付着生物
付着生物(ふちゃくせいぶつ、英語:sessile organisms)とは、水中の固形物に付着して生活する生物の総称。固着生物とも呼ぶ[1]。
一般に卵、幼体は水中を移動するものの、着底後はほとんど、もしくは全くその場から移動しない。船舶・堤防・取水施設・排水施設その他の人工物に付着してそれらの性能や機能を減じたり、水産物の養殖の成長を阻害したりするため、有害生物とみなされることも多い。
付着する生物
編集基物上に附着する生物は、付着して全く動かない固着性のもの、穴を掘って潜る穿孔性のもの、それに匍匐性のもの、あるいはそれらの中間的なものなどがある。たとえば巣穴を作ってそれを固定させるが、本体は自由に動ける端脚類のドロクダムシ科のようなものもある。
いずれにせよ、特に海においては様々な生物が基盤上に付着して暮らしており、そのような生物自体も基盤となってその上に生物が附着するという状況が見られる。
植物
編集動物
編集付着生物の研究
編集生物学的な面はもとより、生物の付着が船舶の外殻や給・排水施設の性能に大きな影響を与えることから、工学的な必要性から付着生物の生態へアプローチも行われる。
有機スズ化合物は、付着生物を忌避するために船舶の塗装に用いられてきたが、2008年9月に発効した船舶についての有害な防汚方法の管理に関する国際条約(通称:AFS条約)によって禁止された[2][3]。それ以降、毒性が低い酸化銅(I)(亜酸化銅)などが付着忌避物質となる防汚塗料として使われている[4]。
鮫皮は、フジツボなどが付着しにくいことから、生物構造を応用するバイオミメティックスが検討されている[3][5]。(バイオミメティックス防汚塗料)
超音波による生物付着防止、パルス放電[6]、パルスレーザー[7]、温水[8]などによる生物付着対策の研究されている。
出典
編集- ^ 「固着生物」 。
- ^ 「AFS条約」 。
- ^ a b 沖野, 龍文 (2008年9月2日). “船にフジツボをつけない技術(北海道大学大学院地球環境科学研究院平成20年度公開講座 ヒトと地球にやさしい化学技術. 第3回からの引用)”. 2024年5月1日閲覧。
- ^ “知ってた?タンカーの船底はなぜ赤い? 海運会社社長の解説が「こんなにくわしい説明は初めて」と話題” (Japanese). 神戸新聞NEXT (2023年1月10日). 2024年5月1日閲覧。
- ^ Nast, Condé (2005年3月15日). “船底への付着物を防ぐ「サメ皮」コーティング”. WIRED.jp. 2024年5月1日閲覧。
- ^ “水生生物の除去及び付着防止方法”. 2024年5月2日閲覧。
- ^ Nandakumar, Kanavillil; Obika, Hideki; Shinozaki, Tatsuya; Ooie, Toshihiko; Utsumi, Akihiro; Yano, Tetsuo (2003-05). “Pulsed laser irradiation impact on two marine diatoms Skeletonema costatum and Chaetoceros gracilis” (英語). Water Research 37 (10): 2311–2316. doi:10.1016/S0043-1354(03)00007-1 .
- ^ Sommerville, D. (1986). “Development of a Site Specific Biofouling Control Program for the Diablo Canyon Power Plant”. OCEANS '86 (IEEE). doi:10.1109/oceans.1986.1160543 .
関連項目
編集- 生物付着
- 足糸 - 貝が岩などに付着するために伸ばす糸。
- 水中でのバクテリア付着、バイオフィルム
- 群居 - フジツボなどが集団で付着する生態について。
- Substrate (biology) - 付着生物が取りつく岩盤や船底・生物など。
- クジラ類の浮上行動 - 飛び上がって、体を勢いよく水面にたたきつけるブリーチングと呼ばれる行動などは、付着生物などを取り除くための行動とされる。また寄生動物を取り除く行動を見せた特定個人に多くのクジラの個体が近寄るようになった報告がある。また、砂地でこすり取る行動も見られる。
外部リンク
編集- “日本付着生物学会 (The Sessile Organisms Society of Japan)”. 2015年4月13日閲覧。