光格子時計

光格子を利用した原子時計

光格子時計(ひかりこうしどけい、Optical Lattice Clock)とは、光格子を用いる原子時計である。従来の原子時計より正確な時計として開発が進められている。

原理

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光格子時計において光格子の中に収めるのはストロンチウム原子であり、全ての原子で時間を同時に計測する。東京大学香取秀俊は、2001年に光格子時計の理論を発表し、2014年に精度18桁の光格子時計を開発することに成功した。この精度はセシウム原子時計の1000倍にもなり、1秒狂うのに300億年以上かかる計算になる[1]。このストロンチウム原子の遷移固有周波数は429 228 004 229 872.99 Hzである[2]

利用

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光格子時計を用いれば、人が歩く程度の速さや、わずか1 cmの高低差で生じる重力の違いによる時間の遅れを検出可能である。これにより、光格子時計は高度計重力ポテンシャル計としての使用が可能となり、噴火津波予知に貢献できると考えられている[1]。また、衛星測位システムに代わる新たな測地技術にも貢献すると考えられている。2022年には、情報通信研究機構が世界で初めて光格子時計を用いた標準時の生成に成功した。標準時システムに光格子時計を加えることで、協定世界時(UTC)との時刻同期精度が±20ナノ秒以内から±5ナノ秒以内に向上された、とされる[3]2030年までに予定されている1秒の定義の変更でも、光格子時計は有力な新定義の候補となっている[2]

2020年東京スカイツリーの地上階と展望台(高さ450 m)にそれぞれ光格子時計を設置し、2点の時間の流れの差を観測する実験が行われ、0.000 000 000 005 %のずれが検出された[4]。これは、一般相対性理論で示されている「重力源の近くでは時間の流れが遅くなる」ことの実証である[5]

評価

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脚注

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  1. ^ a b 堀部直人. “時計の概念を巻き直す「光格子時計」 正確な時計の先に”. 東京大学. 2022年9月7日閲覧。
  2. ^ a b 情報通信研究機構. “世界初、国家標準時の維持に光格子時計を利用 〜NICTが持つ時計のみで協定世界時との同期が可能に〜”. 2022年9月7日閲覧。
  3. ^ 世界初、国家標準時の維持に光格子時計を利用~NICTが持つ時計のみで協定世界時との同期が可能に〜 - 情報通信研究機構(2022年6月9日、2023年5月26日閲覧)
  4. ^ Takamoto, M., Ushijima, I., Ohmae, N. et al. (2020). “Test of general relativity by a pair of transportable optical lattice clocks”. Nat. Photonics 14: 411–415. doi:10.1038/s41566-020-0619-8. 
  5. ^ 小谷太郎「2030年、「単位」が変わる 「光格子時計」が1秒の定義を書き換えようとしている」『Newton』第44巻第7号、ニュートンプレス、2024年5月27日、49-50頁、ISSN 0286-0651JAN 4910070470749 
  6. ^ 本田賞 受賞者一覧”. 本田財団. 2022年10月17日閲覧。
  7. ^ 「光格子時計」発明の香取秀俊氏に本田賞 原子時計の1000倍の超高精度を実現”. サイエンスポータル. 2022年10月17日閲覧。
  8. ^ 科学技術分野における日本初の国際賞「2022年本田賞」 東京大学大学院工学系研究科 教授 香取秀俊博士が受賞”. PR Times. 2022年10月17日閲覧。

参考文献

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関連項目

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