単一電子トランジスタ
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単一電子トランジスタ(たんいつでんしトランジスタ SET;Single Electron Transistor)は、トランジスタの一形式。
概要
編集従来のトランジスタの構成パーツであるゲート長が数10nmになると量子的な性質が極端に現れてくるので、現状のMOS FETでは演算素子としての機能を果たすことは困難であると考えられる。そこで量子の世界に特有なトンネル効果などの現象を利用して電子を一つ一つ制御して様々な演算を行う単一電子トランジスタ(SET)が新たに提案されている[1]。SETでは量子ドットが重要であると考えられ、理論的には、今よりはるかに高性能で低消費電力なコンピュータの実現が期待される[1]。
構造
編集三つの電極を備える電界効果トランジスタと類似の構造だが、微細な大きさのクーロン島に存在する電子のトンネル効果を止める「クーロンブロッケード」と呼ばれる効果を利用しているため、作動原理は異なる[2]。
課題
編集室温でクーロンブロッケードを起こさせるためにはクーロン島の大きさをナノメートルサイズにする必要があり、室温で動作する個々の単一電子トランジスタで論理回路を形成するためには微小な配線で接続する必要があり、これが課題となる。さらに、集積度が向上して単一電子トランジスタ間の距離が50nm以下の場合には今度は個々の素子間で起こる電子のトンネル効果の問題が浮上する[1][2]。
脚注
編集- ^ a b c 単一電子トランジスタ
- ^ a b 小口 信行「わかる入門講座:ナノテクの世界、その6」『S&T Journal』2002年6月号。
参考文献
編集- 蔡兆申, 中村泰信, 阪本利司、「シングルエレクトロニクス」 『応用物理』 1994年 63巻 12号 p.1232-1238, doi:10.11470/oubutsu1932.63.1232
- 矢野和男, 石井智之, 橋本孝司 ほか、「室温動作単一電子メモリーおよびトランジスタ」 『応用物理』 1994年 63巻 12号 p.1248-1251, doi:10.11470/oubutsu1932.63.1248
- 田村伸行, et al. "強磁性リード電極を有する単一電子トランジスタでの磁気抵抗比増大効果の観測 (ナノ材料・プロセス, 機能ナノデバイス及び関連技術)." 電子情報通信学会技術研究報告. ED, 電子デバイス 109.422 (2010): 47-52, NAID 110008001138