地震前駆現象

大規模な地震の前に発生する、地震の前触れと考えられる特徴的な現象

地震前駆現象(じしんぜんくげんしょう)とは、大規模な地震の前に発生する、地震の前触れと考えられる特徴的な現象の総称である。前駆現象地震前駆活動前駆活動などとも呼ばれ、名称は定まっていない。

地震前に起こるとされる諸現象全体を指す。また、このうち主に地象(地面現象、地質的現象)のみを指したり、民俗・民間で地震の前触れとされるもの(宏観異常現象)以外を指したりすることもある。

概要

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地球の表面を構成する地殻には、プレートの移動や断層運動などによる圧力(応力)がかかっていると考えられている。大規模な地震が起こる直前の段階(最大で地震の数十年前)では、次第にその圧力が蓄積され、最終的には限界に達するほどの大きなものになっていると考えられている。

この圧力が蓄積される過程では、力や熱などのエネルギーが不均質(まばらで偏りのある状態)になってしまう。これが根本的な要因となって、何らかの力学的・電磁気的・物理的・化学的な現象が発生する。これが地震前駆現象である。

さまざまな地震前駆現象があるが、そのすべてが大地震に関係しているわけではない。しかし、目にすることができるか否かに関わらず、どんな微細な現象でも大地震発生の手がかりとなる可能性があることから、地震予知の観点から注目されている。

地震前駆現象には、さまざまなものがある。地割れや岩石の変形、小地震、地震雲といった典型的なものもあれば、変位計などの計器を用いて解析を行わなければ分からないようなものもある。

地質学的な現象

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前駆的地震活動

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前駆的地震活動(ぜんくてきじしんかつどう)とは、前駆的活動前駆活動前駆地震とも呼ばれる、大規模な地震の前に発生する特徴的な地震のことである。前震とは異なる。

厳密に言えば、地盤の応力変化や単なる地面の移動など、地震を伴わない活動は、前駆的地震活動には含めない。

さまざまな周期で周期的に活動している活断層の活動には、余震活動期・静穏期・前駆的活動期という3つの活動期があると考えられている。その中で、前駆的活動期に起こる地震が前駆的地震活動である。この地震は、蓄積されていく断層周辺の歪みが大地震に向けて開放され始めている、あるいは一定のレベルを超えて歪みが目に見える形で現れ始めているために、発生する。

海溝型地震が発生するような地震活動地域の場合、2つのプレートの境界部分には、プレートが密着して強い圧力がかかっている固着域、比較的スムーズに滑っている安定すべり域、その中間に当たる遷移領域の3種類があり(名称には防災科学技術研究所が使用している用語を使用)、遷移領域で前駆的地震活動が起こる。

なお、火山においては、噴火火山活動の前触れとして特徴的な火山性地震が発生することがあり、これも前駆的地震活動あるいは前駆地震と呼ばれる。噴火予知の重要な情報源の1つである。

前駆的地震活動の種類

現れる前駆的地震のタイプにはさまざまなものがある。小地震が急増するもの、普段起こっていた地震が急減するもの、突発的な中規模地震などがあるが、その種類と断層のタイプや地震の発生型などとの明確な関連性は見出されていない。

また、特に命名されている現象には以下のものがある。

  • スロースリップ - 主に遷移領域で発生する、低速の滑り。との2種類がある。
    • 「サイレント地震」地震性の無いスロースリップ。
      • 短期的スロースリップ - 数日間かけて発生するスロースリップ。
      • 長期的スロースリップ - 数ヶ月~数年かけて発生するスロースリップ。
    • 「スロー地震」地震性のあるスロースリップ。
    • アフタースリップ - 固着域や遷移領域で発生する滑り。余効滑り、余効変動と呼ぶ。地震性の有るものと無いものの両方がある。
  • プレスリップ - 固着域で発生する、地震または滑り。前駆すべり、前兆すべりとも呼ぶ。気象庁などが発表する「東海地震に関連する情報」の重要な基準となる要素。

このほかに、前駆破壊前駆微動などと呼ばれる現象がある。

地面の変化

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地割れや段差といった、地表に現れる発見しやすい現象もあるが、ゆっくりとした隆起沈降、水平移動などは体感で発見することは難しく、精密機械による観測が必要となる。

プレートの境界、特に海溝では、大地震から次の大地震へと続く長い期間で同じような地殻の変位が見られることが実測やシミュレーションからわかっている。東海地方四国地方などでは、地上や海底[要出典]に設置したGPS変位計によって変位を観測している。

岩石の変性・変成

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地震直前にかかる高い圧力によって、地中の岩石が変形したり変性したりすることがあると考えられている。

その他の地質学的現象

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ミクロスケールでの地殻の破壊や変形、地下水の水位の変化なども発生し、学術的には、地震とのある程度の関連性が認められている。

地震を起こす直前の断層周辺では、長期間にわたる破壊核(震源核)形成の後、ゆっくりと前駆的すべりが進行し、大地震の発生に至るという考えもある[1]が、破壊核(震源核)形成も地震前駆現象に含められる。

地質学的以外の現象

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地中・大気中・水中などで、元素イオンの含有割合や同位体比が変化することがある。また、同じく地中・大気中・水中などで、放電帯電電気伝導度(導電率)の変化などが起こることがある。学術的に、地震との相関が認められているものもあるものの、具体的にどのような因果によるのかが解明できているものは少ない。

これらのうちの電磁的現象が、いくつか報告のある電離層電波伝播の異常や、生物の異常・地震雲など宏観異常現象の原因ではないかとされることもあるが、同様に解明されていない。

出典

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ウェブ

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脚注

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  1. ^ 防災科学技術研究所 高感度地震観測網 地震の基礎知識 11.6 各種基礎研究

関連項目

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