条件
(停止条件から転送)
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条件(じょうけん)とは、法律行為の効力の発生・消滅を、将来の発生が不確定な事実にかからせる付款またはその事実である。条件が実現することを条件の成就という。
法律行為の効力の発生・消滅を将来発生するかどうか不確定な事実にかからせる付款またはその事実を条件というのに対し、法律行為の効力の発生・消滅を将来発生することが確実な事実にかからせる付款またはその事実は期限という。ただし、ある付款または事実が条件であるか期限であるか見解が分かれる場合もある(出世払いを参照)。
民法上の条件
編集- 民法は、以下で条数のみ記載する。
条件の種類
編集停止条件と解除条件
編集条件には停止条件と解除条件とがある。
- 停止条件
- 法律行為の効力発生に条件が付されている場合であり、停止条件付法律行為は停止条件が成就した時からその効力を生ずる(127条1項)。例として挙げられるものとしては「大学に合格したら、腕時計を買ってあげる」という約束がある。この場合、「腕時計を買ってあげる」という法律行為が、「大学に合格したら」という仮定の条件によって停止されている、ということになる。
- 解除条件
- 法律行為の効力消滅に条件が付されている場合であり、解除条件付法律行為は、解除条件が成就した時からその効力を失う(127条2項)。「代金支払いが滞った場合には、買った物を返還する」という場合、「代金支払いが滞る」という事実が解除条件である。
積極条件と消極条件
編集積極的変化を内容とする場合(雪が降ることを条件とする場合など)を積極条件、消極的変化を内容とする場合(雪が降らないことを条件とする場合など)を消極条件というが、この分類には法律上の区別の実益はない[1]。
条件の有効性
編集各種条件の有効性
編集一定の条件が付された場合について、民法は法律行為につき無条件あるいは無効とする(131条~134条)。
- 既成条件
- 既成条件とは、客観的に法律行為時において既に確定している条件のことをいう[2]。停止条件のときは、条件とする意味が無いので法律行為は無条件となり、解除条件のときは、すでに法律効果が消滅していることになるから法律行為は無効とされる(131条1項)。また、条件が成就しないことが確定している場合、停止条件のときは、条件が永久に成就せず効力が生じることはないので法律行為は無効となり、解除条件のときは、条件が永久に成就せず効力が消滅することはないので法律行為は無条件となる(131条2項)。なお、131条3項は「前二項に規定する場合において、当事者が条件が成就したこと又は成就しなかったことを知らない間は、第百二十八条及び第百二十九条の規定を準用する」と定めるが、既成条件では有効無効は既に確定済で期待権がない以上、これらの規定の準用余地はなく同項は無意味な規定とされる(通説)[3]。
- 不法条件
- 不能条件
- 不能条件とは、客観的に成就することがありえない条件のことをいう。条件が成就しないことが確定している場合と同じように、停止条件のときは、条件が永久に成就せず効力が生じることはないので法律行為は無効となり、解除条件のときは、条件が永久に成就せず効力が消滅することはないので法律行為は無条件となる(133条)。
- 随意条件
- 法定条件
- 法定条件とは、法律上要求されている要件がそのまま条件の内容とされている場合をいう[7]。条件に関する規定の類推適用があるものの(最判昭39・10・30民集18巻8号1837頁)、後述の130条の類推適用はない(最判昭36・5・26民集15巻5号1404頁)。
条件に親しまない行為
編集条件を付すことができない法律行為を「条件に親しまない行為」といい、このような法律行為は全体として無効である[1]。主に身分行為についての公益上の不許可と単独行為についての私益上の不許可がある[8]。
- 公益上の不許可
- 私益上の不許可
- 手形行為
条件付権利の保護
編集- 条件の成否未定の間における相手方の利益の侵害の禁止
- 条件付法律行為の各当事者は、条件の成否が未定である間は、条件が成就した場合にその法律行為から生ずべき相手方の利益を害することができない(128条)。本条違反の行為は不法行為責任を生じるとされるが(通説)、近時、侵害の主体により相手方の侵害によるときは契約責任、第三者の侵害によるときは不法行為責任が成立するとみる学説もある[12]。
- 条件の成否未定の間における権利の処分等
- 条件の成就の妨害
- 条件が成就することによって不利益を受ける当事者が故意にその条件の成就を妨げたときは、相手方はその条件が成就したものとみなすことができる(130条1項)。
- 反対に条件が成就することによって利益を受ける当事者が不正にその条件を成就させたときは、相手方は、その条件が成就しなかったものとみなすことができる(130条2項)。判例は、当事者が故意に条件を成就させたときは、130条の類推適用により、相手方はその条件が成就しなかったものとみなすことができるとしていた(最判平6・5・31民集48巻4号1029頁)。130条2項は2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)で判例法理を明文化したものである[13]。
行政法上の条件
編集行政法上の条件とは行政行為の効果を将来発生することの不確実な事実にかからしめる意思表示をいう。
→詳細は「行政行為 § 附款」を参照
脚注
編集- ^ a b c 川井健著 『民法概論1 民法総則 第4版』 有斐閣、2008年3月、295頁
- ^ 内田貴著 『民法Ⅰ 第4版 総則・物権総論』 東京大学出版会、2008年4月、300頁
- ^ 川井健著 『民法概論1 民法総則 第4版』 有斐閣、2008年3月、302頁
- ^ a b c d 内田貴著 『民法Ⅰ 第4版 総則・物権総論』 東京大学出版会、2008年4月、303頁
- ^ 川井健著 『民法概論1 民法総則 第4版』 有斐閣、2008年3月、303頁
- ^ 川井健著 『民法概論1 民法総則 第4版』 有斐閣、2008年3月、304頁
- ^ 川井健著 『民法概論1 民法総則 第4版』 有斐閣、2008年3月、297頁
- ^ 我妻栄著『新訂 民法総則』409~410頁、岩波書店、1965年
- ^ a b 川井健著 『民法概論1 民法総則 第4版』 有斐閣、2008年3月、296頁
- ^ 遠藤浩・川井健・原島重義・広中俊雄・水本浩・山本進一著 『民法1 民法総則 第4版増補改訂2版』 有斐閣〈有斐閣双書〉、2002年5月、228頁
- ^ 遠藤浩・川井健・原島重義・広中俊雄・水本浩・山本進一著 『民法1 民法総則 第4版増補改訂2版』 有斐閣〈有斐閣双書〉、2002年5月、237頁
- ^ 川井健著 『民法概論1 民法総則 第4版』 有斐閣、2008年3月、298-299頁
- ^ “民法(債権関係)改正がリース契約等に及ぼす影響” (PDF). 公益社団法人リース事業協会. 2020年6月14日閲覧。