地狐(ちこ)は、密教および日本の伝承における霊獣ないし妖狐。日本ではが霊力を得たものであると考えられている。

概要

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密教では、三類形(さんるいぎょう)と称して、天狐・地狐・人形(人狐〈にんこ〉とも)という3つを使用する修法・まじないが説かれており、地狐の名称が見られる。地狐として描かれる絵は野干(やかん=狐)であると『秘蔵金宝抄』(12世紀)などに記されているが、13世紀頃には『実帰抄』、『白宝抄』などでこの三類形に描かれる天狐・地狐・人形そのものが「三毒」のしるしであり、災い・障礙神を示すものであると説かれるようにもなった[1]

荼枳尼天に関する文献には、辰狐王(荼枳尼天)の眷属たちとして、五つの方角に配された神名(東方青帝地狐木神御子・南方赤帝地狐火神御子・西方白帝地狐金神御子・北方黒帝地狐水神御子・中央黄帝地狐土神御子)に地狐の名称が見られる[2]

江戸時代の日本では、地狐は狐の階級の一つの名称としても挙げられていた。奇談集『兎園小説拾遺』では、天狐空狐・白狐・地狐・阿紫霊の順で挙げられており、地狐は100歳から500歳くらいまでの狐がなるものであると説かれている[3]

民間伝承

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長崎県小値賀島では「ジコー」という人間に取り憑く妖怪が語られていた。この呼称は天狐・地狐に由来している[4]

脚注

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  1. ^ 中村禎里『狐の日本史 古代・中世びとの祈りと呪術』戎光祥出版、2017年、51-61頁。ISBN 978-4-86403-248-3(旧版『狐の日本史 古代・中世編』日本エディタースクール出版部、2001年)
  2. ^ 『狐の日本史 古代・中世びとの祈りと呪術』117-118頁。
  3. ^ 笹間良彦『怪異・きつね百物語』雄山閣、1998年、18頁。ISBN 4-639-01544-5
  4. ^ 村上健司編著『妖怪事典』毎日新聞社、2000年、234頁。ISBN 978-4-620-31428-0