三菱・360
三菱・360は1961年(昭和36年)に新三菱重工業(現・三菱自動車工業)が発売した同社初の4輪商用軽自動車である。
三菱・360/ 三菱・ミニカピック (LT23型) | |
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バン | |
トラック (最終型「ミニカピック」) | |
概要 | |
販売期間 |
360バン/パネルバン: 1961年 - 1969年 360トラック: 1961年 - 1969年 ミニカピック: 1969年 - 1973年 |
ボディ | |
乗車定員 | 2-4人 |
ボディタイプ |
2ドアパネルバン (LT20) 2ドアライトバン (LT21/23) 2ドアピックアップトラック (LT22/25) |
駆動方式 | FR |
パワートレイン | |
エンジン |
ME21/ME24型359cc 強制空冷2ストローク直列2気筒 |
最高出力 |
17ps/4,800rpm(ME21) 18ps/4,800rpm(ME24) 21ps/5,500rpm(ME24D) |
最大トルク |
2.8kg-m/3,500rpm(ME21) 3.1kg-m/3,000rpm(ME24) 3.2kg-m/3,500rpm(ME24D) |
変速機 | 4MT |
前 |
前:横置き半楕円板バネ独立懸架 後:半楕円板バネ固定軸 |
後 |
前:横置き半楕円板バネ独立懸架 後:半楕円板バネ固定軸 |
車両寸法 | |
ホイールベース | 1,900mm |
全長 | 2,995mm |
全幅 | 1,295mm |
全高 | 1,400-1,410mm(トラック) |
車両重量 |
465-480kg(LT20/21/22) 530kg(LT23)/495kg(LT25) |
最大積載量 | 300kg/350kg(ピックアップ) |
系譜 | |
先代 | 三菱・みずしま/三菱・レオ |
後継 | バンはミニカバンに統合、パネルバンとトラックはミニキャブに統合 |
製造は倉敷の水島製作所が担当(『360cc軽自動車のすべて』三栄書房 41頁参照)。1946年以来製造を行ってきた三菱・みずしま系貨物型オート三輪の技術と、1959年(昭和34年)発売以降年産10000台以上を売り上げていた軽オート三輪三菱・レオでの経験・実績を踏まえて開発された軽ボンネットバンであり、1962年(昭和37年)の初代三菱・ミニカ、1966年(昭和41年)の初代三菱・ミニキャブのベースともなった。
また、本稿では以下のモデルについても便宜上記述する。
- ミニカ ピック
概要
編集駆動方式は上位クラスの自動車では一般的なフロントエンジン・リアドライブで、ドアは前開き式を採用。スプリングはフロント横置きリーフ独立、リアが半楕円リーフリジッドという、保守的だが耐久性の高い手法を採用した。金子徳次郎のデザインになるスタイリングも奇をてらったところのない機能優先なもので、前輪駆動やリアエンジンなど、多種多彩な設計・デザインの軽自動車が輩出されていた当時の風潮とは一線を画した、徹底堅実な構造である。
エンジンはME21型2ストローク強制空冷直列2気筒・359ccで、最高出力は17馬力を達成し、フルシンクロメッシュ式4速コラムMTとの組み合わせで、当時の日本の道路事情では十分な性能である最高速度80km/hの動力性能を確保していた。
バックドアは、スタンダードが横開き、後に追加されたデラックスが上下開きとなっており、後部座席を倒して2名乗車とする事でゴルフバッグを2個積める広いスペースが確保できた。当時のボンネット型軽自動車の中では広い荷室を備えることがセールスポイントであった。三菱・360ライトバンのこうしたパッケージングはその後の軽ボンネットバンの雛型ともなった。
三菱・360は商業的に成功し、そのまま車体後部を乗用車型に設計変更した4座軽乗用車「ミニカ」へと発展する。その成功は、翌年の新三菱水島製作所のオート三輪事業の打ち切り、4輪事業への全力傾注という、三菱の経営方針に大きな転換を引き起こす契機ともなった。
歴史
編集- 1960年
- 第7回東京モーターショーにプロトタイプ出展。
- 1961年4月
- パネルバン(LT20)/ライトバン (LT21)発売。
- 1961年10月
- トラック (LT22)の追加。
- 1962年4月
- ライトバンにデラックス (LT21D)を追加。デラックスにはサイドモール、ホワイトウォールタイヤ、デラックスシート、ホイールキャップ、レースカーテン等が装備されている。従来モデルは「スタンダードバン」として継続。
- 1962年
- 車台を流用した初代三菱・ミニカを発売。
- 1964年頃
- 三菱・ミニカと共にマイナーチェンジ。エンジンがME24型となる。リードバルブ管制方式および分離給油方式(スーパーオートミックス)の採用によりエンジンの出力が18馬力へとアップ。
- 1966年
- 車台を流用しフルキャブに改装された初代三菱・ミニキャブを発売。
- 1967年頃
- マイナーチェンジ。改良が加えられ21馬力に出力が向上したME24Dエンジンを搭載し、最高速度が90km/hに向上。ライトバンはLT23/LT23D、ピックアップはLT25に型式変更された。
- 1969年7月
- ミニカがフルモデルチェンジされライトバンが追加。これにより販売終了。同時にピックアップはミニカピックに改称。
- 1972年9月
- 同社の軽自動車用空冷2サイクルエンジンの生産終了に併せる形でピックアップ(ミニカピック)が生産終了。以後は流通在庫のみの販売となる。
- 1973年3月
- 最後までラインアップに残されていたピックアップ(ミニカピック)がミニキャブトラックに統合される形で販売終了。これにより三菱・360は名実共に発売開始から11年の歴史に幕を下ろすこととなった。