世界革命浪人(せかいかくめいろうにん)とは、世界ソビエト社会主義共和国(以降、「共和国」とする)の樹立運動を通じて、「世界革命」の理念を説く者を指す太田竜の造語。「ゲバリスタ」ともいう。

概要

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太田竜の定義によると、他の新左翼人士のように群れて行動するのではなく、単身で「辺境最深部」[1]に乗り込み、「現代文明」に囚われた自己を変革し、新たに原始共産制の価値観を身に付け、自分の身近にいる窮民を糾合して一気に反撃に転ずる闘争者が「世界革命浪人」としている。

具体的にはアイヌ革命論沖縄独立運動を煽ることで、日本の民族問題を意図的に深刻化・過激化させ、アイヌ民族や沖縄人の対日排外主義のエネルギーを「世界革命」の原動力にすべく活動した。ちなみに提唱者の太田は「アイヌモシリ」を自らが飛び込むべき「辺境最深部」とした。

世界革命浪人になるための諸要件

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世界革命浪人たらんとする者は、次の諸要件を兼ね備えなければならない。

  • 家族制度の否定
    「夫」「妻」「子」「恋人」がいる者は、「私有財産の肯定」を身をもって体現している者であり、真っ先に否定されなければならない。ただ性欲の全面否定・禁欲の勧めというわけではなく、「一夜限りの関係」など一時的なパートナーとしての存在は認める。その結果、誕生した子女については、母親から離され共和国当局が責任をもって養育する。
  • 私有財産の否定
    前項の人間関係以外の動産不動産を所有することも無論否定される。既に所有している者は、その権利を放棄して共和国のために共同使用される。
  • 麻薬アルコールの禁止
    医師の処方という正当な理由なくして、麻薬やアルコールを用いてはならない。よってこれらの依存症患者は世界革命浪人になる資格はない。
  • 多言語話者
    世界革命浪人は世界を股にかけた闘争をしなければならないので、最低でも母語を含めて4言語以上を習得しなければならない。例えば日本を闘争の拠点にしている者は、「日本語」「朝鮮語」「琉球語」「アイヌ語」を習得しなければならない。
  • 機動性
    共和国当局から指令が下ったら、24時間以内に他の場所へ移る準備を完了しなければならない。

もっとも提唱者の太田は、1973年頃に「私有財産を肯定」する結婚をし、その妻を「一時的なパートナー」として離婚することもなく、「終生の伴侶」として添い遂げた[2]

注釈

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  1. ^ 太田理論の窮民革命論に挙げられた各「窮民」の「根拠地」のこと。具体的には、「アイヌ民族アイヌモシリ北海道)」「沖縄人沖縄県」「日雇い労働者ドヤ街」を指している。
  2. ^ 谷口巌『アイヌ革命と太田竜』暁書房、1983年

参考文献

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  • 太田竜『辺境最深部に向かって退却せよ!』三一書房、1971年
  • 太田竜『世界革命への道』新泉社、1978年
  • 谷口巌『アイヌ革命と太田竜』暁書房、1983年

関連項目

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