丸剤
丸剤(がんざい、英: pills)とは、医薬品を球状に製したものであり、医薬品の剤形の名称の一つである。この項目は、特に明記がない場合、原則として医薬品としての丸剤に関連した内容を記載する。
概要
編集経口する医薬品製剤の剤形の一つであり、一般に「丸薬」と呼ばれることもある。
日本薬局方第18改正の製剤総則では生薬関連製剤に分類され、以下のように定義されている。
- 丸剤とは、経口投与する球状の製剤である。
- 本剤を製するには、通例、有効成分に賦形剤、結合剤、崩壊剤又はそのほかの適切な添加剤を加えて混和して均質とした後、適切な方法で球状に成型する。また,適切な方法により, コーティングを施すことができる[1]
蜂蜜やコメデンプンなどを結合剤として容易に成型でき、また、持ち運び可能な剤形であることから、漢方薬の古典である傷寒論、金匱要略でも丸剤の存在がみられるなど、伝統的医薬品の剤形としても古くから用いられてきた[2]。
数え方
編集一般に1粒(つぶ)、2粒(つぶ)と数えるが、径が大きなものは1丸(がん)、2丸(がん)と数える場合もある。
丸剤の名称
編集一般に以下のような名称の付け方がされている。
- 主要な成分(生薬など)の名称あるいはその組み合わせを冠し「(生薬名)+丸」とした例(麻子仁丸[3]、桂枝茯苓丸[4]など)
- 成分の数(薬味の数)を冠し、「(成分数の漢数字)+味+丸」とした例(六味丸[5]、八味丸)
- 1及び2 の付け方を組み合わせた例(八味地黄丸[6])
- その薬剤の効能やイメージなどを冠し「(効能あるいはイメージ)+丸」とした例(救命丸[7]、旧称:征露丸⇒正露丸[8])
- 1及び4 の付け方を組み合わせた例(牛車腎気丸:牛(牛膝(ゴシツ))+車(車前子(シャゼンシ)+腎気(泌尿生殖器の働きを高める)+丸[9])
なお、剤形としては丸剤であるが、その名称の最後が「丹」となっているものも見受けられる(仁丹[10](医薬部外品)、万金丹[11](食品)など)。また、『和剤局方』など南宋の医書では「丸」を「円(圓)」と呼称したが、これは欽宗帝の諱である「桓」の発音と「丸」の発音が近いため改称したものである[12][13]。
丸剤の例
編集脚注
編集- ^ “第十八改正日本薬局方 目次~沿革略記、通則、生薬総則、製剤総則、一般試験法”. 厚生労働省. 2021年10月13日閲覧。
- ^ 清水、1949、pp150-151。
- ^ 真柳誠「漢方一話:処方名のいわれ120:麻子仁丸」『漢方医学』第27巻第5号、2003年、p234、ISSN 0288-2485、2010年1月11日閲覧。
- ^ 小曽戸洋「漢方一話:処方名のいわれ23:桂枝茯苓丸」『漢方診療』第14巻、1995年、p47、ISSN 0288-3643。
- ^ 小曽戸洋『漢方医学』第24巻、2000年、p86、ISSN 0288-2485。
- ^ 小曽戸洋「漢方一話:処方名のいわれ6:八味地黄丸(八味腎気丸)」『漢方診療』第13巻第5号、1994年、p37、ISSN 0288-3643。
- ^ 吉田香織『都薬雑誌』第25巻、2003年、p38、ISSN 0285-1733。
- ^ 正露丸の歴史の項を参照
- ^ 小曽戸洋「漢方一話:処方名のいわれ101:牛車腎気丸」『漢方医学』第25巻、2002年、p292、ISSN 0288-2485。
- ^ “森下仁丹歴史博物館「仁丹」誕生”. 森下仁丹. 2010年1月12日閲覧。
- ^ 鈴木昶 (医療ジャーナリスト)「日本の伝承薬15:万金丹:伊勢参りの薬が童歌に」『月刊漢方療法』第2巻第4号、1998年、p82。
- ^ 清水、1949、pp152。
- ^ 大塚敬節他編『近世漢方医学書集成』53、1981年、名著出版、p403。
- ^ 後山尚久『性差と医療』第2巻、2005年、p99、ISSN 1349-4589。