六念処
六念処(ろくねんじょ)は、仏教徒が信心する上で繰り返し心で念じるべき6つの法のこと。「六念」、「六念法」、「六随念」などともいう。
- 念仏
- 仏は十号を具足し、大慈大悲の大光明を放ち、神通無量にして、よく衆生の苦悩を抜き去る。我れ仏と同じからんと念ず。
- 念法
- 仏の所説の法は大功徳を有し、衆生の大妙楽である。我れよくこれを証して衆生に施与せんと念ず。
- 念僧
- 僧は仏の弟子にして無漏の法を得て、戒・定・慧の三学を具足し、世間の良福田である。我れ僧行を修せんと念ず。
- 念戒
- 諸の禁戒(こんかい)は大勢力あって、よく衆生の悪不善を除く。我れよく精進して戒を護持せんと念ず。
- 念施(念捨)
- 施行は大威徳ありて、よく衆生の慳貪(けんどん)の重病を除く。我れよく布施して衆生を摂取せんと念ず。
- 念天
- 三界の諸天の自然(じねん)に快楽を受くるは、みなかつて戒施の善根を修したるによる。我れまた功徳を積んで彼天処に生れんと念ず。
出典となる主な経典
編集仏陀耶舎:訳『長阿含経』
「 | また六つの不衰退の法がある。法を増長させ減退することがない。一つは念仏、二つは念法、三つは念僧、四つは念戒、五つは念施、六つは念天である。この六つの随念を修習すれば、法は増長し減退することがない。 (復有六不退法、令法増長無有損耗。一者念仏、二者念法、三者念僧、四者念戒、五者念施、六者念天、修此六念、則法増長無有損耗。) |
」 |
鳩摩羅什:訳『摩訶般若波羅蜜経』
「 | また次にスブーティよ、ボーディサットヴァ・マハーサットヴァは、(…)諸法の無所有性を明らかに納得して、いわゆる念仏・念法・念僧・念戒・念捨・念天という六つの随念を修習する。 (復次須菩提、菩薩摩訶薩(…)信解諸法無所有性修六念、所謂念仏念法念僧念戒念捨念天。) |
」 |
脚注
編集参考文献
編集- 中村 元、早島鏡正・紀野一義 訳注『浄土三部経』 下、岩波書店〈岩波文庫 青306-2〉、1990年。ISBN 4-00-333062-5。
- 多屋頼俊、横超慧日・舟橋一哉 編『仏教学辞典』(新版)法藏館、1995年。ISBN 4-8318-7009-9。
- 浄土真宗教学伝道研究センター 編『浄土真宗聖典』 七祖篇(註釈版)、本願寺出版社、1996年。ISBN 4-89416-604-6。