複信
(双方向通信から転送)
複信(ふくしん;Duplex)とは、電気通信における通信方式の一種を指す用語であり、通信に参加している者(機器)同士が同時に送信できる方式をいう[1]。
概要
編集一般的な複信方式の例としては、電話における通話が挙げられる。電話における通話は、相手の声を聞きながら話すことができるため、複信である。一方で、一般的な業務用無線における通話は、誰か1人が送信していると他の通信参加者は送話ができないため、完全な複信ではない。このような方式は、半複信と呼ばれる。また、ラジオ放送などは、視聴者は受信をすることしかできず、送信は行わないため複信ではない。このような方式は、単信という。[2]
複信を実現する手段として、最も簡単な方法は、伝送方向(送信・受信)別に2つの通信線路を使用することであるが、1つの伝送路で送受信を行う技術もある。例えば、一般的な固定電話回線は2線式であり、送信と受信は同じ通信線路を共有しているが、エコーキャンセラによって無理のない複信を実現している。
通信方式の種別
編集電気通信における、通信方式には次のようなものがある。
日本語 | 英語 | 特徴 | 用途 |
---|---|---|---|
全二重通信(複信) | Full Duplex | 双方が同時に送信できるもの | 電話・高速データ通信 |
半二重通信(半複信) | Half Duplex | 一方が送信している間は受信を行うもので、伝送方向を切り替えられるもの | プッシュ・ツー・トークのトランシーバー、マスタースレーブ方式のセンサネットワーク |
単方向通信(単信) | Simplex | 単方向の伝送のみ可能なもの。 | 放送 |
単一伝送路での全二重通信方式
編集日本語 | 英語 | 略称 | 原理 | 帯域利用効率 | 同期 | フェージング耐性 | 回路規模 | 特徴 | 用途 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
時分割複信 | Time Division Duplex | TDD | 情報を時間軸で圧縮し、送受信方向を切り替え | 中 | 要 | 中 | 中 | 時間配分を変えることで、送受信のデータ量の割合の動的変化が可能 | TCM-ISDN・PHS・TD-CDMA、デジタル業務無線・防災無線 |
周波数分割複信 | Frequency Division Duplex | FDD | 周波数帯域を分割する | 小 | 不要 | 小 | 小 | 送受信の分離に帯域フィルタ回路が必要 | マルチチャネルアクセス無線・携帯電話・通信衛星 |
エコーキャンセラ | Echo Canceler | 自分の発信した電気信号を受信した信号から差し引いて、相手からの電気信号を検出 | 大 | 不要 | 小 | 大 | 伝送路の特性の変化への対応が必要 | 2線式ツイストペアケーブルによるEuro-ISDN、電信・電話回線 |
脚注
編集- ^ “複信方式 - dskwiki”. www.dsk.or.jp. 2020年9月12日閲覧。
- ^ 日本の電波関連法令である電波法施行規則第二条第十六号においては、本記事の「単方向通信(単信)」に相当する方式に「単向通信方式」という呼称が付されている。また、同条第十七号においては、「単信方式」が本記事の「半二重通信(半複信)」に相当する方式として定義されており、解釈に注意が必要である。