三角帽子(さんかくぼうし、Tricorne)は、18世紀ヨーロッパアメリカで流行した帽子である。最盛期には、軍人のみならず、民間人もかぶっていた。両脇と後ろを折り返してあるため、上から見ると三角形に見え[1]「3つの」を意味するtriをつけて、トリコーントリコーヌ)と呼ばれるようになった。女性も、に乗る際に用いた[2]

三角帽子

歴史

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三角帽子をつけて騎乗するルイ14世
 
ジョージ・ワシントンのクリップアート

元々は、17世紀に、スペインの兵士がフランドルでかぶっていた、丸くてつばの広い帽子が進化したとも[3]17世紀後半に、つばが巻いてあっただけなのが進化したとも[4]いわれる。また、海賊たちが、船上でかぶると、つばが邪魔になるので巻きあげて止めたともいわれている[5]。この帽子の特徴は、実用的なところである。上向きになった部分がを作るため、雨が顔にじかに落ちず、肩に流れて行くようにする。雨を防ぐのに特化した道具が発明される前は、明らかに便利なものだった[6]。いずれにしても、それまではもっとつばが広く、それ以前には、丈の高い帽子が用いられていたが、欧米の男性がかつらをつけるようになったため、かえって邪魔になり、丈の低い三角帽子が普及した。一方、かぶらずに持ち歩くだけのシャポー・ブラというのもあった。装飾として金レースや[5]コケイド(花形帽章)をつけることもあった[1]

素材はフェルトまたはビーバー毛皮[4]新大陸カナダで取れるビーバーの毛皮は、それよりもかなり以前から、ヨーロッパでの需要が高まっていた[7]

18世紀になると、それまでの海賊的な私掠船隊が海軍として組織化されて行き、階級の発生、指揮や命令の達成の意味から、地位を表すための制服が導入された。制帽もあったが、士官は三角帽子のほうを好んでかぶった。普通の水兵たちは、スカルキャップと呼ばれるつばなし帽をかぶっていたが、のちに、タールを塗った帆布の、つばのある帽子をかぶった。このため、水兵たちはターポーリン(tarpaulin)、その後ジャックタール英語版というあだ名を付けられた[5]。時代が下るに連れ、三角形をより鋭角的にしたのも登場したが、18世紀末にかつらとともに三角帽子もすたれ、二角帽子が主流になった[5]。19世紀には、シルクハットシャコが主流となった[8]

三角帽子は、アメリカ独立戦争ニューイングランド入植地軍も用いている[5]

コックドハットという名称は、この三角帽子と二角帽子をさしているが[2]、三角帽子のみを指す[1]、あるいは、二角帽子がコックドハットの代名詞という説もある[5]

現代の三角帽子

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チェルシー・ペンショナー
 
三角帽子を振るロンドン市長

三角帽子は、今日ではチェルシー・ペンショナー[9](王立チェルシー病院にあるケアハウスに住む退役軍人)が式典の時に着用したり、スペインの警察であるグアルディア・シビル[10]がかぶったりしている。黒い羽根を付けた三角帽子は、ロンドン市長式典の際、また、毎年11月の「ロード・メイヤーズ・ショー」の時に着用しているのを見ることができる。市長が新しく選ばれた時は、群衆に向けてこの帽子を振る[11]大法官も三角帽子をかぶっている[12]。日本では、宮内庁の儀装馬車御者が三角帽子を用いている[2]

アメリカでは、三角帽子は独立戦争や当時の愛国者、特に植民地の民兵と関連付けられる[13]。独立戦争にちなむ名前のスポーツチーム、例えばNFLニューイングランド・ペイトリオッツや、MLSニューイングランド・レボリューションマサチューセッツ大学のフットボールチームなどでは、ファンマスコットが三角帽子をかぶっている[14][15][16]

ドイツでは、フランケン地方ヘッセン地方等で、三角帽子が男性の民族衣装に用いられている。

ギャラリー

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脚注

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関連項目

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