夏商周年表プロジェクト
夏商周年表プロジェクト(かしょうしゅうねんぴょうプロジェクト、中国語: 夏商周断代工程)は、1996年から2000年の中華人民共和国において行われた、国家規模の研究プロジェクト。第九次五カ年計画の一環。古代中国史の夏王朝・商王朝(殷)・周王朝の三代について、年代測定の手法によって具体的な年代を確定させた[3]。プロジェクトの成果は「夏商周年表」としてまとめられた。
先史時代 中石器時代 新石器時代 | |||||||||||
三皇五帝 (古国時代) |
(黄河文明・ 長江文明・ 遼河文明) | ||||||||||
夏 | |||||||||||
殷 | |||||||||||
周(西周) | |||||||||||
周 (東周) |
春秋時代 | ||||||||||
戦国時代 | |||||||||||
秦 | |||||||||||
漢(前漢) | |||||||||||
新 | |||||||||||
漢(後漢) | |||||||||||
呉 (孫呉) |
漢 (蜀漢) |
魏 (曹魏) | |||||||||
晋(西晋) | |||||||||||
晋(東晋) | 十六国 | ||||||||||
宋(劉宋) | 魏(北魏) | ||||||||||
斉(南斉) | |||||||||||
梁 | 魏 (西魏) |
魏 (東魏) | |||||||||
陳 | 梁 (後梁) |
周 (北周) |
斉 (北斉) | ||||||||
隋 | |||||||||||
唐 | |||||||||||
周(武周) | |||||||||||
五代十国 | 契丹 | ||||||||||
宋 (北宋) |
夏 (西夏) |
遼 | |||||||||
宋 (南宋) |
金 | ||||||||||
元 | |||||||||||
明 | 元 (北元) | ||||||||||
明 (南明) |
順 | 後金 | |||||||||
清 | |||||||||||
中華民国 | 満洲国 | ||||||||||
中華 民国 (台湾) |
中華人民共和国
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プロジェクトの全貌は、参加者の一人でもある作家(サイエンスライター)の岳南が書籍にまとめており、日本語訳も刊行されている[4]。
プロジェクト以前
編集このプロジェクトが始まる以前に、中国古代の年代は、文献資料でわかっている限りでは、周の共和元年(紀元前841年に相当)までしかたどれなかった。
プロジェクトの経過
編集プロジェクトは、1995年の秋から準備がはじめられ、1996年5月16日に正式に開始した。このプロジェクトには、約200名の若手主体の学者が参加した。1999年9月に開かれた夏商周断代工程階段成果学術報告会(中国史学会、中国考古学会、中国科学技術史学会、「夏商周断代工程」項目弁公室主催)では、プロジェクトに参加していない学者も含めて、160人強が討論をした。これが、このプロジェクトに大きな作用をもたらしたという。
2000年9月15日の夏商周断代工程項目験收会でその内容が政府によりチェックされ、2000年11月10日に、プロジェクトの首席科学者である李学勤・李伯謙・仇士華・席沢宗4人を中心として、公表された。
2001年11月、夏王朝よりさらにさかのぼって中国文明の淵源を突き止めるべく「中華文明探源プロジェクト」も始まった。三皇五帝のうち、堯、舜、禹の時期が対象となる。2004年より、本格的に開始され、紀元前25世紀までを目処に研究が行われた。
プロジェクトの手法
編集夏商周年表の作成には、様々な手法が用いられた。
天文学的な手法
編集考古学的手法
編集文献学的手法
編集- 文献資料の暦法の違いを精査し、相互の矛盾を発見し、どれが正確なのかを判定する。
プロジェクトの結果
編集批判
編集プロジェクトの結果に対して反論や批判が提示されている例がある。例えば、周が殷を滅ぼした年についてプロジェクトでは『竹書紀年』(古本)にある紀元前1027年を否定して、『国語』(周語)にある「歳在鶉火」(この年に歳星(木星)が「鶉火」の位置にあった)の記述を元にして紀元前1046年という数字が出された。これに関して、中国で歳星などの五星(すなわち惑星)の存在が認識されたのは戦国時代以後のことであり、殷末周初にかかる記録が存在しない(『国語』の記事は後代の創作である)として、紀元前1027年説を否定する根拠にはならないとする反論がある[5]。また年表の数値に対しては『史記』等の記年記事に依拠し過ぎており、中国史の碩学・宮崎市定が中国上古の紀年がかなり間延びしていることを指摘しており、落合淳思も殷王朝の系譜分析を通じて『史記』に依拠した殷の紀年が長すぎると指摘する[6]。
脚注
編集- ^ a b c 佐藤 2018, p. 71.
- ^ 岳 2005, p. 23.
- ^ “「歴史的、考古学的価値はきわめて高い」――李学勤教授の見解”. www.peoplechina.com.cn. 人民中国 (2003年). 2020年9月5日閲覧。
- ^ 岳南著、朱建栄・加藤優子訳 2005.
- ^ 小沢賢二「『武王伐紂年』歳在鶉火説を批判する」(『中国天文学史研究』(汲古書院、2010年) ISBN 978-4-7629-2872-7 第7章)
- ^ 宝賀寿男「「扶桑」概念の伝播-扶桑と箕子朝鮮を結ぶもの-」『古樹紀之房間』、2008年。
関連文献
編集- 岳南著、朱建栄・加藤優子訳『夏王朝は幻ではなかった 一二〇〇年遡った中国文明史の起源』柏書房、2005年。ISBN 4-7601-2729-1。
- 原題:『千古学案 夏商周断代工程紀実』 浙江人民出版社、2001年、ISBN 9787213021688
- 佐藤信弥『中国古代史研究の最前線』星海社〈星海社新書〉、2018年。ISBN 978-4065114384。
関連項目
編集- 年表
- 夏商周年表 (プロジェクトの成果)
- 中華文明探源プロジェクト(後継プロジェクト)
- 中国考古学
外部リンク
編集- 夏商周断代工程的主要成就
- 《夏商周年表》廓清千古之謎
- 《皇極経世》与《夏商周年表》(詳細年表)
- 夏商周断代工程的主要成就 李学勤在中国国家図書館的講座
- 夏商周年表
- 夏商周年代学的考古学基礎 李伯謙
- “夏商周断代工程”争議難平 陳寧
- Astro-Histriographic Chronologies of Early China are Unfounded by Douglas J. Keenan