塩化ウラン(VI)
塩化ウラン(VI)または六塩化ウランは化学式 UCl6 で表されるウランと塩素の化合物で、ウランの酸化数は +6である[1][2]。暗緑色の結晶性固体で、複数の波長で蛍光する。蒸気圧は100 ℃(373.15 K)で1 - 3 mmHg である[3]。塩化ウラン(VI)は室温では真空中や乾燥空気、窒素、ヘリウム雰囲気中で安定である。四塩化炭素に溶ける。他のハロゲン化ウランに比べると、多少はよく知られている。
塩化ウラン(VI) | |
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塩化ウラン(IV) | |
別称 六塩化ウラン Uranium hexachloride | |
識別情報 | |
CAS登録番号 | 13763-23-0 |
特性 | |
化学式 | UCl6 |
モル質量 | 450.745 g/mol |
外観 | 暗緑色結晶性固体 |
密度 | 3.600 g/cm3 |
融点 |
177 °C, 450 K, 351 °F |
沸点 |
75 °C, 348 K, 167 °F |
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。 |
構造
編集塩化ウラン(VI)は点群 Oh に属する八面体構造をとる。 結晶格子のサイズは 10.95 ± 0.02Å × 6.03 ± 0.01Å で単位胞あたり3つの分子が六角形をなしている。U-Cl 間の結合長は理論的には 2.472Å であるが、X線結晶構造解析による実測値としては2.42Å が得られている[4]。隣接する塩素原子間の距離は 3.65Å である。
性質
編集塩化ウラン(VI)は吸湿性が高く、空気中では速やかに分解する[5]。このため、真空中か乾燥空気中で取り扱わなければならない。
熱分解
編集塩化ウラン(VI)は120 - 150 ℃までは安定である。塩化ウラン(VI)の固体は別の構造に転移する[6]。一方、塩化ウラン(VI)の気体は熱分解で固体の塩化ウラン(V)に変化する。この反応の活性化エネルギーは約40 kcal/mol である。
溶解度
編集塩化ウラン(VI)は溶媒への溶解度があまり高くない。四塩化炭素には溶けて褐色の溶液となる。臭化イソブチルやフロン (C7F16) にはわずかに溶ける[6]。
溶媒 | 温度 (oC) | 溶解度(溶媒100 g に対する UCl6 の溶解量) |
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四塩化炭素 | - | 2.64 |
四塩化炭素 | 0 | 4.9 |
四塩化炭素 | 20 | 7.8 |
6.6% 塩素:93.4% 四塩化炭素 | - | 2.4 |
12.5% 塩素:87.5% 四塩化炭素 | - | 2.23 |
12.5% 塩素:87.5% 四塩化炭素 | 0 | 3.98 |
液体塩素 | - | 2.20 |
クロロメタン | - | 1.16 |
ベンゼン | 80 | 不溶 |
フロン113 | 45 | 1.83 |
フッ化水素との反応
編集塩化ウラン(VI)は無水フッ化水素酸 (HF) と室温で反応してフッ化ウラン(V)を生じる[6]。
合成
編集塩化ウラン(VI)は四塩化炭素中で酸化ウラン(VI)(UO3) と熱した塩素を反応させることで得られる。この反応の収率は塩化ウラン(V)が存在すると高くなる[3]。酸化ウラン(VI)はまず塩化ウラン(V)となり、さらに塩素と反応して塩化ウラン(VI)となる。反応物の量にもよるが、 温度を65 - 170 ℃(理想的には 100 - 125 ℃)の範囲とすると反応が進む。反応に伴って圧力が変化するため、グローブボックスなどの気密容器中で反応させる。
- 第1段階:
- 第2段階:
- 全体:
また、塩化ウラン(IV)に350 ℃で塩素を反応させても得られる[7]。
- 第1段階:
- 第2段階:
- 全体:
脚注
編集- ^ Zachariasen, W. H. (1948). “Crystal chemical studies of the 5f-series of elements. V. The crystal structure of uranium hexachloride”. Acta Crystallographica 1 (6): 285. doi:10.1107/S0365110X48000788.
- ^ Taylor, J. C.; Wilson, P. W. (1974). “Neutron and X-ray powder diffraction studies of the structure of uranium hexachloride”. Acta Crystallographica Section B Structural Crystallography and Crystal Chemistry 30 (6): 1481. doi:10.1107/S0567740874005115.
- ^ a b Van Dyke, R. E.; Evers, E. C. (1955). “Preparation of Uranium Hexachloride”. google patent: 2.
- ^ Batista, E. R.; Martin, R. L.; Hay, P. J. (2004). “Density Functional Investigations of the Properties and Thermodynamics of UFn and UCln (n=1,...,6)”. J. Chem.Phys. 121 (22): 8. doi:10.1063/1.1811607.
- ^ Lipkin, D.; Wessman, S. (1955). “Process and Apparatus for protecting Uranium hexachloride from Deterioration and Contamination”. google patent: 2.
- ^ a b c Katz,J.J; Rabinowitch,E. (1951). The Chemistry of Uranium. Ann Arbor: The McGraw-Hill Book Company
- ^ Thornton, G.; Edelstein, N.; Rösch, N.; Woodwark, D.R.; Edgell, R.G. (1979). “The Electronic Structure of UCl6: Photoelectron Spectra and Scattered Wave Xα Calculations”. J. Chem.Phys. 70 (11): 6. doi:10.1063/1.437313.