三陸海岸大津波
『三陸海岸大津波』(さんりくかいがんおおつなみ)は、小説家吉村昭による中編ルポルタージュ。
初版は中公新書で、1970年(昭和45年)に『海の壁 三陸沿岸大津波』の題名で刊行された。1984年(昭和59年)に中公文庫版が刊行された際に現行のタイトルに改題された。吉村の死の2年前、2004年(平成16年)に文春文庫版が再刊された。
概要
編集東北地方太平洋側にある三陸海岸沿いの町をたびたび襲った地震・大津波について、自身の取材によって明らかになった事実を記したルポルタージュである。内容は、明治29年の大津波、昭和8年の大津波、チリ大地震大津波の3部構成である。三陸海岸各地の大津波を受けての被害状況、人々の行動を克明に記録している。
東日本大震災
編集2011年(平成23年)3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震および津波(東日本大震災)の直後より、本書の注文売上が急増した[1]。文春文庫版の震災前の発行部数は累計49,000部であったが、震災直後に50,000部が増刷された。著者の妻で小説家の津村節子は版元を通じ、増刷分の印税は震災復興に寄付すると表明した。
岩手県下閉伊郡田野畑村には、吉村が初期の作品『星への旅』(筑摩書房→新潮文庫)の執筆をきっかけに、村民と交流を深めたことにより、1998年(平成10年)に吉村が寄贈した蔵書を元に島越駅駅舎内に「吉村文庫」が開設されていたが、震災の津波で約750冊の蔵書が全て流失している[2]。2016年(平成28年)7月31日、再建された島越駅駅舎内に吉村文庫が復活した[3]。
書誌情報
編集- 吉村昭 『海の壁 三陸沿岸大津波』 中公新書、1970年
- 吉村昭 『三陸海岸大津波』 中公文庫、1984年
- 吉村昭 『三陸海岸大津波』 文春文庫、2004年 ISBN 978-4-16-716940-4
脚注
編集- ^ 『三陸海岸大津波』吉村昭著 産経新聞 2011年4月9日閲覧
- ^ “警告の書、異例の売れ行き 「三陸海岸大津波」”. 47NEWS (全国新聞ネット). (2011年4月9日). オリジナルの2011年4月12日時点におけるアーカイブ。 2019年2月17日閲覧。
- ^ “6年目の被災地:吉村文庫が復活 田野畑・三陸鉄道島越駅に 妻・津村節子さん、70冊寄贈”. 毎日新聞 (毎日新聞社). (2016年8月10日) 2019年2月17日閲覧。