前胸腺
概要
編集昆虫の胸部にある内分泌腺であり、エクジソン(昆虫の脱皮・変態を誘導するステロイドホルモンの一種である脱皮ホルモン)を合成・分泌する。形態は種ごとに異なり、カイコでは第一気門付近に左右1対存在する。このエクジソンと頭部にあるアラタ体から分泌される幼若ホルモンが共にある場合、脱皮の際に変態は起らず、幼虫のまま大きくなる。終齢幼虫では幼若ホルモンがなくなるため、蛹へと変態する。
エクジソンの生合成
編集前胸腺でのエクジソン生合成は、脳内の2対の神経細胞から分泌される前胸腺刺激ホルモン(PTTH)などの液性因子によって制御されていると考えられてきた。しかし中枢神経系より何本かの神経が前胸腺に接続しており、それらの役割は不明であった。研究によりFMRFアミドという低分子の神経ペプチドがこの神経により運ばれ、脱皮ホルモン合成を抑制する機構も存在することが明らかになった[1]。
参考資料
編集- ^ 昆虫の脱皮に新たなメカニズムを発見 -脱皮ホルモンの抑制に神経系が関与-(東京大学大学院新領域創成科学研究科、独立行政法人農業生物資源研究所)