六神通(ろくじんずう、ろくじんつう、: chaḷabhiññā[注釈 1])とは、「直接的な知識[1] 」「高度な知識[2][3]」「超常的な知識[2][4]」のこと。

仏教用語
神通
パーリ語 abhiññā
サンスクリット語 अभिज्ञा\
(IAST: Abhijñā)
中国語 神通
日本語 神通
英語 higher knowledge
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仏教において菩薩などが持っているとされる6種の超人的な能力。6種の神通力六通ともよばれ、止観瞑想修行において、止行禅定)による三昧の次に、観行(ヴィパッサナー)に移行した際に得られる、自在な境地を表現したものである。

内容

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具体的には以下の6つを指す。

神足(じんそく)通
: iddhi-vidha-ñāṇa
自由自在に自分の思う場所に思う姿で行き来でき、思いどおりに外界のものを変えることのできる力。飛行や水面歩行、壁歩き、すり抜け等をし得る力。
天耳(てんに)通
: dibba-sota-ñāṇa
世界すべての声や音を聞き取り、聞き分けることができる力。
他心(たしん)通
: ceto-pariya-ñāṇa
他人の心の中をすべて読み取る力。
宿命(しゅくみょう)通
: pubbe-nivāsānussati-ñāṇa
自他の過去の出来事や生活、前世をすべて知る力。
天眼(てんげん)通
: dibba-cakkhu-ñāṇa
一切の衆生の業による生死を遍知する智慧。一切の衆生の輪廻転生を見る力[5]
漏尽(ろじん)通
: āsavakkhaya-ñāṇa
煩悩が尽きて、今生を最後に二度と迷いの世界に生まれないことを知る智慧。生まれ変わることはなくなったと知る力。

他の呼び名

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最後の漏尽通を除く5つを、五通と呼ぶこともある。

また、宿命通、天眼通、漏尽通の3つをまとめて、三明(: tevijjā)と呼ぶこともある。

経典の記述

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『沙門果経』

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パーリ語経典長部の『沙門果経』においては、釈迦がマガタ国王に仏教の沙門(出家修行者、比丘比丘尼)の果報を問われ、まず戒律順守によって得られる果報、次に止行禅定、四禅)によって得られる果報を次々と述べた後に、その先の観行四念住四念処))によって得られる果報を、以下のように述べている[6]

  • 四禅の次に)「自身の身体が、元素から成り、父母から生まれ、食物の集積に過ぎず、恒常的でない衰退・消耗・分解・崩壊するものであり、意識もその身体に依存している」と悟れる (= 「身念住」身念処
  • (その次に)「思考で成り立つ身体(意生身)を生み出す」ことができる
  • (その次に)「様々な神通(超能力)を体験する」ことができる (以下、神足通
    • 「一から多に、多から一となれる」
    • 「姿を現したり、隠したりできる」
    • 「塀や、城壁や、山を通り抜けられる」
    • 「大地に潜ったり、浮かび上がったりできる」
    • 「鳥のように空を飛び歩ける」
    • 「月や太陽をさわったりなでたりできる」
    • 「梵天の世界にも到達できる」
  • (その次に)「神のような耳(天耳通)を獲得する」ことができる
    • 「神と人間の声を、遠近問わず聞くことができる」
  • (その次に)「他人の心を(自分の心として)洞察する力(他心通)を獲得する」ことができる
    • 「情欲に満ちた心であるか否かを知ることができる」
    • 「憎しみをいだいた心であるか否かを知ることができる」
    • 「迷いのある心であるか否かを知ることができる」
    • 「集中した心であるか否かを知ることができる」
    • 「寛大な心であるか否かを知ることができる」
    • 「平凡な心であるか否かを知ることができる」
    • 「安定した心であるか否かを知ることができる」
    • 「解脱した心であるか否かを知ることができる」
  • (その次に)「自身の過去の生存の境涯を想起する知(宿住通(宿命通))を獲得する」ことができる
    • 「1つ、2つ…10…100…1000…10000の過去生を想起できる」
    • 「それも、幾多の宇宙の生成(成刧)、壊滅(壊刧)を通して想起できる」
    • 「それも、具体的・詳細な映像・内容と共に想起できる」
  • (その次に)「生命あるものの死と生に関する知(死生通(天眼通))を獲得する」ことができる
    • 「生命あるものがその行為()に応じて、優劣、美醜、幸不幸なものになることを知ることができる」
    • 「生命あるものが(身口意の)業の善悪により、善趣・天界や悪趣・地獄に生まれ変わることを知ることができる」
  • (その次に)「汚れの滅尽に関する知(漏尽通)を獲得する」ことができる
    • 「苦しみ(汚れ)、苦しみ(汚れ)の原因、苦しみ(汚れ)の消滅、苦しみ(汚れ)の消滅への道(以上、四聖諦)を、ありのままに知ることができる」
    • 「欲望・生存・無知の苦しみ(汚れ)から解放され、解脱が成され、再生の遮断、修行の完遂を、知ることができる」

脚注

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注釈

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  1. ^ 「チャラビンニャー」

出典

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  1. ^ Bodhi (2000), e.g., SN 45.159 (pp. 1557-8).
  2. ^ a b Rhys Davids & Stede (1921-5), pp. 64-65.
  3. ^ Walshe (1985, 2007), passage 56, |SN 45.159.
  4. ^ Hoiberg, Dale H., ed. (2010). "Abhijñā". Encyclopædia Britannica. Vol. I: A-ak Bayes (15th ed.). Chicago, Illinois: Encyclopædia Britannica Inc. pp. 31. ISBN 978-1-59339-837-8
  5. ^ P.A.パユットー 著、野中耕一 訳『ポー・オー・パユットー 仏教辞典(仏法篇)』、2012年2月、サンガ、p.49
  6. ^ 『世界の名著 1』 中央公論社 pp531-537

関連項目

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