通り[1]。
- 銅鏡
- 唐花文六花鏡 - 中央に花文を置く六花形鏡。同型鏡に正倉院伝世品・東大寺大仏殿出土品。
- 狻猊双鸞八花鏡 - 左右の鸞(瑞鳥)、上下の狻猊(獅子)を主文とする八花形鏡。同型鏡に神門神社伝世品(宮崎県)・八代神社伝世品(三重県神島)。
- 帯金具
- 帯に装着する飾金具。律令期に官人の身分表示として使用。
- 銅銭
- 奈良三彩
- 中国の唐三彩を模して日本で作られた施釉陶器。奈良三彩の小壺は祭祀遺跡からの出土例が多く知られる。
- 須恵器
- 猿投窯産のものを含む。一部の甕・長頸瓶の底部・胴部には供献土器としての穿孔が認められる。
- 手捏ね土器
- 手中で粘土塊を押し広げて作った土器。祭祀遺跡からの出土例が多く知られる。
- 竈模造品
- 土師器によるミニチュア炊飯具のうち竈(かまど)の供献用模造品。
- 紡錘車
- 糸を紡ぐための道具のうちの錘(重り)。祭祀具の性格を持った。
出土品のうち、遺跡発見時および第3次調査の主要なものは国所有、第1・2・4次調査および第3次調査のその他のものは笠岡市所有となり、前者は岡山県立博物館、後者は笠岡市立郷土館において保管され、いずれも国の重要文化財に指定されている。
-
青銅製品
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奈良三彩・緑釉陶器
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ミニチュア土器
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須恵器・土師器
文化財
編集重要文化財(国指定)
編集- 岡山県大飛島祭祀遺跡出土品(考古資料) - 明細は以下。国(文化庁)所有、岡山県立博物館保管。2003年(平成15年)5月29日指定[3]。
- 青銅製品 33点
- 銅銭 35枚
- 三彩小壺 3口
- 須恵器・陶器 9点
- ガラス小壺片 2点
- 石製品 2点
- 岡山県大飛島祭祀遺跡出土品(考古資料) - 明細は以下。笠岡市所有、笠岡市立郷土館保管。2003年(平成15年)5月29日指定[3]。
- 青銅製品 22点
- 銅銭 70枚
- 鉄製品 3点
- 三彩小壺・蓋 22点
- 須恵器・土師器・陶器 99点
- ガラス製品 6点
- 玉類 2点
笠岡市指定文化財
編集- 史跡
- 大飛島洲の南遺跡 - 1963年(昭和38年)12月25日指定[2]。
関連施設
編集- 岡山県立博物館(岡山市) - 大飛島遺跡出土品等を保管。
- 笠岡市立郷土館(笠岡市笠岡) - 大飛島遺跡出土品等を保管・展示。
その他
編集脚注
編集参考文献
編集(記事執筆に使用した文献)
関連文献
編集(記事執筆に使用していない関連文献)
- 鎌木義昌・間壁忠彦「大飛島遺跡 -古代の祭祀-」『倉敷考古館研究小報1』倉敷考古館、1964年。
関連項目
編集外部リンク
編集- 岡山県大飛島祭祀遺跡出土品(国所有)、岡山県大飛島祭祀遺跡出土品(笠岡市所有) - 国指定文化財等データベース(文化庁)
- 大飛島洲の南遺跡、岡山県大飛島祭祀遺跡出土品 - 笠岡市ホームページ
座標: 北緯34度20分31.25秒 東経133度30分33.20秒 / 北緯34.3420139度 東経133.5092222度