ワラング・クシティ文字
ワラング・クシティ文字(ワラング・クシティもじ、Warang Kshiti[1])または、ワラン・チティ文字(Warang Chiti[2], 𑣙𑣗𑢡𑣜𑢪 𑢯𑢢𑢵𑢢 Hbårŋ citi[3])は、インドのホー語を表記するために1950年代にラコ・ボドラによって考案(または再発見)された文字。31文字から構成され、左から右に書かれるアルファベットである。
ワラング・クシティ文字 | |
---|---|
類型: | アルファベット |
言語: | ホー語 |
発明者: | ラコ・ボドラ |
時期: | 1950年ごろ |
Unicode範囲: | U+118A0..U+118FF |
ISO 15924 コード: | Wara |
注意: このページはUnicodeで書かれた国際音声記号 (IPA) を含む場合があります。 |
起源
編集ホー語はムンダー語派に属する言語のひとつで、サンタル語と近い関係にある[1]。話者人口は2001年の国勢調査では100万人ほどで、主にジャールカンド州、オリッサ州、西ベンガル州で話されている[4]。UNESCOでは話者数を40万とし、危機に瀕する言語のうち「脆弱」に入れている[5]。
ホー語は地域によってデーヴァナーガリー、オリヤー文字またはラテン文字などで表記されるが、母語を文字で書ける人の割合は1-5%に過ぎない[2]。
ラコ・ボドラは1950年代にホー語を表すための専用の文字としてこの文字を考案したが[2]、本人は自分の発明ではなく13世紀に考案された文字を再発見したと称していた。ノーマン・ザイドによると、1970年代末のワラング・クシティ文字の支持者たちは、この文字をインドでもっとも古いものと考えており、明らかなブラーフミー文字との類似についても、逆にブラーフミー文字がワラング・クシティ文字から借用したと主張していた[1]。
構造
編集ワラング・クシティ文字には大文字と小文字の区別がある。明らかにブラーフミー文字から借用が見られるが[1]、インドの多くの文字とは異なってアブギダではなく純粋のアルファベットである。31文字(聖音オームの文字を含めると32文字)から構成され、文字の配列順は独特だが、子音の最初の15文字は鼻音・有声音・無声音の順に3字ずつ体系的に並んでいる。[w]は hb の二重音字によって表される[6]。
文字の一覧
編集文字の順序についてはスワースモア大学のサイトによる[2]。音はノーマン・ザイドによる[1]。文字名はマイケル・エバーソンによる[3]。
文字 | 音 | 文字名 | 文字 | 音 | 文字名 | 文字 | 音 | 文字名 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ṃ | ngaa | |||||||
a | a | i | wi | u | yu | |||
e | e | o | o | ʔ | ya | |||
y | yo | ī | ii | ū | uu | |||
ṅ | ang | g | ga | k | ko | |||
ñ | eny | j | yuj | c | uc | |||
ṇ | enn | ḍ | odd | ṭ | tte | |||
n | nung | d | da | t | at | |||
m | am | b | bu | p | pu | |||
h | hiyo | l | holo | ṛ | horr | |||
r | har | ṣ | ssuu | s | sii |
Unicode
編集2014年のUnicodeバージョン7.0で、追加多言語面のU+118A0-118FFに追加された[7][8]。
Unicodeでは[v]を表すための文字が追加されて32文字になっている[3]。大文字32と小文字32、聖音オーム、0から9までと10から90までの数字の計84文字が定義されている。
Warang Citi[9] | ||||||||||||||||
0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | A | B | C | D | E | F | |
U+118Ax | 𑢠 | 𑢡 | 𑢢 | 𑢣 | 𑢤 | 𑢥 | 𑢦 | 𑢧 | 𑢨 | 𑢩 | 𑢪 | 𑢫 | 𑢬 | 𑢭 | 𑢮 | 𑢯 |
U+118Bx | 𑢰 | 𑢱 | 𑢲 | 𑢳 | 𑢴 | 𑢵 | 𑢶 | 𑢷 | 𑢸 | 𑢹 | 𑢺 | 𑢻 | 𑢼 | 𑢽 | 𑢾 | 𑢿 |
U+118Cx | 𑣀 | 𑣁 | 𑣂 | 𑣃 | 𑣄 | 𑣅 | 𑣆 | 𑣇 | 𑣈 | 𑣉 | 𑣊 | 𑣋 | 𑣌 | 𑣍 | 𑣎 | 𑣏 |
U+118Dx | 𑣐 | 𑣑 | 𑣒 | 𑣓 | 𑣔 | 𑣕 | 𑣖 | 𑣗 | 𑣘 | 𑣙 | 𑣚 | 𑣛 | 𑣜 | 𑣝 | 𑣞 | 𑣟 |
U+118Ex | 𑣠 | 𑣡 | 𑣢 | 𑣣 | 𑣤 | 𑣥 | 𑣦 | 𑣧 | 𑣨 | 𑣩 | 𑣪 | 𑣫 | 𑣬 | 𑣭 | 𑣮 | 𑣯 |
U+118Fx | 𑣰 | 𑣱 | 𑣲 | 𑣿 |
脚注
編集- ^ a b c d e Zide (1996) p.616
- ^ a b c d The Ho Language: The Warang Chiti Alphabet, Swarthmore College
- ^ a b c Michael Everson (2012-04-19), N4259 Final proposal for encoding the Warang Citi script in the SMP of the UCS
- ^ Ho, The Ethnologue
- ^ Ho, UNESCO Atlas of the World's Languages in Danger
- ^ Zide (1996) p.617
- ^ Supported Scripts, Unicode, Inc.
- ^ Unicode 7.0.0, Unicode, Inc., (2014-06-16)
- ^ Warang Citi, Unicode, Inc
参考文献
編集- Zide, Norman (1996). “Scripts for Munda Languages”. In Peter T. Daniels; William Bright. The World's Writing Systems. Oxford University Press. pp. 612-618. ISBN 0195079930
外部リンク
編集- 『ワラング・クシティ文字』地球ことば村・世界の文字 。
- Warang Citi, Omniglot
- The Ho Language, Swarthmore College